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後にPRAYING MANTIS加入の Mark Thompson Smithが参加していた、幻のハードポップ・バンドFLIGHT 19の未発音源が初CD化で限定リイシュー!!

後にPRAYING MANTIS加入の Mark Thompson Smithが参加していた、幻のハードポップ・バンドFLIGHT 19の未発音源が初CD化で限定リイシュー!!_c0072376_16504769.jpg

FLIGHT 19 「Something We Did...(1985 - 1992)」'22

マニア御用達レーベル、イタリアのSTEELHEART Records『The”LOST UK JEWELS”Collectors Series』の第24弾は、英国Sheffieldで84年に結成されたキーボード入り5人組メロディアス・ハードポップ・バンドが1989年と1990年にデモ・レコーディングしていた音源12曲をオリジナルDATマスターテープから完全リマスタリング&初CD化で500枚限定リイシューしたので即GET!

NWOBHMマスターとして有名なロックDJ Neal Kay主宰のNWOBHMコンピ盤『METAL FOR MUTHUS 92』に時代を先取りするかのようなモダンでキャッチーな美旋律が素晴らしいブリティッシュ・ハードポップ曲『Liar』と『Flame』の2曲を提供していた事で未だにNWOBHMマニアやここ日本でその名を知られているFLIGHT 19は、1980年代初頭にMONZAの解散に伴い元メンバーの Nigel Ward (Bass)と Gary Flounders (Guitars、Keyboards)が中心になって英国Sheffieldで誕生する。

幸運な事にMONZA活動中に生まれたツテ(GEDDES AXEのドラマー)のお陰で、NWOBHMの中心人物であり世界中で人気者なロックDJ Neal Kayにデヴュー前からサポート、プロモーションされ活動を開始する事に。

ロンドンにプロユースなリハーサル・ルームとレコーディングスタジオを確保し、RIO、STRANGEWAYS、DARE、YAYA等といった当時の有望な新人バンド達を御手本にしつつ、メロディアスで高揚感のあるフック、分厚く爽快なハーモニー、そしてカラフルに鳴り響くキーボードが一体となってドライヴ感あるリフやスリリングなソロを伴って突き進む楽曲の上を、クリアーでストレートなヴォーカルがキャッチーに交差するNWOBHMの新スタイルを生み出そうと数多くの魅力的なデモ曲を創作するが、それはスリリングなインストゥルメンタル・パートを含んだ荒々しいメタリック・サウンドが身上だったNWOBHM期の他のバンド達とは一線を画す、総じて華やかなキーボードに導かれたメロディアスな美旋律とキャッチーで爽快な歌メロに焦点が合わされた、NWOBHというカテゴリーをはみ出した欺瞞的HMサウンド以外の何物でもない、NWOBHM~メロディアス・ロックに米国AORの甘いフレーバー等をタップリ加えた斬新なハイブリッド・サウンドと言うべきもので、それが結果的に他に類を見ない珠玉のUKハードポップ・サウンドとなるのでありました。

さらに幸運だったのは、80年代初頭に様々なアンダーグラウンドな英国バンドのフロントマンとして活躍し、90年代初頭には伝説のキーボーディスト Dave Rosenthal (ex:RAINBOW、ex:RED DAWN、ex:Billy Joel)と共に米国で活発な活動を続けていたがグランジ・ブームの煽りを受けて英国へ戻りPRAYING MANTISに短期間だけ在籍すると、00年代以降音楽ビジネスから引退していたがTHE SWEETへのゲスト参加やNEWMANのバッキング・ヴォーカル作業等を手始めに近年再び音楽活動を再開させた Mark Thompson Smith (ex:IDOL RICH、ex:PRAYING MANTIS、BIG LIFE、etc...)や、80年代初頭マンチェスターのローカル・シーンで数多くのインディ・バンドに参加し、その素晴らしい歌声をデモやシングルに残して来た Noel Fraser (ex:SARATOGA、ex:STRUTZ、ex:A.O.K.、etc...)といった、後に英国シーンで名を馳せる事になる優れたヴォーカリスト達を迎え入れ1980年代後半から1990年代前半にかけてデモテープを制作出来た事も、彼等の残した楽曲が未だに語り継がれている大きな要因の一つなのは間違いないだろう。

面白いのは Mark Thompson Smithが脱退したから Noel Fraserへヴォーカリストをチェンジした、という流れでなく、本デモ音源で2人が仲良くバッキング・ヴォーカルを担当していたりするのを見るに、上手いヴォーカリスト2人の在籍時期を重ねながら贅沢な体制でバンドは創作活動をしていた模様で、悪感情を持って2人のシンガーがバンドへの加入と脱退を繰り返したのではない、狭いローカルシーン故に相互援助のような創作体制でデモ録音が進行したのが分りなんとも微笑ましいですね。

ただ、時流や流行と言うものはどう転ぶか分からない先が読めぬ故に多くの人々が悩まされ、古来からショービジネスに携わる人達の人生を左右してしまうのですが、そんな素晴らしい楽曲を創作し、Neal Kayのバックアップもあったにも関わらず、順風満帆に思えたFLIGHT 19の活動はまるでボタンの掛け違えのように上手く運ぶ事は無く、ちょうど米国を中心に煌びやかでキャッチー、そして華やかでコマーシャリズムに偏重したヘア・メタルがメジャー音楽市場の趨勢を極めんとしていた80年代中期から90年代前半にかけて、荒々しいNWOBHMサウンドをベースに出発した彼等の音楽が市場に受け入れられるチャンスは訪れず『METAL FOR MUTHUS 92』に収録された2曲を除き正式に彼等の音源がリリースされる事はなく、いつしかFLIGHT 19の名は歴史の闇へ消えていくのでした…(´д⊂)

