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北欧シンフォニック・プログレメタル・プロジェクト CONFUSION FIELDがデヴュー作をリリース!

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CONFUSION FIELD 「Disconnection Complete」'21

去年の春に先行でデジタルリリースされたフィンランド産モダン・シンフォニック・プログレメタル・プロジェクトのデヴュー作の現物がやっと自主盤でリリースされたので即GET!

フィンランド人マルチ・ミュージシャン Tomi Kankainenは、ブラックメタル・バンドMORNINGSTAR(ではベーシスト。USAのプログHRバンドとは別バンド)やレトロHRバンドHEATHEN HOOF(ではベース兼バッキングシンガー)等のバンドで何十年も音楽活動を続けて来たが、近年になって自身のプログレッシヴ&シンフォ・バンド結成を目指すべく2017年にプロジェクトCONFUSION FIELDでの活動を開始し、2021年4月上旬に記念すべきデヴュー作が完成すると配信リリースされた。

まだ正式なバンド形態に成ってはいないが、長年のバンド仲間であるドラマー Petri Honkonen (元MORNINGSTAR、元RAUTAKELLO)とリードギタリスト Markus Jamsen (元SWALLOW THE SUN、元RAUTAKELLO)を招き、バンド名が指し示すようにプログレ、ユーロ・ポップ、HM等々の様々な音楽要素をMIXさせ、北欧ミュージシャンの作品らしくメランコリックなサウンドスケープを基軸に、デヴュー作と思えぬ洗練度と、アトモスフェリックに広がるエレクトロニック・サウンドが描き出す風景とシンセサイザーが築く重厚でダークな音像が折り重なりながら、Devin Townsend、OSI、NOSOUND等に近い、打ち込み、ループ等が巧みに使われたアンビエントなポストロックのタッチを加え、シンフォ・サイドからはRIVERSIDEやPORCUPINE TREE等からの影響を、デスメタルやゴシックHMサイドからはKATATONIAやSOEN等からの影響を交差させつつ、モダンでデジタリーなシンフォニック・プログ・メタルというユニークな融合サウンドを聴かせている。

雑多な音楽要素をMIXさせメロディアスでシンフォニックな作風のアルバムを制作してきたインディ・シンフォ・バンドは数あれど、本プロジェクトのサウンドはアルバムタイトル『断捨離完了』が示すように、普通ミクスチャー系ならプラスの方向性でサウンドを構築する所を複雑に交差する音楽要素を削ぎ落とし、シンプルにソリッドにサウンドをリアレンジした、ちょっと聴き従来のシンフォ系と同ジャンルと思えぬデジタリーでエレクトロニックな冷淡サウンドに包み込まれているが、Devin Townsendが影響を受けたMARILLION (Hogarth時代)、中期以降のGENESIS、さらにその二つのバンドの源流サウンドでもあるPINK FLOYD(と言うか David Gilmour)などのネオ・プログレ系や、RIVERSIDE、PORCUPINE TREE、GAZPACHOといった近年のシンフォ系からのメロディアスでリリカルなサウンドに加え、David BowieやRUSH、ELOYなどの往年のバンドやポップ・ミューシックの煌びやかな音楽要素の断片や、メンバー達の元々のフィールドであるHMサウンドの持つヘヴィ・エッヂが、サイケデリックな雰囲気やアトモスフェリックなタッチと層を成す様に折り重なって混在し、陰鬱で荒涼とした物語を描くような寂寞感ある冷ややかなサウンドの根底で渦巻いているのが分る、一筋縄ではいかぬ複雑な音楽要素が垣間見えるシンプル風な21世紀型シンフォ・メタル・サウンド作と言えよう。

参加ミュージシャンがシンフォ系出身でないHMフィールド出身者である事や、中心人物の Tomi Kankainenがベーシストな事もあって、もし彼がギタリストだったならもっと David Gilmour風の泣きのギターが聴けるPINK FLOYDやMARILLIONっポイ感じのプログレ度が高まっただろうがそうは成らず、彼がキーボーディストであったならもっとデジタリーでエレクトロニック要素が強まったポスト・ロックっポクなっただろうがそうも成らず、巧い具合に露骨な影響が感じられるフォロワー・サウンドに陥るのを避ける事が出来ており、加えて専任鍵盤奏者や専任シンガーを招かなかった事が意図してなのか偶然なのかは分かりませんが本プロジェクトのモダン・サウンドを独特なカラーにしているようにも思えます。

ギタリストの Markus Jamsenは明らに意識して David Gilmourっポイ、ソロを一部で弾いたりしていますが、これも恐らく Tomi Kankainenの指示なのでしょう。

ただ、可もなく不可もなくレベル(SHADOWLANDの Clive Nolanをチョイ下手にした、と言えば伝わる?)な Tomi Kankainenの淡々とメロディをなぞる様な歌唱はRIVERSIDEの露骨な影響を伺わせており、淡い輪郭の本作のサウンドにはマッチしているが手放しで褒められるヴォーカル・レベルでないのは間違いないので、もし次作があるならその辺りは専任シンガーを加入させるかゲストを招くかして補強して欲しい点ではありますね。

所謂定番の偉大な先達の影響が伺えるシンフォ系サウンドではないし、変化に富んだダークでアトモスフェリックながらメロディは流動的でちょっと纏まりが悪く、そしてキャッチーでもない楽曲ばかりなので、シンフォ系作品を期待するリスナーよりもアンビエントなポストロック作を期待するリスナーの受けの方がいいかもしれない、そんな一風変わった北欧プロジェクト作のアルバムだ。

本格的なバンドとして編成が変わればまたサウンドも変わるかもしれないし、もっとエッヂあるヘヴィ・サウンドが蠢きだすかもしれませんが、同じメンツで同一路線のサウンドを模索するのなら次作には手を延ばさないかなぁ…KATATONIAで聴けるようなHMの攻撃性とメランコリックな抒情性がせめぎ合うダークな美旋律、みたいなのが聴ければもうちょっと私の中での評価も変わったかもしれないんですが、ね…

後は所謂シンフォ系らしい華麗な鍵盤捌き、みたいなパートも無く、キーボードはバッキングや雰囲気づくりのSE的な使われ方をしている場面が多く、この辺りは Tomi Kankainenの本職がベーシストなのとこれまでHMミュージシャンとして活動してきた事も無関係ではない、一般的なマルチ・ミュージシャン作として捉えるには些かマルチさに物足りなさが残るポイントだ。

決して面白くない作品ではありませんし、不意に耳を惹く美旋律や絶妙なアレンジ、小気味よいデジタリー・サウンドなんかも飛び出してきて、でろーんとしたアンビエント・サウンドが滔々と流れていくだけの退屈なアルバムではないのは間違いありませんので、HMフィールドからのプログレへのアプローチ作に興味が湧いた方やモダン系シンフォ作やちょっとヘヴィでアンビエントなポストロック作なんかがお好みな方は一度チェックしてもいいかもしれない一作であります。

Track list
01. Sky Is Never The Same
02. Close Call
03. Nothing Holds The Storm
04. Become Invisible
05. Distort Reality
06. Anxiety Reflected
07. See Through Walls
08. Zen Garden Moment
09. Connecting The Dots

Musiciens:
Tomi Kankainen  (Lead & Backing Vocals、Bass、Keyboards、Rhythm Guitar、Programming、Songwriting)
Petri Honkonen   (Drums)
Markus Jamsen  (Lead Guitars)


by malilion | 2022-08-20 19:08 | 音楽 | Trackback
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