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幻の80年代末USメロディアスHMバンドMIRRORS IMAGEの未発音源が初CD化リリース!!

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MIRRORS IMAGE 「Run Through The Night」'22

85年に唯一作『Gonna Raise Hell』をリリースしたNYのHMバンドSINFULの元メンバーがSINFUL解散後に結成した5人組オブスキュアUSメロディアスHMバンドが、87年頃から89年頃にかけてそれぞれバンドメンツを変えて3回レコーディングしていた未発デモ音源をまとめたコンピレーション盤が、マニア御用達レーベル Heaven & Hell Recordsよりオフィシャル初CD化&リマスターで限定500枚リリースされたのをチョイ遅れてGETしたのでご紹介。

SINFUL解散後にギタリストの Jimmy Ambroseとベーシストの Nars Lopezが立ち上げたプロジェクトが元になった短命に終わり正式なアルバム制作には至らなかったバンドながら、SINFULとはまた異なる如何にも80年代というストレートなアメリカンHRから煌びやかなキーボードをフィーチャーしたキャッチーなメロディックHMまで多彩な方向性を示し、華やかさとUSメタルらしいパワー漲るドライサウンドで、初期KING KOBRA、初期ICON、LION、KEEL、LEATHERWOLF、HURRICANE、QUIET RIOT、そしてDOKKEN等を彷彿とさせる、当時メジャー・チャートを賑わしていた典型サウンドと楽曲が収められた本レコーディング・マテリアルは今の耳でも十分な聴き応えがあり、何故メジャー契約を果たせず何の音源も正式に残せなかったのか不思議でしかありません。

簡単な彼等の歴史を述べておくと、ギタリストの Jimmy Ambroseとベーシストの Nars Lopezは、Ambroseが書いた数曲をスタジオに持ち込んで Ambroseのヴォーカルでデモを録音し始めながら、正式なメンバー探しを始める。

最初に2人に合流したのは元SINFULのキーボーディスト Bill Myerだった。

オーデションを経て Micheal Paulなるリード・シンガーが加入するが長居せず、同じ頃に断続的にデモ制作に参加していた Bill Myerが完全に離脱。

ある夜、カヴァー・バンドのギグを訪れバンドのドラマー候補をチェックしていた Ambroseは、そのバンドのギタリストと彼のヴォーカルの才能に目を奪われる。

結局ドラマーは適任者が見つからず、けれど地元の新聞に掲載された広告に、あの夜に見たギタリストからのメンバー募集が載っていたのだ。

ドラマー探しを続けながら、Ambroseと Lopez、そしてリードシンガーとして加入した Andy Meyerの3人はスタジオに戻り、Meyerのヴォーカルで以前のデモを再レコーディングし直す。

友人の推薦でドラマー Harry Finneganが加入し、彼のスタイルとバッキング・ヴォーカルのスキルは、バンドに欠けていた素晴らしいアクセントを加える事に。

バンドはさらなる強化を目論み、地元でも評判のギタリストで Ambroseの友人だった元DILLINGERの Mike Mirandaをセカンド・ギタリストとして迎え入れる。

Mirandaが素晴らしいギタリストであるだけでなく、非常に強力なソングライターであった事も幸いし、バンドの創作はさらに加速していく。

前後してバンド創設者の片割れ、ベーシストの Nars Lopezが抜け、新たなベーシスト Rick Lehlandが迎え入れられる。

バンドは地元サーキットで数多くのギグを行い、経験を積んだ後にスタジオへ戻り、KISSのLIVEサウンド・エンジニアとして長年活躍しニューヨークの他のバンドとも仕事をこなしていた Eddie Solanの指導の下、さらに数曲をレコーディング。

このレコーディング・セッションから4曲入り2本目のデモテープが完成し、テープをメジャー・レコード会社にバラ撒いた。

レコード会社の反応を待つ内に、もっとシンプルな構成の楽曲がプレイしたいと Rick Lehlandが脱退し、新たなベーシストに元LUVSHYの Bob Shehが迎え入れられる。

Bob Shehはフィラデルフィアのバンド SCARLET FEVERへ加入した Rick Lehland以上の演奏と、彼が引き連れて来た数多くの女性ファンをバンドにもたらす素晴らしい効果を生む。

その後、3本目のデモの為に2曲を追加で録音し、やっとMIRRORS IMAGEのデモに幾つかのレコード会社が興味を持ち始めるが、結局契約は実現せず。

そんな中でメンバー間に音楽的な相違が生まれ始めてしまう。

メンバーの半分は当時チャートで人気を博していたGUNS N' ROSESの活動を横目に、より純粋なロックンロール・アプローチのラフでストレートなサウンドへ進むのを望み、もう半分は80年代的なアプローチを推し進めた、より進歩的でメロディアスな方向性を望んでいた。

ベーシスト Bob Shehの脱退を引き金に、必然的にバンドは分裂し、唯一のオリジナル・メンバーであった Jimmy Ambroseがバンドを脱退、残されたメンツはしばらく活動を続けるものの敢え無く解散してしまう……(´A`)

バンド脱退の後、髪を切った Bob Shehは銀行業でキャリアを築いて成功を収め、Harry FinneganはNYのHMバンドBLACKLACEの元メンバーが立ち上げたバンドや数多くのバンド達とプレイを続けた。

残念な事に Harry Finneganは交通事故に遭いその影響でドラムを再び演奏出来なくなってしまい、近年早世してしまった…R.I.P.

