![]() 00年代以降の英国シンフォ・シーンを代表するメロディアス・シンフォニックのトップ・アクトMAGENTA、そのMAGENTAを率いるイギリス人マルチ・プレイヤー Robert Reedがバンド結成前の最初期の90年代初頭に活動していたポンプ・バンドCYANのデヴュー作が、最新のテクノロジーを用いられて再録された完全新作が自主制作リリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。 今は亡きオランダのSI Musicリリース作のナンバー28番として93年にリリースされていたオリジナルのデヴュー作は、チープなイラストのジャケに Robert Reedが全てのパートをこなすソロ・ポンプ・プロジェクト作でありました。 全て Robert Reedの独力でオリジナル作は制作されていた為、PENDRAGONの Nick Barrettと大差ない歌唱力(汗)でたどたどしく歌うヴォーカル・パートはお世辞にも上手いとは言えず、ドラムパートも打ち込みの軽く固いサンプルながら既にこの時点でGENESISや Mike Oldfieldの影響が伺えるストリングス・オーケストラを意識したアレンジを交えたキーボード・パートに後のMAGENTAを彷彿とさせる美しいシンフォニックなプレイが垣間見え、ウェットな叙情感香るメロディアスな楽曲の出来はインディ・バンドのデヴュー作としてはまずまずのレベルで実に興味深かったですね。 その後、Nigel Voyleという相棒のヴォーカリストを得てCYANは99年までコンビ体制でアルバムをリリースし活動を続けるものの当時のメジャー・シーンはダークなグランジーが持て囃される時代、80年代に勃発したポンプの勢いもとっくに消え失せていた英国シーンで彼等の活動が上手くいくはずもなく敢え無く解散してしまう… その途中の95年に Robert Reedは既にTVや映画の作曲家としてキャリアを築いていたミュージシャン Danny Chang(Guitars、Percussion、Backing Vocals)の呼びかけに応じて Andy Edwards(Lead vocals、Guitars)、Doug Sinclair(Bass、Guitar、Sound F/X、Backing Vocals)、Tim Robinson(Drums)等5人でTHE FYREWORKSなるシンフォ・プロジェクト・バンドを立ち上げ97年に自主制作アルバムを一枚リリースするものの、Danny Changが本業を優先したので現在まで活動再開の情報も無く、THE FYREWORKSは一作のみを残すだけとなっている。 VAN DER GRAAF GENERATOR、GENTLE GIANT、JETHRO TULLからの影響を受け、ハモンド、メロトロン、ムーグ、ピアノなどの『ヴィンテージ』タイプに限定したキーボードだけを使用して制作された70年代テイストあるTHE FYREWORKSのサウンドは非常に面白く、ゲストにフルート奏者を迎え、Robert Reedはキーボード類だけでなくスライド・ギターとバッキング・ヴォーカルも担当しているので、彼のファン的には珍しい Robert Reedのプレイが聴ける一作と言えるだろう。 面白いのは後にMAGENTAで活動を共にする Tim Robinsonと Robert ReedがTHE FYREWORKSで既に顔を合わせているという事実で、そういう意味でもMAGENTAファンにとってTHE FYREWORKSの唯一作は興味深いアルバムだと言えるに違いない。 さて、今回の再録作だが、ジャケのデザインはそのままに、イラストのレベルが上がっている事や楽曲タイトルや楽曲の並びも全て同一となっており、インナーに記されている Robert Reedの語る通りなら、元々学校の友達と83年にオリジナルのCYANは結成され、35ポンドの金を皆で出し合って4トラック録音された楽曲が元になっているのが『For King And Country』との事なので Robert Reed的にかなり本作に思い入れがあるのと、当時は全て己の手でこなさなければならず思うようにアルバムが仕上がらなかっただろう後悔が垣間見えます。 