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80年代ジャーマンHMを受け継ぎながら90年代風サウンドを聴かせるジャーマンHMバンドMUTHAROADがデヴュー作をリリース!

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MUTHAROAD 「Midnight Stalker」'22

AXE VICTIMSの元メンバーを中心に1985年に結成されたドイツHRバンドUNIVERSの元シンガーとジャーマン・メロディアスHRバンドJADED HEARTや Michael Bormann BANDでギタリストとして活躍したメンツ等が集って2018年に新たに立ち上げられた90年代風なダークテイストを漂わすキーボード入り5人組ジャーマン・メロディアスHMバンドのデヴュー作が、デンマークのメロハー専科レーベル LIONS PRIDE Music傘下のWillow Creek Recordsよりリリースされたので即GET!

2018年末、UNIVERS(スウェーデンの方ではない90年代ジャーマンHRバンドの方)の二代目リードシンガーだった A.H. Sonは、ジャーマンHMバンドU.D.O.を率いる Udo Dirkschneider(ex:ACCEPT)の弟で同じくシンガーの Peter Dirkschneider(ex:DANTON、ex:VANIZE)と彼のスタジオで出会い、彼と共に数人のギター・プレイヤーを招き最初の曲作りを開始した時から本バンドの歴史は始まる。

そのコラボレーションは上手く機能し、オールドスクールな90年代HM風サウンドの最初のデモテープが制作されるが、同じ頃 Peter Dirkschneiderはプライベートな問題によりミュージシャン活動の休止を余儀なくされバンドとの関係は断たれてしまう。

中心人物を失う大きなアクシデントに見舞われながらも A.H. Sonはバンド結成を諦めず、2019年半ばにJADED HEARTや Michael Bormann BAND、HEAVENWARD、MEPHISTO等でギタリストとして活躍していた Andreas Rippelmeierと出会い、彼を正式にバンドへ加入させると自然と二人の人脈からメンバーは集められ、ジャーマンHM界の中堅どころが集結したバンドが完成し、ACCEPやU.D.O.での活躍より今やプロデューサーとしての名声の方が大きくなった Stefan Kaufmannのプロデュースの元、ドイツのRoxx Studioでレコーディングが開始されるものの2020年初頭、全世界を襲ったパンデミックの為に全ての作業が停止する憂き目に。

暫しの後、MUTHAROAD(ムーザロード)は再びレコーディングを開始し、今度はTHE TROPHYにキーボーディストとして参加している Marco Grasshoffのスタジオ Devils Cave Studioで作業を終え、Stefan Kaufmannが5曲で作曲、ミックス、レコーディングに参加するだけでなく、Marco Grasshoffがアレンジ、ミックス等にも関わった楽曲が4曲と、幾度ものアクシデントを経て結果的にパンデミックによる中断がバラエティに富んだ作風のアルバムとなる手助けになったのは怪我の功名と言えるだろう。

さて内容の方はと言うと、キャリア十分なドイツHM界の中堅どころが集結したバンドだけあって演奏やソングライティング、そしてプロデュース等に問題は見当たらず、デヴュー作と思えぬ高レベルで纏まったアルバムとなっており、ミッドテンポの重厚なリフ押しの楽曲は90年代風のダークな鈍色テイストを醸し出しているが、00年代特有のドライでささくれ立ったような荒涼感は少なく、メタリックなサウンドはその実ちゃんとメロディアスでドイツらしい重厚さを備えつつ叙情感と勇壮さを併せ持った80年代から脈々と受け継がれてきたジャーマンHMサウンドがその根底にしっかりと流れているのが分る、80年代ジャーマンHMのAXXISやVICTRYを今風のモダンでダークなサウンドにお色直しした、如何にも剛直、けれども美旋律も忘れぬヘヴィでフックあるギター主導の90年代風HMサウンドに近いメロディアス・サウンド、と言えば伝わりますでしょうか?

最近のバンドで言えば、LORDS OF BLACKっポイ感じもそこはかとある、と言えば褒め過ぎかもしれませんネ(´ω`)

後は専任の鍵盤奏者がバンドに在籍しているのも大きなポイントで、90年代風ダークテイストなヘヴィ・サウンドにエピカルなシンフォ・テイストやストリングスの艶やかな音色、シンセの洒落たアレンジやバッキングが絡む事で単なる90年代の懐古リメイク・サウンドに聴こえぬ、今風のモダンなタッチが付け加えられている点がこれまで数多くデヴューしてきたオーソドックスでバランスの取れた、けれど面白味も新鮮味も少ない90年代風ジャーマンHMバンド達のサウンドとの毛色の違いを感じさせており、しっかりとひと捻り加えられたメロディアスHMサウンドにベテラン・ミュージシャン達の矜持を見る想いであります。

無論、Stefan Kaufmannと Marco Grasshoffというバンド外からのインプットが大きかったのは想像に難くなく、続く次作でも本作のような作風や捻りの効いたアレンジでハッキリとカラーに差がある楽曲で楽しませてくれるのを期待してしまうベテラン勢なのでした。

後は意図的にか A.H. Sonがザラついた少しハスキーでしゃがれ気味なヴォーカルで熱唱する(UNIVERS時は本作程に荒れた歌い方でなかった)事でバンドサウンド全体のハードな印象を強めているようにも思え、もう少し力みを抜いて軽やかに歌い上げれば普通に80年代メロディアス・ユーロHRサウンドになりそうな、ちょっと初期RAINBOWっぽい雰囲気もある Andreas Rippelmeierのテクニカルでフラッシーなギターが大活躍している本アルバムの楽曲を、90年代ダークHM系は苦手っていう方にも是非一度チェックしてみて欲しい、まだまだB級なのは否めないけれどもうちょっとで一つ上のクラスへ行けそうな、そんな堅実でバランスの取れたバンドのデヴュー作であります。

Track List:
01. Back In The Saddle
02. Heart Of Gold
03. Born To Roll
04. Midnight Stalker
05. Wild Riders
06. Scream For More
07. Tame The Beast
08. Sharkrider
09. Back From The Dead
10. World Falls Apart
11. Nutbush City Limits

MUTHAROAD Line-Up:
A.H.Son       (Lead Vocals ex:UNIVERS)
Andreas Rippelmeier (Guitars ex:JADED HEART、ex:Michael Bormann BAND、ex:HEAVENWARD、ex:MEPHISTO)
Falo Faltu       (Bass PIRATES IN BLACK、ex:UNIVERS)
Marco Grasshoff   (Keyboards & Samples ex:REDRUM、ex:POWERWORLD)
Hans Heringer    (Drums ex:NINJA、ex:UNIVERS)



by malilion | 2022-08-15 20:05 | 音楽 | Trackback
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