![]() 南米コロンビアはアンデス山脈に程近く南米でも三番目に高い標高に位置する街ボゴタ出身のミュージシャン二人を中心とするHR&AORプロジェクト・バンドがアルバムに先駆け21年12月にシングル『The One』を先行リリースし耳の早いメロハー・マニアの注目を集めていたが、今回多数のゲスト奏者を迎えて遂にデヴュー・アルバムをリリースしたのでご紹介。 中心人物である Harold Waller と GG Andreasの二人はそれぞれローカル・バンドで7年間活動をしており、CINDERELLA、SCORPIONS、TWISTED SISTER、Sebastian Bach、スペイン人シンガー・ソングライター Juan Daniel Jimenez Gonzalez率いるLEO JIMENEZ等、多数のアーティスト達のオープニング・アクトを務める機会に恵まれコロンビアのロックシーンで存在感と高い評価を獲得していた。 同郷の二人は友人であった事から自然な流れでタッグを組む事となり、クラシックなHRサウンドを身上とするプロジェクト・バンドを2017年にボゴタで結成し本デヴュー作を届けてくれる運びとなった模様だ。 本作を一聴して驚かされるのが、その80年代に米国メインストリームを賑わしたキャッチーでフックある華やかなサウンドのバンド達を彷彿とさせる楽曲と随所に散りばめられた欧州産AORバンドを思わせるウェットな美旋律の数々で、さすがデンマークのメロハー専科レーベル LIONS PRIDE Musicが契約しただけある新人バンドだと納得しきりであります(*´∀`*) BON JOVI、CINDERELLA、KISS、DANGER DANGER、FIREHOUSE等といった80年代から90年代初頭にかけて米国市場で支持を得て来た先達からの影響が伺えるブライトでキャッチーなHRサウンドをベースにしつつ、Harold Wallerの操る煌びやかで涼やかなシンセサイザー・サウンドを基軸にソフトでロマンチックなヴォーカル・メロディと北欧産メロハー・バンドや欧州産AORを彷彿とさせるウェットな美旋律の組み合わせ具合は非常に素晴らしく、シンプルなメロディやギター・リフでありながらリスナーのイマジネーションを刺激する仄かにノスタルジックな味わいとモダンなアレンジが活かされた楽曲の数々はHR的な疾走感や攻撃性は少ないもののデヴュー作にしてかなりバランスに気を使っただろう仕上がり具合で、南米バンド特有のダンサンブルな要素やラテンのリズムアプローチやラテン・フレーバー等は皆無の、言われねば南米ミュージシャンのプロジェクトとは気づかぬユーロ臭漂う艶やかなメロディック・サウンドに終始驚かされっぱなしだ。 アンビエンスなキーボードとハードエッヂなギターの絡みが絶妙だし、分厚く爽快なヴォーカル・ハーモニーがブライトなエネルギーを放つ心地よさも素晴らしく、シンプルなメロディで彩られた楽曲は細やかなディテールが成されたシンセサイザーを中心にフィーリングに溢れた美旋律で飾り立てられており、別段革新的な事をしている訳でもなく寧ろ古風なスタイルながらも80年代サウンドの単なる焼き直しに陥らぬよう巧い具合に細部をモダンなアレンジで纏め上げているソフト目なメロハー・サウンドには、高密度なプロダクションやガッツリと造り込まれた米国や欧州のメロハー・バンド程の圧迫感が無く、彼等が奏でる朴訥でセンチメンタルな甘口メロディの数々はこの手のメロハー・バンド達を日々追いかけている熱心な諸兄程に一服の清涼剤たりえるのではないだろうか? キャッチー且つメロディアスな楽曲と、シンセサイザーが奏でる巧みなディテールや甘美なメロディを絶妙なバランスで組合すセンスは、流石コロンビアで名の知れたミュージシャン達が立ちあげた新プロジェクトなだけあって実に優れており、デヴュー・アルバムにして中々の独自性と優れた音楽性を示す事に成功しているように思え、今後の彼等の活動を注視せざるを得ない、名も知れぬ南米マイナー・プロジェクト・バンドと決して侮れぬ一作であります。 多数参加しているゲスト奏者は殆どが地元の南米ミュージシャンと思われ詳しい情報も無く知らぬプレイヤーばかりで申し訳ないのですが、唯一欧米シーンにも名を知られているのがブラジル人ギタリスト Kiko Shred(ex:Mike Vescera Band、ex:Tim Ripper Owens Band)で、恐らく南米ミュージシック・シーンで二人と面識があって本作に参加したものと思われる。 