![]() フランス人キーボーディスト Pat Sanders率いる多国籍ユーロ・シンフォ・バンドの7thが2年ぶりに届けられたのを即GET! 19年にアルバム未収録曲を集めたコンピレーション盤『Singled Out』をリリースしているが、その前に同年19年にリリースしていたフルアルバム『Planet Junkie』が正式な6thなので2年ぶりという事になる待望の新譜だ。 15年の再結成作『Trip the Life Fantastic』リリース以降、小刻みにメンバーチェンジをしながらバンドとしての結束と練度を高めつつあった彼等だが、前作『Planet Junkie』ではフロントマン不在のままゲスト・ヴォーカルを迎えてアルバムが制作され先行きに不安を感じていた訳だが、悪い予感は当ってしまった模様だ…orz 本作は、Pat Sanders以外は17年リリースの5th『Twilight』より参加のギタリスト Mathieu Spaeterだけ残留するのみで他パートは全てメンバーが一新(涙)された新5人編成による初アルバムとなっている。 まぁ、今回のメンバーチェンジは Pat Sandersの気まぐれだけやバンドメンバーに対する要求の高さばかりを責める訳にもいかぬでしょう。 なにせ全世界を襲ったパンデミックの影響で世界的に興行ビジネスの需要が落ち込んだ訳ですから、メジャー契約のあるバンドならいざ知らず脆弱な経済基盤しか持たぬインディ・バンドの、その中でもドマイナーなインディ・シンフォ系のバンドのメンバーともなればLIVE活動の中止は即収入の停止に直結したでしょうから、生活の為にバンド以外の活動で日々の糧を得なければならぬだろうし、そんな休止期間中に他バンドから誘われたり、なーんて事も多かっただろうし、元々 Pat Sandersのワンマン・プロジェクトからスタートした多国籍なメンバーが在籍する本バンドではメンバー間の繋がりも希薄だったのか、呆気なくこのパンデミックの休止期間中にバンドは空中分解してしまったんでしょうねぇ…(´д⊂) 前作でフロントマン不在とは言え着実にバンドの練度は上がってきており間もなく極上のインディBクラス・バンド入りも夢じゃない、という一歩手前まで来ていただけに非常に残念であります… メジャー、インディ問わず、今回のパンデミック騒動で世界中のミュージシャンが多大な影響を受け、多くのバンドメンツが思い描いていた未来のビジョンが狂ったんでしょうから彼等だけの問題として嘆く訳にもいかないんですが、あのままパンデミックが起こらなければきっと同じメンツで新フロントマンだけ迎えて同一路線の素晴らしいシンフォ・アルバムを届けてくれて遂にAクラスへ片足をかけていたかもしれない、と思うとやるせないです… さて、注目の新メンバーですが、まずフロントマンにギリシャのオルタナティブ&プログレッシブ・ロックバンドVERBAL DELIRIUMの中心人物でありフロントマン兼キーボーディストで昨年デヴュー・ソロ作『Fading Thought』も注目された John'Jargon'Kosmidisを迎えている。 ミドルレンジ主体で歌い上げる非メタル系の所謂シンフォ定番なジェントリー・スタイルで、ちょっとシアトリカルなテイストもあったり時折エキセントリックだったり芝居がかったくぐもった声による語り口等の多種多様な歌声を聴かせる John'Jargon'Kosmidisによるヴォーカルは、リリカルで華麗なキーボード主導な繊細なアコギ・パートや薄っすらメロディをなぞる柔和なコーラス、優美なストリングス・パート等の美しいアンサンブルや“引き"の美しさが際立つアレンジが効いた、PENDRAGON、GENESIS、YES、MARILLION、そしてPINK FLOYD等の影響が透け見える繊細でドラマチックなメロディアス・シンフォサウンドによくマッチしており、新フロントマンの歌声に不安を抱いていたファンの方々は安心して欲しい。 そのヴォーカル・スタイル故か、本作の楽曲がそういう方向性だからなのか、John'Jargon'Kosmidisはギリシア人なのに妙に70年代プログレ・バンドでよく聴けた英国人ヴォーカルっポク聴こえる(時々、ARENAっポクもある)時があって面白いですね。 またベーシストにはIQ、ARENA、JADIS、FROST *などなど、英国の幾つかのポンプ&シンフォ系バンドとの仕事で知られるベテラン・プレイヤー John Jowittが今回新たに迎えられており、ファンが望む通りタイトで太く、ソリッドでメロディアスなベースラインでバンドサウンドに多大な貢献をしている。 新ドラマーには元KARNATAKAで現在はHayley Griffiths Bandやソロ活動、セッション、そして自身が率いるプログレ・バンドZIOでプレイする Jimmy Pallagrosiを迎えており、猛者リズム・セクションのタイトでテクニカルなプレイによって楽曲がパワー・アップしたのが一曲目からビシビシ分って、その影響でか Pat Sandersと Mathieu Spaeterが織り成す物悲しくも美しいウェットなメロディが一層に引き立って聴こえ、単純にそのリズム・セクション要素だけでも本作はDRIFTING SUNカタログの中でも最上位に位置するサウンドのアルバムだろう。 