DREAMTALE 「Everlasting Flame」'22
HELLOWEENを源流に北欧で発展してきたSTRATOVARIUS & SONATA ARCTICA直系バンドである北欧フィンランド産メロパワ・バンドが前作『Seventhian... Memories Of Time』'16 から6年ぶりとなる通算8枚目のフル・アルバムを久々に自主盤でリリースしたのを少々遅れてご紹介。 ちょっと待って見たのですが本自主制作盤は未だに国内盤リリースのインフォを見かけず、とうとうSONATA ARCTICA直系バンドという北欧メロパワ・カテゴリーな神通力が失われ(本家SONATAの人気が凋落してはネ…)てしまったのか、デヴュー以来長らく国内盤がリリースされて来たが遂にその記録も途切れてしまった模様だ…前作でも危惧していたけれど現実になると悲しいですね…orz 1999年に結成され Rami Keranenががヴォーカルも兼ねていたデモCDの頃から数えて23年以上のキャリアを持つ彼等は、デヴュ-作から4thまで毎作シンガーが異なるなどアルバム毎に顔触れが変わるメンバーチェンジの激し過ぎたバンドだったものの前作までは比較的メンツが安定した布陣で順調な活動が続いていたが、長いインターバルを経てリリースされた本作は案の定と言うか又なのかと溜息が漏れると言うか、リーダーでギタリストの Rami Keranenと4th『PHOENIX』から加入のキーボーディスト Akseli Kaasalainenのみが残留で、その他のパートを総入れ替え(涙)した男女ツイン・ヴォーカル7人編成へ大幅に姿を変え本作は制作されている。 Erkki Seppanenに代わって加入の注目の新フロントマンだが、Taage Laiho率いる北欧フィンランド産メロパワ・バンドMAD HATTER'S DENにその Taage Laihoの後任として加入した Jarno Vitri(MAD HATTER'S DENではVocalとBassを兼任)と、初期BATTLE BEASTのフィメール・シンガー Nitte Valo嬢の男女ツイン・フロントマン体制となっており、Jarno Vitriの声質は2ndアルバム『Ocean's Heart』のシンガー Tomi Viiltolaに似た歌声なので違和感が無く、前任者 Rami Keranenとも良く似た歌声を披露(ヴォーカル・スキルはさすがに及ばず、ちょっと素人臭い)していて、従来のDREAMTALEの世界観にアジャストする線の細いハイトーンが得意という如何にもなB級感を醸し出しており、言われなければフロントマンがチェンジした事に気づかない人も居るかもしれない。 さて、大幅なメンバーチェンジを経てリリースされた本作のサウンドは、前作と同一路線の北欧バンドならではの叙情性と疾走感を湛えたメロディアスでノスタルジックな美旋律がシンフォニックに鳴り響くユーロピアンHMサウンドを余すところなく披露していて、デジタリーでモダンなキーボードの音色、インスピレーションに満ちたヴァイキング風の勇壮な雰囲気、そして伝統的なパワー・メタルの源流であるジャーマン系HM的なスピードとタイトでヘヴィなサウンドがバランス良くMIXされた楽曲は、デヴュー以来変わらぬマイナーな臭気を放ちまくるB級メロパワ・サウンドな音楽的方向性をベースにしつつも遂にマイナー路線を脱却し、男女ツイン・ヴォーカルを大々的にフィーチャー…いや、正直ヴォーカル・スキルは Jarno Vitriに勝っているし声の種類の多彩さや通り具合的に Tomi Viiltola嬢のフィーチャー具合の方が大きく感じられる初期DARK MOORやNIGHTWISHへ大接近した壮大なスケール感を感じさせるシンフォニックHMサウンドへと大きく様変わりしていて驚かされました。 B級マイナーの壁を打ち破る方法としてNIGHTWISH化するのが最近のマイナー・メロパワ・バンドの流行りなのか、CARDIANTに続いてまさかDREAMTALEも同じ道を辿るとは驚きですが、それだけユーロ圏でNIGHTWISH形態の男女ツイン・ヴォーカルHMバンドがウケているからなのでしょうね……遂にB級の壁を打ち破ったはいいものの、代償に没個性化してしまうとは痛し痒しですが、バンドがこのままマイナーの闇に沈んで消えてしまうよりは没個性化してでも生き残って欲しい、というのがファンの偽らざる心境でありましょう…でもなぁ…(´д⊂) これぞまさにメロ・パワという高速ダブルドラム、スリリングでトリッキーなギター・リフ、ブンブン唸るベースが刻むタイトなリズム進行、キャッチーな高鳴るサビは大合唱必至、煌びやかでシンフォニックなシンセワークは充実の一言、いつも通り身を捩る程(笑)に大好きな大仰に盛り上がり畳みかけ疾走する楽曲、とデヴュー以来DREAMTALEを構成する要素はそのままに、相変わらずHELLOWEENやGAMMA RAYっぽいフレーズや歌メロ、STRATOVARIUS風コーラス、SONATA ARCTICAタッチなキーボードとギターのユニゾンや高速ソロなど散見するものの全てを己のカラーに染め上げている為に妙なフォロワー臭が無いのは流石はベテランのアレンジ力と言え、疾走するツーバス・ドコドコをトレードマークに何もかもを北欧メロディック・パワーメタル・サウンドへと昇華せしめているのは見事の一言に尽きるだろう。 