アルバム制作バジェットの確保や録音機材の向上、そして自身の演奏スキルも向上し、人脈も以前と比べものにならぬくらい多岐に渡るようになった現在の Robert Reedが、彼の持てるスキルを存分に注ぎ込んで丁寧に再構築した本作は、93年リリースのオリジナル作が宿していた情熱をそのままに2020年代に相応しく新パート追加と再アレンジを施され堂々の一級シンフォニック・ロック作として新たに甦っており、オリジナル作を遥かに凌駕する傑作に仕上がっているのに異論を誰も唱えぬだろう。 本作の再録音に際して招かれたメンツは、自身が率いるバンドTIGER MOTH TALESやCAMELのキーボード奏者としても活躍する英国出身の盲目の天才マルチ・ミュージシャン Peter Jonesをリード・ヴォーカルに、英国シンフォ・バンドTHE TANGENTや自身が率いるプログ・バンドMASCHINEでの活躍が知られる Luke Machinをリード・ギタリストに、ベースにはMAGENTAでも活動を共にしGODSTICKSにも在籍する Dan Nelsonを、THE FYREWORKや初期MAGENTAで活動を共にした Tim Robinsonをゲスト・ドラムスに、Robert Reedのソロ作に何度か参加していた英国人フィメール・シンガー Angharad Brinn嬢と既に解散している英国ポップ・グループXYPに在籍し、英国のTVショー『The Voice UK 2018』でも活躍したフィメール・シンガー Tesni Jones女史をバッキング・ヴォーカリストに迎え制作されている。 中期GENESISや Mike Oldfield、そしてIT BITES等のオリジナル作で伺えた影響を残しつつ現在のMAGENTAとは方向性の異なるモダンなアプローチやセンス良い洒落たアレンジが楽しめる、Robert Reed お得意のカラフル且つダイナミックなオーケストレーションをたっぷりフィーチャーした英国バンドらしい美しいメロディとウェットな情緒が香るドラマティックなシンフォ・サウンドで、やはりオリジナル作との大きな違いにして本作の素晴らしい仕上がり具合に多大な貢献を果たしているのが Peter Jonesの太くエモーショナルな力強い歌声と、ヴォーカルパートの深みと鮮やかさ、そして艶やかさを二割増しに輝かせている清らかな美声を操る女性バッキング・ヴォーカル陣の仕事ぶりなのは間違いないだろう。 本作の主人公である Robert Reedの華麗な鍵盤捌きは当然として、シャープで透明感あるサウンドとスリリングなフレーズで楽曲を盛り立てる Luke Machinのテクニカルなギター・プレイや、リリカルでなんとも言えぬ温かなサウンドを紡ぎ続ける Peter Jonesのホイッスルや、一転ムーディ-に響き渡るJAZZっぽいサックスも聴きどころであります。 ぶっちゃけここまでスケールを増して高いレベルで結実している高品質サウンドだとオリジナル・ヴァージョンうんぬん関係なく独立したアルバムとして本作を問題なく楽しめるので、変にオリジナル盤にこだわらず今回届けられたこの美しい調べに耳を傾け味わうだけで十分だと思うが、まぁ自分もそうなので良く分かるんですがマニアックな性のプログレ・ファン達は、きっとさして良い出来でもないと分っている本作のオリジナル盤を探し求めちゃう因果な生き物なんですよねぇ(w 本作に招かれたゲスト陣の名前や、各人が参加しているバンド、そして Robert Reed率いるMAGENTAや彼のソロ作のファンの方にも間違いなく満足してもらえるだろう、Robert Reedの過去から絶える事なく続く情熱の煌めきを楽しめる英国情緒香る美しくセンチメンタルなシンフォ作を是非一度チェックしてみて下さい。 Musicians: Robert Reed (Keyboards、Guitar、Backing Vocals) Peter Jones (Lead vocals、Saxophone、Whistles) Luke Machin (Lead Guitars) Dan Nelson (Bass) with: Tim Robinson Drums Angharad Brinn Backing Vocals Tesni Jones Backing Vocals 尚、ボーナスのDVDには、インタビューと、プロモ・ヴィデオ映像3曲、5.1 SURROUND音源等を収録しているのでそちらもお見逃しなく!
by malilion
| 2021-11-23 14:21
| 音楽
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