TIME HORIZON 「Power Of Three」'22
CCM系プログ・バンドONE-EIGHTYの元キーボーディスト Ralph Otteson率いる米産シンフォニック・ロックバンドの7年ぶりとなる3rdアルバムをちょっと遅れてご紹介。 ONE-EIGHTY脱退後に西部へ移住し結成したCCM系バンドIRON CLAY POETSのバンドメイト Dave Dickerdon (Lead Guitars、Rhythm Guitars)と同じくIRON CLAY POETSの4枚目のアルバム制作にヘルプで参加した Bruce Gaetke (Drums、Lead Vocals)が、結局メンバーが脱退してIRON CLAY POETSは解散しアルバムはリリースに至らなかったのを残念に思った3人が中心になりカリフォルニアで本バンドは結成された、IRON CLAY POETSの発展バンドでありました。 CCM系コミュニティに属しセッションミュージシャンとして腕をふるう3人が結成した上にスタジオ・エンジニアリングを本業とする Ralph Ottesonによるプロデュースと各メンツの演奏は過不足(ドラムの音だけ異様に軽い問題はあったが…)なく、11年リリースのデヴュー・アルバム『Living Water』のリードトラックはUSシンフォ・バンドAJALONの Randy Georgeと元SPOCK'S BEARDの Neal Morseのプロデュースを受けるなど、その80年代風のキャッチーなプログレハード・サウンドはCCM系プログ&シンフォ系ファンのみならず一般のUS産ロック・ファンにも訴求する話題性十分であった彼等ですが、続く15年リリースの2nd『Transitions』で Ralph Ottesonだけを残してメンツが一新、音楽性もデヴュー作よりさらにレイドバックして70年代風なプログレ・サウンドへ接近した上にゲスト・ヴォーカリストを3人も招くセッション体制で制作され、急激なサウンド変化が当初のファンを戸惑わせたのが影響したのか次第に彼等の名を聞く事も無くなっていった中、久しぶりに届けられた新作は、2ndからバンドに参加した Allen White (Bass)と Dave Miller (Guitars)にさらに2人新しいメンバーを加え、キーボード入りツインギター6人組の新編成となって制作されている。 2ndで半ば Ralph Ottesonのソロ・プロジェクトへと変質した時は不安しかありませんでしたが、なんだかんだ言って裏方メインで長らく活動して来ただけあって Ralph Ottesonはプレイヤーとしてのエゴを優先するよりもトータルで作品の完成度やコンポーズや楽曲の仕上がり具合を優先する自己抑制出来る優れたミュージシャン(敬虔なクリスチャンだから?)であったのが幸いしたのか、しっかりと新たな専任フロントマンを招いてバンド作らしいスタイルの新作をこうしてバンド・メンツを安定させ届けてくれた事をまずは祝いたい。 願わくば長く本バンドに在籍して、そのメロゥでノスタルジックな叙情感漂う素晴らしい歌声を披露し続けて欲しいものです。 また、前作では数曲のみにしか参加しかしていなかった Bruce Gaetkeが本作ではしっかりとドラムスを務めており、元々ヘルプの立場で Ralph Otteson主導のバンド活動へ参加した事や自身のセッション活動を優先して前作でのゲスト的な参加とは思いますが、今もしっかりとオリジナル・メンバーとしてバンドに在籍し相変わらず良い歌声を披露するのみならず長きに渡って Ralph Ottesonの脇を支えてくれているのが大変喜ばしいですね。 テクニカルなインストゥルメンタル・パートの組み込まれた楽曲や派手で壮大なキーボード・ソロパートを聴くまでもなく中心人物の Ralph OttesonがYES、GENESIS、KING CRIMSON、EL&P、KANSAS、PINK FLOYD等の欧米のプログレッシヴ・ロックの影響大なのは明らかながら、新フロントマンの David Bradley Mauが持ち込むブルージーなテイストある米国人ミュージシャンらしいキャッチーな歌メロが他のシンフォ系バンドと一線を画す要素となって本バンドの新たな独創性を生み出しているのと、英国人ミュージシャン Alan Parsons風な要素やカナダのSAGAっポイ鍵盤使いやRUSH的なデジタリーな音色、UKダンス・ポップのTEARS FOR FEARSを想い出させるリズミックさ、USシンフォのSPOCK'S BEARDを思わすハモンドの畳みかけや産業ロックの代名詞TOTO風な要素など、古典的プログレだけに拘らず80年代のポンプやARENA等のネオプログレのタッチ、そしてより現代的サウンドや新メンバー達が持ち込んだであろう多種多様な音楽要素も巧みに取り込んで再構築し、既述したバンド群に無いCCM系特有な宗教的音楽要素を加え、独自性あるバンドサウンドを構築しているのは見事の一言だろう。 