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フュージョン寄りなアメリカン・プログ・バンドVAST CONDUITのデヴュー作がリリース!

フュージョン寄りなアメリカン・プログ・バンドVAST CONDUITのデヴュー作がリリース!_c0072376_17033283.jpgVAST CONDUIT 「Always Be There」'22

USシンフォ・メタル・バンドENCHANTやUSプログ・メタル・バンドTHOUGHT CHAMBERのキーボーディスト Bill Jenkinsが新たに立ち上げたヴァイオリン入り6人組USカリフォルニア産新プログ・フュージョン・バンドのデヴュー作をご紹介。

そもそもこのバンド、当初はEPプロジェクトとしてスタートし、フィメール・ヴォーカルをフィーチャーした3曲のデモ・ヴォーカルのレコーディングを数年前に開始したのが事の起こりであったらしい。

ご存じのように全世界をパンデミックが襲い、ショービジネスに携わる人達に予想外の空白期間と休止時期が訪れ、その結果として当初のEP予定がフルアルバムのバンド作へと発展する事になった模様だ。

バンドはリーダーでキーボーディストの Bill Jenkins (ENCHANT、THOUGHT CHAMBER)を中心に、ギタリストに Michael Harris(ARCH RIVAL、THOUGHT CHAMBER、DARKOLOGY、Michael Harris TRANZ-FUSION、etc...)、ベーシストにベテラン Jeff Plant(THOUGHT CHAMBER、etc...)、ドラマーにトリップホップ系の Will Jenkins(GHOST AND THE CITY、GREAT WALL)、バイオリニストにJAZZ、フュージョン系の Jim Hurley(BLACKMORE'S NIGHTのサポートメンバー、NIGHT HAVEST、ANCIENT FUTURE)、そして無名ながら透明感があり多彩な感情を表現するヴォーカリオスト Frielという才能あふれるメンバー達で構成されており、ゲストに Bert Lams(CALIFORNIA GUITAR TRIO)がアコースティツク・ギターで、Bill Jenkinsの弟の Tom Abrairaがトランペットでそれぞれ参加し、Manon Roem女史(オリジナル・デモのヴォーカル)と Betsy Walter女史がバッキング・ヴォーカルで参加している。

メンツだけ見るとTHOUGHT CHAMBERの派生バンドのように思えるが、本作のサウンドにはメタル要素は薄く、所謂シンフォ系やプログレ系とも大きく隔たりのあるJAZZ&フュージョン系サウンドなので、本体バンドENCHANTやTHOUGHT CHAMBERのサウンドを予想してプログHMファンな方が本作をお求めになるのは避けた方が宜しいだろう。

逆にTHOUGHT CHAMBERの2ndで聴けたJAZZっぽいフィーリングやモダンでフリーフォームなキーボードの音使いが気に入った方などは、本作ではその方向性が大きくクローズアップされていると言えるので是非一度本作をチェックしてみて欲しい。

構成メンツを見ても一筋縄でいかぬハイレベルなサウンドを構築するだろう事は容易く予想がつくと思うが、ギタリスト Michael Harrisが本作のサウンドを指して『Smooth Progressive Rock』と呼称しており、おおよそ一般的に言われるプログレ・サウンドとは隔たりのあるジャズ&フュージョン要素を持つ精緻でストレートアヘッドなタッチが楽しめる複合形態音楽で、FLOWER KINGSやSPOCK'S BEARD風のキーボード主導なプログレッシヴ・ロック的要素もあるが決してメインではなく、JAZZやフュージョン、ファンク、そしてTOTOを思わすAOR風のアーバンテイストも垣間見せつつ、リズミックでシャープなギターと艶やかで甘美なヴァイオリンの音色、そしてJAZZ&ファンクをベースに安定したボトムを築くリズム隊と各プレイヤーの技巧を重点に置いたハード・フュージョン風なサウンドが楽しめる非常にインテリジェンス香るスムースでモダンなアルバムだ。

