LONELY ROBOT 「A Model Life ~Limited Digipack Edition~」'22 IT BITES、FROST*、ARENA、KINO等でのバンド活躍のみならず、自身のOuthouse Studiosにおけるレコードプロデューサー、エンジニアとしての仕事ぶりが高く評価され、また、KEPLER TEN、THE PARADOX TWIN、THE ROOM、KYROS、QUANTUM PIGなどのシンフォからオルタナ、はてはポップバンドまでと幅広く素晴らしいアーティスト達が所属するWhite Star Recordsの共同オーナー兼共同設立者でもあり、プログレ系大御所のツアーサポート、レコーディングエンジニアやプロデューサーとしてアルバム製作にも関わるなど、90年代以降のUKプログレ・シーンで大活躍する英国人マルチ・ミュージシャン John Christian Mitchellによるソロ・プロジェクトの、前作から2年ぶりとなる5thアルバムをちょい遅れてGET! 最初の三枚のアルバムで宇宙飛行士スタシスの白昼夢から始まるSFチックなコンセプト・トリロジーを描き終えたらLONELY ROBOTは終了予定と当初から John Mitchell本人が語っていたのだが、レーベル的にプロジェクトを終らせるのは惜しいとの判断で前作がリリースされたものの売り上げ的にイマイチ(!?)な結果だった模様で、本プロジェクトが存続するのか危ぶまれる状況の中で世界中をパンデミックが襲い、世のミュージック・シーンが混乱に陥って多くのツアーが中止されアーティスト活動もままならぬミュージシャンが溢れる事態になり一体この先どうなるのかと半ば諦め気味だった所で本作の新譜インフォが届き、John Mitchellファンは一安心していた事でしょう。 前作に引き続き Craig Blundell (FROST*、PENDRAGON、Steven Wilson、Steve Hackett、etc...)をドラムに迎えている以外は、ハートフルなヴォーカルを筆頭に John Mitchellが全ての楽器をマルチにプレイし、作詞作曲、プロデュース、そしてミックスとマスタリングまでもを一人で手がけるワンマン体制に変化はない。 前作『Feelings Are Good』'20 では如何にも英国アーティストらしい、光と闇、感情の起伏と繊細さに満ちた人々の内面や精神世界等をテーマにした、80年代UKロック・テイストに彩られた英国叙情が香るヴォーカル・オリエンテッドなスケール感あるシンフォニック・ロック・コンセプト作で楽しませてくれたが、続く本作はコンセプト作ではないものの『人間関係の終わり』が全編を通して重要なキーワードになっている作品で、軽やかで穏やかなメロディと英国ミュージシャンらしい上品なポップさで包まれつつも、その奥には私小説のように内省的な想いと過去の出来事が赤裸々に綴られた、渦巻く情動、抑えきれぬ怒り、別れへの後悔、前向きな希望、そして過ぎ去った思い出等々が次々と愁いを帯びた優し気なヴォーカルと胸に迫るエモーショナルなギターによって様々に紡がれていく、John Mitchellのこれまで発表してきた作品の中でも異彩を放つ最もパーソナルな内容のアルバムだ。 キャッチーで親しみやすい80年代風ポップセンスにプログレ的な複雑さとシンプルで軽快なメロディを有機的に混合し、シンセサイザーや音声処理を多用してデジタリーなサウンド・テクスチャーをまぶしつつもキーボードを中心とした暖かいサウンドスケープと前面に押し出され前作以上に象徴的で表現力豊かなギター・サウンドが、ゆったりとした叙情香るメロディとエモーショナルで切ないヴォーカル、そしてお得意の爽快で美しいコーラスが一体になって優美なサウンド・タペストリーを織り成し、前作よりさらに広がりのあるプログレ・ポップ・サウンドが豪華なプロダクションによって克明に描き出されていくのだが、どこか全編を通してアルバムに言い表し難い不穏な空気や哀愁が漂っているのは、やはり最愛のパートナーと十六年間の交際を解消した事や、アルコール依存症の父親から虐待を受け幼い頃に養子に出された過去の告白、そして十二歳の時に亡くなった父親との苦悩に満ちた関係が、感情を剥き出した生々しい歌詞で語られていくのが影響しているのは誰の目にも明らかだろう。 悲痛な魂を曝け出した私小説的で暗くなりがちな内容とヘヴィなテーマを綴ってはいるが、父親と同じような道を辿らない、父親の過ちを繰り返さない、過去の過ちを繰り返さない、自分自身で前に進むという強い決意を表すなど、終盤にかけて過去の苦々しい記憶の瓦礫の中から希望の光りを垣間見るかのような、内省的で浄化されカタルシスを得たような開放感と安堵に包まれてアルバムは終わりを告げるので、中盤までにかけてのダークな負の感情は最後には消え失せていますから、ここまでの説明を読み進めて本作に耳を傾けるのを止めようと思った John Mitchellファンや英国ポップス好きな方々はご安心を。 ダーク一辺倒になりがちなヘヴィな内容だが、プログレッシヴなアイデアを巧みに使い、ユーモアを交えた親密なヴォーカルの語りかけと掻き鳴らされる感情を乗せたギターをメインに自然なフィーリングと没入感を作り上げる事に成功し、最後には救いと癒しを与えている John Mitchellの手腕は見事と言う他ないだろう。 月並みだが、派手さは乏しいものの本作は聴けば聴く程に味わい深いものとなっていく典型的な作品で、一見シンプルで単なるポップスのように聴こえるがその実、非常に質の高い芸術的な努力と技術が織り成されたアルバムでありますので、LONELY ROBOTのサウンドをまだ耳にした事が無い方やプログレ関係なく穏やかな英国ポップスがお好みな方なんかにもお薦めしたい、非常に質の高い作品を是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。 本作を購入する予定の方は、限定盤で三面開きデジパック仕様盤が先行リリースされていますので、どうせならそちらをお求め下さい。 Tracklists: 01. Recalibrating 02. Digital God Machine 03. Species In Transition 04. Starlit Stardust 05. The Island Of Misfit Toys 06. A Model Life 07. Mandalay 08. Rain Kings 09. Duty Of Care 10. In Memoriam LONELY ROBOT Line-up: John Mitchell (Lead & Backing Vocals、Guitars、Bass、Keyboards) Craig Blundell (Drums) with: Sarah Lambert-Gates (Backing Vocals)
by malilion
| 2022-09-27 18:49
| 音楽
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