Ralph Ottesonは今回もスペイシーなシンセにリリカルなピアノ、そして歪むハモンドを刻んでと、ソロにバッキングに所狭しと怒涛の鍵盤プレイを披露しているが、当然バランスを踏まえて楽曲の中で耳を惹くセンスあるプレイに努めており、穏やかで伸びやかなヴォーカルを主軸に据え、ハードエッジを産むギター・リフやツインギターの甘美な絡みもフィーチャーしつつ、コンパクトに纏まったキャッチーでメロディアスな楽曲の数々は、リードトラックからエンディングに至るまでゲスト奏者のプレイも活かしつつ聴き手を飽きさせぬ細かな工夫や構成の妙がアルバムの随所に施されており、洗練されたメロディアスUSシンフォニック・ロック・サウンドが目一杯詰まった前作の不振が嘘のような快作に仕上がっている。 デヴュー作で80年代USプログレ・ハード路線、2ndで70年代風プログレ路線ときて、続く本作ではジーザス一辺倒でない普遍的なソングライティング、豊かなオーケストレーション、音の深みや音楽性の幅の広さという多様性、そして力強いフックあるヴォーカルとCCM系らしい爽快でキャッチーなハーモニーと言う1stと2ndの要素をMIXさせながら、レトロな感触も取り入れつつモダンなアプローチとバランスを考慮したコンパクトな楽曲、そしてシンフォニックで壮大なスケール感あるメロディアスなロックサウンドへと進化しており、USシンフォ・ロック・ファンなら一発で気に入るだろうし、より普遍的なメロディアス・USロック・ファンにも十分訴求するクロスオーバーな作風と言え、ノスタルジックな味わいと現代的なシャープさも兼ね添えたハイブリッドなメロディアス・ロック作と言えるだろう。 前作でも Jake Livgren(KANSASの頭脳にして黄金期を支えたソングライターでギタリスト Kerry Livgrenの息子)がヴォーカルで、さらに Tony Kaye(初期YESの鍵盤奏者)等の著名なミュージシャンもゲストに迎えていたが、本作でも先頃惜しくもバンド活動の終了を告げたカナダのプログ・ポップバンドSAGAのフロントマン Michael Sadlerがヴォーカル(!)で参加しており、その他にも世界を代表するフレットレス・ベーシストの鬼才 Michael Manring(!!)が参加と、今回も『殆ど無名なインディ・バンドにどうしてそんなビッグネームガ!?』と驚かされるゲスト奏者(コレがCCM系コミュニティのパワーなのか?)が招かれていて、各ミュージシャンのファンにとって本作は見逃せぬ一枚なのは間違いない。 シンフォ系と言うだけで既にマイナーなのに、さらにCCM系と聴く人を選ぶバンドではありますが、そんな前情報で本作の思いの他にキャッチーでメロディアスなUSシンフォ・サウンドを聴き逃すには惜しい一作でありますので、もしご興味を持たれた方がおられましたら是非一度本作のサウンドをご自身の耳でチェックしてみて下さい。 Track List: 01. Living For A Better Day 02. I Hear I See 03. Prelude 04. The Razor's Edge 05. Steve's Song 06. Time To Wonder Why 07. The Great Divide 08. Digital Us TIME HORIZON Line-up: Ralph Otteson (Keyboards、Piano、Hammond Organ、Backing Vocals) Bruce Gaetke (Drums、Backing Vocals、Lead Vocals on Track 04) Allen White (Electric Fretted & Fretless Basses) Dave Miller (Electric & Acoustic Guitars) Michael Gregory (Electric & Acoustic Guitars) David Bradley Mau (Lead Vocals、Support Keyboards)
by malilion
| 2022-06-03 17:08
| 音楽
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