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TWELFTH NIGHTのフロントマンを新ベーシストに迎え、名実ともに英国シンフォ界の中心的バンドへと躍り出たGALAHADが新譜をリリース!

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GALAHAD 「The Last Great Adventurer」'22

かってネオプログレ・バンドLAHOSTのフロントマンであり、現在はサウンドエンジニア、プログラマー、アレンジャー、もこなす裏方作業メインでマルチパート・セッションミュージシャンでTWELFTH NIGHTの7代目フロントマンである Mark Spencer(!)を新たにベーシスト(!?)に迎えた新編成でリリースされた、オリジナル・フルアルバムとしては前作『Seas Of Change』'18 以来4年ぶりとなる12thアルバムを即GET!

現在、TWELFTH NIGHTの鍵盤奏者は本バンドでも華麗な鍵盤捌きを聴かせる Dean Bakerが兼任しているので、これで Mark Spencerを迎えた事により第一次ポンプ・ムーヴメントを支えたTWELFTH NIGHTとメンバーが二人重複する訳で、自然そうなるとGALAHADのバンドとしての格も一段上がるし、これだけ実績を残し長期活動を続けている事からも、今や第二世代ポンプ・バンドの代表格のみならず現在の英国シンフォ界の中心バンドの一つであるのは間違いないだろう。

Mark Spencerは元PALLASのフロントマン Alan Reed率いるソロ・バンドにも在籍しているのでPALLASとも繋がりが出来たとも言え、第一次ポンプ・ムーヴィメントのバンド二つとGALAHADはその歴史を絡める事になったとも言えましょう。

いやー、不安定だったベーシストの穴をまさかTWELFTH NIGHTのフロントマンで埋めるとは完全に予想外でありました。

まぁ、実質TWELFTH NIGHTは開店休業状態が長いバンド(泣)でありますので、Mark Spencer的にはバンドメイトに誘われて堅実に活動中なバンドにも籍を置く事にしたのではないかと予想します。

現在はギタリストとして本バンドで変幻自在なギターワークをモダン・サウンドに乗せてセンチにエモーショナルに響かせている Lee Abrahamが以前に同じような立場でベーシストとして便利使いされた一件を思うと各パートをこなせるマルチ・インストゥルメンタリストって『こういう時に凄く便利だなぁ』とは思うものの、Mark Spencer的にはその立場に満足なのかどうかは不明でありますし些か不安でもありますけど…(汗

なんだかんだあったけれど、オリジナルメンバーのフロントマン Stuart Nicholsonとドラマー Spencer Luckmanを中心に、初期から参加した Dean Bakerをバンド中核として固め、長く活動を続けるバンドにありがちなマンネリズムと不安定なメンバー構成を打開すべくギタリストとベーシストをチェンジする新陳代謝を巧くこなしたように思え、メンバー・チェンジが頻発するシンフォ&プログレ系バンドの中でもかなりの成功例と言えるのではないだろうか?

オフ・シュート・プロジェクトであるGALAHAD ELECTRIC COMPANYでも Stuart Nicholsonと Dean Bakerがタッグを組んでいるのを見るまでも無く現在のバンドの創作面は二人が中心で、そこへ強力な助っ人として幅広い音楽性のソロ作をリリースして来た Lee Abrahamと裏方的な能力も抜群な Mark Spencerを迎えた事により、THRESHOLDの Karl Groomをプロデューサーに迎え低迷期を脱する切っ掛けとなった名作『Empires Never Last』'07 をリリースし、ヘッポコMARILLIONフォロワーから大きく飛躍した時を一度目の復活作と捉えるなら、結成30周年を迎えたもののメンバーが不安定であったり身内の不幸やパンデミックにより活動がままならぬここ数年の停滞期からの脱出作である本作は二度目の復活作と捉えられるのかもしれません。

それくらいこれまでの音楽性を継承しつつ新たな音楽要素も織り込んだ前作『Seas Of Change』で聴かせてくれた、如何にも英国風な湿り気を帯びた繊細でドラマチックな叙情感とダンサンブルでデジタリーな要素も果敢に取り込みパワフルでモダンなダイナミズムをハイブリッドに融合した新生GALAHADサウンドの完成度とスケール感を増した本作は、ここ十数年お馴染みのプロデューサー Karl Groomによってエンジニアリング、ミックス、マスタリングが行われた優美で聴き応え十分なアルバムだ。

解き放たれたようにエモーショナルなギターを紡ぐ Lee Abrahamが持ち込むモダンでポップなフィーリングとスリリングでハードエッヂなメタリック感は、前任者のプレイからは余り感じられなかったし、アグレッシヴでテクニカルな開放感あるギターワークにはフレッシュな感覚が漲っており、アレンジ面での協力も果たすなど確実にGALAHADサウンドの魅力を増し“今”に相応しいレベルへフォーカスする重要なメンバーとなっていると言えよう。