ここまで絶賛しておいてなんですが、諸手を上げて全て素晴らしいとも言い難く、中でも狙ってなのかどうかは不明なのですが GG Andreasの叩くドラムの音が妙に軽く、打ち込みも併用している為なのかもしれませんが、どうにもリズム隊の仕事ぶりがパッとしない点はアルバムを聴き終えて少々気になりました。 また、Harold Wallerのヴォーカルは少し苦りのある歌声で勢いのあるHR曲ならまだしも高いヴォーカルスキルを求められるソフトなAORを歌うには現時点では些か能力不足なのは否めず、ミドルレンジがメインな音域の狭いヴォーカルも相まって少々楽曲の方向性にアジャストしていないように思えるが、低いソフトな歌声やフィメール・ヴォーカルっぽいファルセットなど中々に魅力的な歌声を聴かせるので今後の精進次第で化ける可能性も無きにしも非ずと思え、次なる新作でその辺りの問題点をどう克服してくるのか等々興味は尽きません。 楽曲のそこかしこから透け見える影響を思うに、二人とものフェバリット・バンドはDANGER DANGERかもしれませんので、次なる新作ではDANGER DANGERっポイ、もう少しアップテンポな楽曲やスピーディーでアグレッシヴな楽曲が増えればアルバムにももっとメリハリが生まれると思うんですけどね… そしてコレを言うのは野暮なのは重々承知しているんですが、正直言ってフルメンツでのバンド作ではない為にサウンドにバンド特有な一体感のようなエネルギーの流れが希薄なのと、バジェットの限られているインディ・プロジェクトな事もあってかどうにもプロダクションのクオリティに問題があるのは否めず、ヴォーカリストとドラマーが制作したカラオケ・デモにゲストプレイヤー達が銘々のソロ・プレイを追加したかの様に聴こえる瞬間があり、目指す音楽の方向性や煌びやかなシンセを活かしたメロゥなポップ・ロックな楽曲は大変に好ましいんですが、なんだかデモテープに毛の生えた程度の仕上がりな印象を最後まで拭えなかったのが残念でなりません… とまれ今後メンツを補充すれば上述の問題は自ずと解決するでしょうし、まだまだ本格的なバンドとして始動しているとは言い難い状況ですから、次なる新作が届けられる頃には諸々の問題がサッパリ解決していると信じて気長に待ちましょうかね(*´ω`*) Track Listing: 01. If You're Clear With Your Words 02. Sense Of Reality 03. The One (Album Edit Version) 04. Write Your Story 05. Spell Of Love 06. Angel 07. Leave It All Behind 08. Best Part Of Me 09. Out In The Cold 10. I Need To Learn 11. The One (Single Edit Version) COUNTERLINE Line-up Harold Waller (Vocals、Guitars、Bass、Keyboards、Programming) GG Andreas (Drums、Guitars) with: Rubio Res (Pianos、Strings) Carlos Mendoza (Guitars on Track 4、7) Diego Cely (Guitars on Track 1、2、9) Frank Hansen (Guitars on Track 1、2、8、9) Dany Acosta (Guitars on Track 3) David Camilo Solano (Guitars on Track 3) Paul Alfery (Guitars on Track 5) Kiko Shreds (Guitars on Track 6) Os Segura (Bass on Track 1、2、9)
by malilion
| 2022-03-13 12:42
| 音楽
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