アルバムの構成も見事で、スピーディなメロ・パワ曲は当然の事として、ポップでキャッチーな歌メロやオペラティックなシンフォニック・パートも素晴らしく、ダークで勇壮なケルティック・フレーズ、フォーク調で繊細なアコースティック・パートと次々に現れるサウンドは本当に幅広い表情を持ち、バラエティ豊かなテンポとメロディで彩られたエネルギッシュに奏でられる楽曲の数々は、ベテランならではのソングライティング力が隅々に活かされており、十四曲という多目な曲数のアルバムにも関わらず何度も繰り返し聴きたくなる、それでも少しも飽きが来ない、という素晴らしい仕上がり具合のシンフォニックHMアルバムだ。 キーボーディスト Akseli Kaasalainenも頑張ってあの手この手で耳に残る魅力的なメロディを奏で、リフにメロディにソロにと Rami Keranenも頑張ってギターを掻きむしっているが、どうしたって華やかな男女ツイン・ヴォーカルの分厚いコーラスや爽快なハーモニーに隠れてしまって、今までよりバックの演奏の印象が薄まったように思えるのがちょっと意外でしたが、そこはさすがに何を今回押し出すべきか、リスナーが何に一番注目しているか、を考慮してのバランス取りをしたのでしょう。きっと。 その男女ツイン・ヴォーカルもまだ練度不足なのか、ヴォーカル・レンジがお互いかなりの音域でかぶっているからか、もう一つ差異を巧く活かしきれていないように思える箇所もあるもののコレは時間が何れ解決してくれると信じております。次作でも同じバンド編成なら、ね…(汗 以前から懸念されて来たプロダクションも今回は大きな問題は見当たらず、BATTLE BEASTやBEAST IN BLACK、初期DARK MOORやNIGHTWISH等を好む主流派リスナーだけでなく、HELLOWEENやGAMMA RAY等の正統派パワメタ・ファンや、STRATOVARIUSやSONATA ARCTICA等の北欧メロディアスHMファンにも間違いなく訴求するだろう本作は、惜しむらくは没個性化してしまった事と『コレ!』というキラー・チューンが見当たらない(涙)のを除けばケチのつけ所がないA級未満な極上のB級HMアルバムと言えるだろう。 お約束の典型的なメロ・パワ曲やシンフォニックでスピーディな曲以外にも、珍しい所ではフィンランド語の歌詞がついたKORPIKLAANI風の『Tanhupullo』や『Lady Dragon』は『Phoenix』'09 に収録された佳曲で、本作ではバラードへとアレンジし直されて収録されており、さらに19年に最新ラインナップが発表され先行シングルとしてリリースされた『Sleeping Beauty』の改訂版も収録と、それ以外にも Tomi Viiltola嬢の恰幅良い(汗)見た目通りのワイルドな歌声や独特なダミ声だけでなくドリーミィで透明感ある女性らしい艶やかな美声もフィーチャーした楽曲も数多く収録されている充実作なので、これまでB級マイナーでイマイチぱっとしない凡庸なメタル・バンドだとDREAMTALEを評していた方にこそ、本作を一度チェックして欲しいですね。 没個性ではあるけれど、こんなに完成度の高いアルバムがどうして国内盤未発売なのか…古臭いと言えば古臭い要素はあるけれど、ヘッポコ新人メロハー・バンドを青田買いするくらいなら本作のような充実作をリリースして欲しいものです…(´A`) Track list 01. King Of Kings 02. Blood Of The Morning Star 03. Last Goodbyes 04. Ghostride 05. Immortal Souls 06. No Shadows Goes Too Far 07. Summer Rose 08. The Glory 09. Eye For An Eye 10. Lady Dragon (2022 Version) 11. Silent Scream 12. Tanhupullo 13. Sleeping Beauty (2022 Version) 14. Pirates' lullaby DREAMTALE Line-up: Rami Keranen (Guitars) Akseli Kaasalainen (Keyboards) Jarno Vitri (Vocals) Nitte Valo (Vocals) Zsolt Szilagyi (Guitars) Mikko Hepo-Oja (Bass) Arto Pitkanen (Drums) P.S. なにやら自主制作盤な為か殆ど輸入盤店にも入荷していない劣悪流通状況なので自分でバンド公式HPか向こうのレコードショップへ注文して取り寄せるしかないみたいですネ。 まぁ今はDLメインなリスナーが殆どでしょうからその手の煩わしさは感じていないのかもしれませんが、個人的に現物主義なのでやっぱりフィジカル盤を入手しておきたいんですよねぇ…
by malilion
| 2022-05-06 17:53
| 音楽
|
Trackback
|
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 more... お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
検索
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||