当人達は必死に70年代後半のアメリカンAORやウェストコースト・ロック、そしてコマーシャルなアメリカンHRをミックスしたサウンドを作り出そうとしたのだろうが、どうにも隠し切れぬユーロテイストなメロディとウェット感ある美旋律への意識の高さが、表面的には爽快でキャッチーなコーラスをフィーチャーしたアメリカン・テイストあるロック・サウンドに聴こえるけれども、その芯の部分にドッシリと英国特有のドライで能天気になりきれぬリリカルな雰囲気(分厚く爽快なコーラスだがHEEPにも通じる英国風味がタッツプリ!)が渦巻いているという、今で言う米英折衷なメロハー・サウンドを生み出したものの早過ぎたその新基軸サウンドが市場に受け入れられるチャンスに恵まれなかったのが不幸でしかなく、それを運命の悪戯と簡単に片付けるには余りにも理不尽で残酷な現実を突きつけられるようで胸が痛みます。

本作を耳にした方なら容易く理解してくれると思うが、彼等の楽曲の出来は少しも悪くなく、むしろデモと思えぬ極上の売れ筋メロディアス・ハードポップ・サウンドと言え、チャンスを得て時流に乗ってレコード会社がプロモーションに力を入れてくれさえすれば、アリーナを沸かしたメジャー・アクトやヒットチャートを席捲した産業ロック・バンド達を相手にアメリカでも大健闘をしただろうに、と。

けれどFLIGHT 19にチャンスは訪れず、コンピレーション盤“METAL FOR MUTHUS 92”の2曲に、POLYGRAM RecordやATLANTIC Recordなどが興味を示したが、残念ながらその後何も起こらず、それきりだったのです……

本作はデモテープ音源が元となっている為、幾らリマスターを施されていると言っても、ノイズや音割れ、音ヨレ、ヴォリュームのバランス問題やボトムサウンドの軽さ等の問題点が散見しますが、当時としては驚く程にモダンで先進的で、今で言う軽めなメロハー・サウンドに酷似した、甘口のセンチメンタルな美旋律が本当に堪らないド・キャッチーなハードポップ・サウンドを聴くにつけ、どうしてこんな素晴らしいヒットポテンシャルのある楽曲を提示したのにメジャー・レコード会社は彼等と契約を結ばなかったんだ、とその余りの見る目の無さに憤り、首を傾げる他ありません。

正直、今このウェットなメロディの80年代UKポップスにHM的ハードなギター・サウンドをフィーチャーし、80年代USポップスばりの華やかで爽快なハーモニーと産業ロック的キーボードをミックスした極上のハードポップ・サウンドを演る新人バンドがデヴューしたら、間違いなくAOR HEAVENかESCAPE MUSIC、そしてFRONTIERS Records辺りからアルバムがリリースされるインフォが世界中を駆け巡ってメロハー・ファンの心をガッチリと鷲掴みしていた事でしょうに…時代の巡り合わせとは言え、こんなに素晴らしいバンドが人知れず闇に消え、マイナーな知る人ぞ知る存在なままだと言うのがどうしょうもなく悔しいのです…(T~T)

しかも、そんな想いに輪をかけるのが Mark Thompson Smithの若々しく瑞々しい良く伸びる歌声が、どこまでもキャッチーにメロディアスなサウンドの上で水を得た魚の様に舞い踊っているのが…ホント、こんなに風なロマンティックで甘く屈託ない爽やかな歌声をPRAYING MANTISでも聴かせて欲しかったなぁ…バンドの方向性が違うから無理なのは分っているけど、今さらながらにPRAYING MANTISは宝の持ち腐れだったのが分ってしまってなんとも…orz

Noel Fraserのヴォーカルも、マンチェスターのローカル・シーンの中で数多くのインディHMバンドに引っ張りダコだったのも頷ける、マイルドで良く伸びる朗らかでメジャー向きな Mark Thompson Smithと同系統の歌声をしており、こんな良い声のヴォーカリストを2人も使ってデモを録音出来ただなんて、Neal Kayの助力もあっただろうけれど本当にFLIGHT 19はラッキー…いや、メジャー契約を結べなかったんだからラッキーではないけれど、こうして時代を超えて今再評価されているんだから当時メジャー契約を手にしていたけれど今では聴く事も誰も語る事もない当時流行っていたポップ・バンドやメジャー・アーティスト達に比べれば断然FLIGHT 19は恵まれているし、時の試練を耐える優れた作品を遺した奇跡の存在であったんだなぁ、と本作を聴くにつけシミジミ思ってしまいます。

『レコード契約を結べず消えたマイナー・UKバンドの発掘デモテープだなんて』と思って聴かないと絶対にメロディアス愛好家は後悔する、UKメロディック・ロックの歴史において絶対に見逃す事の許されない、そんな優れた80年代末期の幻のバンドが遺した極上のメロディアス・ハードポップ・サウンドを、是非一度チェックしてご自身の耳でその素晴らしさの程をお確かめください。

Track List:
01. Head Over Heels
02. Promised Land
03. Leonie
04. Flame
05. Nothing But A Loser
06. Liar
07. Don't Shine The Light
08. Strangers
09. F 19 (instrumental)
10. No Rest For The Wicked
11. Take Me Away
12. In This World

FLIGHT 19 Line-up:
Mark Thompson Smith   (Lead & Backing Vocals Track 1~7、12)
Noel Fraser         (Lead & Backing Vocals Track 8、10~11)
Nigel Ward        (Bass)
Gary Flounders      (Keyboards)
Mark Smith         (Guitars)
Andrew "Truck" Laurie   (Drums)



by malilion | 2022-06-09 16:53 | 音楽 | Trackback
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