![]() バンド立ち上げの張本人で長きに渡ってバンドを率いて来た文字通りバンドの顔でもあった Graham Bonnetが脱退(!?)して初となるUSメロディアスHMバンドの5枚目となるフルアルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてご紹介。 前作『Born Innocent』は34年(!!)ぶりにオリジナル・メンバーの Jimmy Waldo(Keyboards)と Gary Shea(Bass)が復帰したALCATRAZZとして4thがリリースされただけでなく、Chris Impellitteriや Steve Vai、Bob Kulick、Dario Molloといった、過去に Graham Bonnetと活動を共にした事があるギタリスト達が作曲とギターでゲスト参加し、ある意味 Graham Bonnetのキャリア集大成的な構成が話題でもあったし、モロに Yngwie Malmsteenフォロワーなギタリスト Joe Stumpを迎えて制作されたアルバムは、これまで敢えて避けてきたネオクラ早弾きギターもフィーチャーしつつ、苦労人 Graham Bonnetがこれまでの長い長い活動(当時、既に73歳!)で培ってきた音楽要素をふんだんに取り入れた、キャッチーでフックある歌メロと意外な程にメタリックでエッジあるハードサウンドと幅広くバラエティに富んだ如何にもアメリカンHMというブライトさと初期っぽいネオクラシカル風味あるミステリアスでダークな雰囲気が混在する楽曲は新鮮な驚きをもたらしてくれたが、それ故にイマイチ作品としてのまとまりに欠ける散漫な仕上がり具合であった感は否めない一枚でありました。 それでも殆どのファンはオリジナル・メンバーを迎えたALCATRAZZの復帰を歓迎したでしょうし、そもそもALCATRAZZ名義の活動は06年以降LIVE活動のみで、10年と13年に来日公演も行なっていたが80年代当時のオリジナル・メンバーはフロントマンの Graham Bonnet以外は誰一人おらず、彼とバックバンド的なニュアンス、もっと言えば殆ど実質的にGRAHAM BONNET BANDであった訳ですから、古くからのファン程にオリジナル・メンバーの復帰に涙した事でしょう。 まぁ、17年のGRAHAM BONNET BAND来日公演時に、既に Jimmy Waldoとはバンドメンツとして復帰していたし Gary Sheaがゲスト参加していたしで、勘の良いファンはその先の流れが読めていたかもしれませんけどね。 ただ、Yngwie Malmsteenフォロワーなギタリストとして知られる Joe Stumpを加えた編成でALCATRAZZの83年デヴュー作『No Parole from Rock 'n' Roll』とRAINBOWの79年アルバム『Down to Earth』の完全再現を含む企画公演がALCATRAZZの本格活動再開の呼び水になったのは確かなのですが、まさか Joe Stumpを残留させたまま『Born Innocent』制作に入るとは思ってもみませんでした… デヴュー作で Yngwie Malmsteen、2ndで Steve Vaiとバンドが凄腕の天才ギタリスト達のステップストーンにされた教訓から3rdでは無名で地味な Danny Johnsonを加入させ、その為か楽曲の出来栄えや話題性はイマイチになって結局バンドの人気は凋落の一途を辿った流れはファンに良く知られているので、Joe Stumpはあくまで企画再現の為に迎えたギタリストで、これまで彼がリリースしてきたソロ作等を聴いた方なら分ると思うのですが、プレイのコピー度の程はまだ良いとしてお手本に全く及ばぬ作曲能力を露呈していた彼をそのまま残留させ新作制作へ突入するとは全くの予想外だったのです。 そういう訳で Joe Stump在籍のままに制作される楽曲の出来栄えに些かの不安を感じていたのですが、さすが Graham Bonnetです、そんな不安を払拭するように Steve Vai提供の楽曲や、若井 望(Guitars: DESTINIA、METAL SOULS)が作曲&ギターで参加した楽曲等の外部ライター達のインプットを取り入れて作られたアルバム収録曲は、テクニカルな速弾きをフィーチャーしつつもALCATRAZZ史上一番の音楽性の幅広さとバラエティに富んでいて、Don Van Stavern(Bass :RIOT)などの予想外の参加もあったりで個人的には前作『Born Innocent』は非常に楽しめた作品でありました。 