そして目立たないが堅実なプレイでボトムを支える Mark Spencerのプレイも素晴らしく、さらにLIVEではコーラスワーク等でもバンドに新たな武器をもたらすのは確実な上、今後スタジオワークでも貢献するだろう事は容易く予想でき、本作では創作面でまだその能力を十分に発揮はしていないがメインコンポーザーの二人に加え Lee Abrahamと共に今後さらなるGALAHADサウンドの発展と進化の起爆剤となるのが必至なキーパーソンなのは間違いない。

と、言うか実は本作収録曲の完成には数年を要しており、その多くは前作『Seas Of Change』よりも前に創作されていたらしく、物理的にも Mark Spencerは本作に殆ど関わる事は出来なかった訳ですね。

まるで普通のロック・バンド(笑)のように自分達を支持してくれる聴衆に対するストレートな感謝を述べる楽曲がしょっぱなに飛び出して来て面を食らったが、サウンドの方はポップなメロディとデジタリーでリズミックなサウンドに乗って英国風な湿り気を帯びた繊細でドラマチックなサウンドが紡がれ行くが、最後はポンプ風味も隠し味にしたエモーショナルなギターが大活躍するシンフォ・アレンジで締めくくられる中々の力作で、出だしから本作への期待が高まります♪(゚∀゚)

その後は、如何にも英国バンドらしく18世紀末にイングランドで起こった落穂拾い裁判をモチーフにした楽曲や、法律を陰謀になぞらえ、虐げられ貧困に喘ぐ人々の境遇を冷たく淡々と語ったり、定番の肌の色や国籍による見かけが生む差別意識の愚かしさを訴えたりと、これまでを継承する題材を扱いつつ、アルバム・タイトルにもなっている、登頂が困難な三大北壁の一つに数えら、前人未到の『死の壁』と恐れられて幾多の登山家を退けて来たスイス・アルプスの一峰、アイガー北壁への初登頂を試みる英国人クライマー達を誰も見ぬ光景を求め困難に挑み続ける偉大な探検家と称え、彼等を己が出来ぬ事を成し遂げる人になぞらえて皮肉めいた賛辞と羨望の眼差しを向ける様を謳ったりと、壮大なオーケストレーションも交えた多彩なキーボード・ワーク、エモーショナル且つハードエッヂで開放感あるギター、ソリッドでタイトなリズム、そしてハートフルなヴォーカルが織り成す、ドラマチックな叙情性とモダンなダイナミズム、さらに初期から地味に挑んで来たデジタリーなアレンジやサウンド・スケープを無理なく融合させた古典的ポンプ・サウンドと現代モダン・サウンド要素が巧みに交差する新世代シンフォニック・ロックに乗せて様々な物語を優美に流麗に描き切ったオリジナリティ溢れる意欲作だ。

ダークな雰囲気をデジタリーで無機質なサウンドテクスチャーで漂わせ、そこへエキゾチックなフィメール・スキャットと絡ませながらメタリックなリフでジワジワと押しつつミステリアスなメロディを展開していく楽曲など、これまでの様々な実験が活かされた仄暗い鈍色の中で時折カラフルなメロディが煌めきを放つかのような独特な立体感あるモダン・サウンドはちょっと他のシンフォ系バンドや初期ポンプ・バンド群で聴けぬ特異な作風で、遂に他の誰でもないオリジナルサウンドを探り当てたように思えワクワクが止まりません(*´ω`*)

尚、アルバム本編は5曲で構成されており、CDにはボーナストラックとして2011年9月2日に44歳でこの世を去った初期からバンドに長きに渡り在籍したベーシスト Neil Pepperと09年に Stuart Nicholsonが書いたデモ『Another Life Not Lived』の新ヴァージョンと Stuart Nicholsonの父親 Bobへの個人的なトリビュート・ソングが2曲が収録されており、親しい人との別れを繰り返した Stuart Nicholsonの心痛が本作には刻まれている故か、いつになくナイーヴでセンチメンタルな音使いが心に突き刺さるように感じます。

また、ポーランドのOskar Productionsと共同でLPレコードを2022年末にリリースする予定との事で、現時点では発売日は未定ながらLPは通常の黒盤とカラー盤の両方が用意されるとの事でアナログ・マニアな方はチェックをお忘れなきようご注意下さい。

さらにシンフォニックに、さらにモダンに進化した新生GALAHADサウンドにご興味あるようでしたら是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい、決して損はしませんよ?

Track listing:
01. Alive
02. Omega Lights
 Part One: Λ (Instrumental)
 Part Two: Ω
03. Blood Skin And Bone
04. Enclosure 1764
05. The Last Great Adventurer

Bonus Tracks:
06. Normality Of Distance
07. Another Life Not Lived

GALAHAD Line-up:
Stuart Nicholson  (Lead & Backing Vocals)
Dean Baker    (Keyboards、Orchestration、Programming、Backing Vocals)
Spencer Luckman  (Drums、Percussion、First Triangle)
Lee Abraham    (Electric & Acoustic Guitars、Additional Guitar Orchestration、Backing Vocals)
Mark Spencer   (Bass、Second Triangle、Backing Vocals)



by malilion | 2022-09-29 15:28 | 音楽 | Trackback
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