ただ、猛者達を迎えてユーロ・バンドらしいセンチメンタルな美旋律の質やプレイが向上したまでは良かったのですが、前作のハードドライヴィンするロックティスト有るギターも活躍するアンサンブル際立つ美旋律から、幾分かハードタッチが抑え目になり初期のような Pat Sandersが華麗に操るポンプチックなキーボードが目立つ今一つオリジナリティが薄くアンバランスなイメージのサウンドへと再び変化していて、個人的には湿り気を帯びた英国叙情が漂うメランコリックなメロディが光るモダン・ユーロ・シンフォサウンドを聴かせてくれたもののもう一歩な感のあった16年リリースの『Safe Asylum』時点へ何歩か後退して戻ってしまったような感触を覚えました。 うーん、今回新たに迎えられたメンツによる新編成は絶対に長続きしない(汗)だろうから、どうせまた次作で一からバンド練度の上げ直しを始める羽目になるのが目に見えているだけに、本作のサウンドが素晴らしければ素晴らしい程に素直に喜べないんだよなぁ…('A`) 相変わらず Pat Sandersの奏でるピアノのセンチメンタルな響きやリリカルで軽やかなタッチが素晴らしいだけに、余計にその感が強くて… 尚、本作にはフランスのシンフォ・バンド NINE SKIESのギタリスト兼ヴァイオリン奏者である Eric Bouillette、イギリスのシンフォ・バンドGANDALF'S FISTのキーボーディスト Ben Bell、オランダのプログレ・バンドFRACTAL MIRROR、THE BARDIC DEPTHS等のギタリストである Gareth Coleをゲストに招いてそれぞれヴァイオリン、ハモンドオルガン、ギターで楽曲に華を添えているので、各プレイヤーのファンな方は要チェックかもしれない。 それぞれキャリア組の新メンバーとこれまたシンフォ&プログレ系バンドのファンにはお馴染みなゲスト奏者の練達のプレイがバンドサウンドをこれまでより一段上のレベルへ引き上げているのは明らかで、遂に固定メンバーとなった Mathieu Spaeterの弾く泣きを含んだエモーショナルで透明感あるギターと、Pat Sandersが華麗に操る鍵盤楽器が奏でる美しい調べの数々は、艶やかなヴァイオリンの音色と疾走する歪んだハモンドも相まって、これまでのDRIFTING SUN史上最高レベルのドラマチックでシンフォニックな美旋律を鳴り響かせているのは間違いありませんから、彼等のファンは言うに及ばずモダンなユーロ・シンフォものがお好みな方ならば是非一度ご自身の耳でチェックしてみても決して損にはなりませんよ。 今回も自主制作盤で、ポーランドのインディ・レーベルOSKA Recordsからのディストリビュートとなっておりますが、どう考えてもプレス数は多くないでしょうから、現物で入手したい方はお早目にどうぞ。 最後にメンバーチェンジが激しすぎるので、一応メモ代わりに。 DRIFTING SUN Musicians: 『Trip the Life Fantastic』'15 Pat Sanders (Keyboards) Peter Falconer (Lead & Backing Vocals) Will Jones (Drums、Percussion) Dan Storey (Guitars、Bass、Mixing) Andrew Howard (Guitars) 『Safe Asylum』'16 Pat Sanders (Keyboards) Peter Falconer (Lead & Backing Vocals) Will Jones (Drums、Percussion) Manu Michael (Bass) Dan Storey (Eelectric & Acoustic Guitars) 『Twilight』'17 Pat Sanders (Keyboards) Peter Falconer (Lead & Backing Vocals) Will Jones (Drums、Percussion) Manu Michael (Bass) Mathieu Spaeter (Guitars) 『Planet Junkie』'19 Pat Sanders (Keyboards、Drum Programming、Composer & Producer) Will Jones (Drums、Percussion) Manu Michael (Bass) Mathieu Spaeter (Guitars) 『Forsaken Innocence』'21 Pat Sanders (Keyboards) Mathieu Spaeter (Guitars) John'Jargon' Kosmidis (Vocals、Keyboards) John Jowitt (Bass) Jimmy Pallagrosi (Drums)
by malilion
| 2021-11-20 18:48
| 音楽
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