前置きが長くなりましたがそんな状況に続き1年2ヵ月という比較的短いブランクでリリースされた5枚目のアルバムである本作は、まさかのフロントマンが Graham Bonnetからソロ活動や複数のバンドに在籍するスコットランド人ヴォーカリスト Doogie White(ex:PRAYING MANTIS、ex:Ritchie Blackmore's RAINBOW、ex:Yngwie Malmsteen's RISING FORCE、TANK、MICHAEL SCHENKER FEST、etc...)へチェンジするという最大の変化と、前作と違って外部のインプットが大幅に減った本当の意味でのバンド単体での能力が問われる再始動作であります。 TANKのギタリスト Cliff Evansがベースで参加したり、前作に続きRIOTの Don Van Stavernの参加や、SAXONのドラマー Nigel Glocklerといったゲスト・ミュージシャン達が参加しているものの前作のような楽曲の幅を広げる使われ方はしておらず、前作制作時に予想していた『Joe Stumpが Yngwieに成り切ったネオクラシカルHM路線のアルバムが出来る?』という悪い予想が今回は当ってしまっており、音楽性の幅は狭まって良く言えば焦点がしっかり定まった初期ALCATRAZZ風の、悪く言えば Yngwie Malmsteenのフォロワーが没個性な速弾きプレイを縦横無尽に繰り出しまくっている些か古臭い感の否めないマイナー調のメロディがユーロ風味を強く感じさせる80年代風アメリカンHMアルバム、という印象でしょうか。 無論、初期ALCATRAZZよりモダンな要素や今風のアレンジ、そして意図的にユーロ風HMな楽曲のテイストなど、これまでのALCATRAZZのアルバムで耳にした事のない鮮烈な要素が満載な勝負作に相応しい新機軸ではあるのですが、なんでも起用に歌いこなせる抜群の歌唱スキルを持つ、それ故に些か個性が薄く灰汁の無い Doogie Whiteの歌声と、これまた Yngwie Malmsteenのフォロワーで没個性な速弾きプレイの Joe Stumpの音数の多く派手な、だけどメロディに魅力が乏しいギターが合わさって、なんとも楽曲とメロディの引っ掛かりが乏しく感じられてしまうのです… 多くのALCATRAZZファンが望むだろう Yngwie Malmsteen時代の初期ALCATRAZZを彷彿とさせるネオクラシカル系サウンドの装飾とユーロ風味な味付けが施された、ベーシックで古典的なスタイルのアメリカンHMである楽曲自体の出来が著しく悪い訳ではないのですが、どうにも借り物臭いと言うか没個性に聴こえてしまって…ウーン…(汗 なんでも歌いこなせる巧いヴォーカリストである Doogie Whiteの歌声が浮き彫りにしたのは、お世辞にも幅広いとか絶品とは言えぬ歌唱スキルな Graham Bonnetの灰汁の強い歌声がALCATRAZZをALCATRAZZたらしめていたのだという事実と、逆説的に Graham Bonnetのあの力みまくった一本調子の苦し気な歌声(笑)の唯一無二な魅力を再認識させられた事でしょうか。 ギタリストの脱退劇の煽りではあるのですが今までALCATRAZZはコロコロと音楽性を変えた、けれど魅力的なアルバムをリリースし、それ故かなかなか売れ行きに繋がらず伸び悩んで来ていたとも取れるので、初めて本作のような個性の弱い、しかしオーソドックスなHMアルバムをリリースしたのはマーケット的には間違いだとも強く言いきれず、なんとも評価しにくい一作だと言えましょう。 幅広い表現力を持つ Doogie Whiteのヴォーカル・パフォーマンス自体は素晴らしく、テクニカル的な面で Joe Stumpのプレイにも勿論問題も無く、その他のバックのプレイも前作よりネオクラシカルHMとしての焦点がしっかり定まったプレイとソリッドでタイトな仕上がり具合のサウンドですので、幾分か楽曲のスケールがこじんまりとはしているものの、この手のネオクラシカルHM作品が好きな方であれば満足は出来るだろうアルバムでありますので、ご興味あるようでしたら一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。 ALCATRAZZ Line-up: Doogie White (Vocals) Joe Stump (Guitars) Jimmy Waldo (Keyboard) Gary Shea (Bass) Mark Benquechea (Drums)
by malilion
| 2021-11-28 23:50
| 音楽
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