Bill Jenkinsの軽やかなシンセを中心とした煌びやかなオーケストレーションやクラシカルで気品あるピアノなど美しく且つ技巧の凝らされた鍵盤サウンドを主軸に、Jeff Plantとのファンキーで図太いフレットレス・ベースと手数が多くグルーヴィな Will Jenkinsのドラムがソリッドなリズムとテクニカルな変拍子を難なくこなして自然なフィールでボトムを固め、時に繊細で時に壮大な音色を紡ぐ Michael Harrisのギターと Jim Hurleyの優美で華麗なヴァイオリンをフィーチャーしながら、巧みにJAZZ&フュージョン要素や Frielとフィメール・シンガー達のクリアーで軽やかなコーラスも織り交ぜつつ、ニューヨークのモダン・プログレ・バンド IZZを彷彿とさせるポップさも匂わせ、最新アップデートされたMAHAVISHNU ORCHESTRAの様に美しいアンサンブルを響かせながら一気に駆け抜けていく様は痛快で、正直 Bill Jenkinsが新たに立ち上げたUSフュージョン・バンドというインフォにそんなに期待していなかっただけにコレは完全に予想外の素晴らしい出来映えで驚かされました。

音楽形態的にヴォーカル・パートが少ないのは致し方が無いのだが、甘い声質でクリアーで伸びやかな歌声を聴かせる Frielのパフォーマンスをもう少しフィーチャーしてもよかったのではないか、と勿体なく思えてしまう、そんな点しか不満点が見当たらない完成度の高い一作であります。

Bill Jenkinsが語る所によると『本作のメイン・コンセプトは全ての親子関係についてで、死、離婚、病気、自己中心的な考えなど、様々な状況における苦しみがあるが、それらは幸福にとって非常に重要な要素であり、互いを支え合い、より良い人生を送るための一瞬一瞬が貴重なのだ、という事を本作では訴えかけている』

『本作の発売日が自身の父親が亡くなってから四十年目の記念日であり、その事が本作中の楽曲で表現されている人生と哲学の道筋を動かす切っ掛けとなり、本作の楽曲の殆どの基本的アイディアは何年も前から存在していて、今回遂にそれを実現した』という事らしい。

親子関係以外にも現代社会の生き方や、世界を襲ったパンデミック、厄介な時代に人々が何をするかについても語っており、この辺りの内省的な歌詞のテーマは典型的なプログレ系アーティストならではだろう。

既に次作に向けて作曲作業は進んでおり、セカンド・アルバムをリリースしたらフォローアップのツアーも予定しているとの事なので続報を待ちたい。

JAZZ&フュージョン系のプログ・サウンドと聞くと取っつきにくく感じるだろうが、思いの他にキャッチーで音数も少なくすんなり耳に入ってくるサウンドは美しく華麗な響きに満ちており、ENCHANTやTHOUGHT CHAMBERの名に釣られて来た典型的プログレ系サウンド好きな方にとっては“当てが外れた”アルバムかもしれないが、意外に味わい深く心地よい聴き易いサウンドなのでご興味あるようなら是非一度チェックしてみて欲しいですね。

Tracks Listing
01. Barrier
02. Soul Tuck
03. Always Be There
04. Endless Days
05. Too Busy
06. Odessa
07. 500 Miles
08. Philly Etymology
09. Early Eclipse
10. Of A Feather
11. Wesley Save Us

VAST CONDUIT Line-Up:
Bill Jenkins    (Keyboards:NCHANT、THOUGHT CHAMBER、etc...)
Will Jenkins    (Drums:HOST AND THE CITY、GREAT WALL)
Michael Harris   (Guitars:ARCH RIVAL、THOUGHT CHAMBER、DARKOLOGY、Michael Harris TRANZ-FUSION、etc...)
Jeff Plant     (Bass:THOUGHT CHAMBER、etc...)
Friel        (Vocals)
Jim Hurley     (Violin:NIGHT HAVEST、ANCIENT FUTURE、etc...)

With:
Tom Abraira     Trumpet on Track 08
Bert Lams      Acoustic Guitar on Track 09
Manon Roem     Vocals on Track 01
Betsy Walter     Vocals on track 09




by malilion | 2022-04-29 17:04 | 音楽 | Trackback
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