Andy Meyerは結婚して音楽業界から引退するまで Harry Finneganと幾つかの異なるバンドで演奏を続けていたが、結局は成功を収められなかった…

Jimmy Ambroseは二十年近く音楽業界から姿を消していたが、80年代に活躍したバンドTHE HITSに在籍し古い友人でもあるベーシストのT J Loughranこと Casper Rainesと元Alice Cooper Bandや Paul Gilbertでの仕事、及びENUFFZ'NUFFのドラマー Ricky ParentとTRNZPRNTを結成し音楽業界へ返り咲く。

残念な事に Ricky Parentはデヴュー・アルバムのドラムトラックを録り終えた直後の07年に癌で病死してしまったが、引退を撤回した Andy Meyerがセカンド・ギタリストとセカンド・ヴォーカリストとしてバンドに参加し、セカンド・アルバムをリリースしつつ現在もメンバーを変えながら地道に活動を継続している模様だ。

この手の80年代末期に活動をしていたメロディアスHMバンドは90年代を迎えてグランジーの闇に呑まれ解散してしまうのが典型的パターンですが、彼等はその前の90年代初頭のラフなストリート乗りのロックンロールの流行により、バブリーで毒々しいL.A.メタルの流れを汲むサウンドを出発点として次にどの方向へ進むかで分裂してしまったグランジー無関係なパターンではありますが、時代の節目と流行の変化に翻弄されたという点では同様な将来有望だったインディ・バンドの一つと言えるでしょう。

元がデモテープ音源なのでノイズや音ヨレをリマスター作業でも完全に修正する事は叶わなかった模様で所々で聞き苦しい箇所があるものの、総じて無名のUSバンドのデモ音源としては上々な出来と言え、短い活動期間にも関わらずベーシストが常に不安定な事を除けば甘い声質と伸びやかなハイトーンを聴かせるフロントマンも他のメンツも安定し、音楽的にも80年代アメリカンHMサウンドを引き継いだメジャー指向のバンドで、もう少し我慢強く同じ方向性で創作活動を続けていたならば、ワンチャン日本盤だけでもアルバムをリリース出来て居たのでは、と思える、A級に成り切れないけどB級として上質な楽曲を創作する惜しいバンドでありました。

やはりドラマーを正式に迎え、ツインギター編成になって程よい疾走感ある楽曲を分厚いコーラスとフックある歌メロ、そして派手でテクニカルなギターに導かれキャッチーに突き進んでいく音楽性の定まった二期の音源が大変心地よく、正式にこの編成でシングル音源だけでも先行リリース出来れいればバンドの契約状況も変わったのでは、と思える佳曲が収められており、やはり正式な音源をしっかりとした録音環境で残して欲しかったですね…(´д⊂)

また、今回のリマスターで意図したのか少しキーボードの音を引っ込めてギターのソリッドなサウンドを前に押し出したようなハードな感触が強まったイメージへ統一するような操作が成されているようも聴こえ、オリジナルのキーボードがもう少し聴こえていただろうヴァージョンもボーナスで追加収録して欲しかったなぁ。

この手のインディ・バンドあるあるのメンツ探しに苦心しメンバーが常に不安定なのが原因で活動がままならず音楽性も定まらずにバンドが崩壊してしまった悲惨なパターンでない有望な新人インディ・バンドであっただけに、優れたミュージシャンシップと流行の変化を敏感に察した先読みの才があったが故にバンドが解散してしまったのが本当に悔やまれます。

ただ、Andy Meyerの声質や歌唱スタイルはGUNS N' ROSES路線は絶対にマッチしなかったでしょうから、下手にバンドの結束が固いまま音楽性を変えたラフなロックンロール作をリリースしてもソレはソレで悲惨な仕上がりになっただろう事は想像に難くないし、ダーティでラフな歌声の新ヴォーカルを迎えて新たな方向性のデモを制作していたならばデモの出来以前にもうソレは全くの別バンドと言える音楽であったでしょうから、残念ですが分裂して姿を消した方が潔く、MIRRORS IMAGEの名を汚す醜態を晒す事にならず良かったのかもな、と今なら思えますが…

既述した一連のバンドのファンの方や80年代末期のマイナーながら華やかな音楽性のインディUSバンドもチェックするダイハードなメタル・ヘッドの諸兄ならきっと気に入るだろう幻のバンドの発掘音源ですので、ご興味あるようでしたら限定リリースとの事なので早めに入手しておきましょう。

ENUFFZ'NUFFのファンやMIRRORS IMAGEの元メンバーが在籍している事から本作が気に入った方はTRNZPRNTもチェックしてみるといいかもしれません。

Tracklist:
01. Where's The Show
02. Chains
03. Run In The Night
04. Straight Thru The Heart
05. Dreams Come True
06. Change Of Heart
07. Hold On
08. Dangerous Love
09. Burning Up

MIRRORS IMAGE Line Up:
MK I: Tracks 1-3)
Recorded at Waterfront Studios, Hoboken, NJ 1986
Produced by J. Ambrose

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Nars Lopez      (Bass)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Bill Myer        (Keyboards)
Guest Drummer   Blaster

MK II: Tracks 4-7)
Recorded at Northlake Studios White Plains, NY 1987
Produced by Eddie Solan

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Harry Finnegan    (Drums、Vocals)
Rick Lehland     (Bass)
Mike Miranda    (Guitar、Vocals)

MK III: Tracks 8 & 9)
Recorded at RPM Studios, Long Island, NY 1989
Produced by Mike Miranda

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Harry Finnegan   (Drums、Vocals)
Bob Sheh      (Bass)
Mike Miranda    (Guitar、Vocals)

P.S.
タイトルの『夜を駆け抜けろ』やサブタイトルの『お前の夢の中にオレが居る』と、ニューヨークで成功を夢見ながら果たせず短命に終った華やかな80年代末期バンドらしさを感じさせる文言にノスタルジックな切なさビジバシ感じまくりであります(w


by malilion | 2022-06-07 00:02 | 音楽 | Trackback
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