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一作のみで姿を消した英国産ハードポップ・バンドMONROのアルバムがリマスター&未発曲追加でリイシュー!!

一作のみで姿を消した英国産ハードポップ・バンドMONROのアルバムがリマスター&未発曲追加でリイシュー!!_c0072376_02180617.jpgMONRO 「Monro +7」'21

マニア御用達レーベル、イタリアのSTEELHEART Records『The“LOST UK JEWELS”Collectors Series』の第23弾として、英国南ウェールズ出身のツインギター4人組メロディアス・ハードポップ・バンドMONRO(モンロー)が87年に残した唯一作に、87年と88年の未発表スタジオ・セッション音源計7曲を追加収録した500枚限定リリースなリマスター再発盤を即GET!

当時、LPは各国でリリースされたがCDは日本だけリリースであり、89年にイギリス本国でもCD化されたが、活動期間が短かった為かその後は音源のリイシューに恵まれず、装丁が劣悪で盤がCD-R製な事が多く悪名高い再発レーベル米国Retrospect Recordsから権利関係がグレーな再発盤が一回出回っただけであった本バンドが、やっとオフィシャルでリマスター&初出の未発曲セッション音源をボートラ追加で500枚限定とは言えリイシューされ彼等のファンやUKハードポップ・ファンには待ち焦がれた朗報でしょう(゚∀゚)

80年代後期定番なキラキラしたキーボードとキャッチーなヴォーカルに分厚く華やかなコーラスとコンパクトでメロディアスな楽曲が満載な、軽やかなシンセが活かされたハードポップ・サウンドにはそこはかと後期SWEET臭が漂い、LAメタルやバブリーなアリーナロックがメインストリームで持て囃されていた時代を反映するように如何わしいワイルドさやアメリカン・ロック的なハードさも兼ね添えた本作のフレッシュなサウンドは、FM、SHY、TOBRUK、RIO、LEA HARTと同系統な80年代ブリティッシュ・ハードポップの名作の一枚に数えられてもおかしくない目の覚めるような素晴らしい出来栄えであります。

では、簡単にバンドの歴史をば。

Ozzy Osbourneや Ian Gillanとの活動でその名を知られるアイルランド人ギタリスト Bernie Tormeと昵懇な Craig Richards(Rhythm Guitars)と Andi Turner(Lead Guitars、Vocals)が中心になって南ウェールズでバンドは結成され、同時期に活動していた他バンド群との差別化の為に最初のフロントマン Dave McCleanの発案で白いイメージカラーでバンドを統一し、二人が影響を受けたNIGHT RANGERや Prince、JOURNEY、AC/DC、VAN HALEN等といったバンドのサウンドをベースに、バブルガム・ポップなキャッチーさに少々のハードエッジと猥雑さを加えた音楽性で活動を開始する、が早々にフロントマンを元TRAITORS GATEのヴォーカリスト Chris Ellisへチェンジ(代わりに Dave McCleanがTRAITORS GATEのフロントマンへ)し、バンドラインナップは一応の完成を見せる。

ロンドンでのTORMEのサポートに抜擢されたのが切っ掛けでロンドンのマイナー・レーベルSpellbound Recordsと契約を手にし早速アルバム制作を開始するが、当時は正式なドラム・メンバーが在籍しておらず(アルバムでは元10ccの Paul Burgessが叩いた)、リリース後にPRIMITIVEのドラマー Tig Williamsをヘルプとして雇い入れ Lee Aaronの87年欧州ツアーのサポートでヨーロッパ全土を共にし好評を博したものの、ツアー終了後にフロントマンの Chris Ellisがソロ活動を優先する為にバンドを脱退してしまうが、バンドはドイツのマイナー・レーベルGlobal Musicと契約を結ぶ事に成功しバンド崩壊は一先ずは避けられた。

Chris Ellisが脱退して直ぐの87年に Craig Richardsは新たなシンガーに Carl Sentance(元PERSIAN RISK、現NAZARETH)を起用し、ドイツのミュンヘンでプロデューサー Peter Walsh(Peter Gabriel、SPANDAU BALLET、Stevie Wonder、THE BOOMTOWN RATS、Bryan Ferry、SIMPLE MINDS、etc...)の手による4トラック音源のデモを『アルコ・スタジオ』で録音するが、その後になんの進展もなく程なく Carl Sentanceは別バンドへ加入してしまいバンドは再び解散の危機に陥る。

因みに Carl Sentanceが加入したバンドは音源を録音したもののお倉入りとなってしまった模様だ。

88年後半、Craig Richardsと Andi Turnerはシンガーを探しに米国ロサンゼルスへ赴き、新フロントマンに Shane Smithとドラマーに Jimmy Gilmoreという二人のアメリカ人ミュージシャンを加え、オリジナル・メンバーの Craig Richardsと Andi Turner、そしてベーシストのMarc“Jonah”Jonesによる5人組バンドのラインナップがやっと完成する。

バンドは時を置かずに、よりストレートなロックンロール路線へ回帰したサウンドのデモを制作するものの、レーベルが求めていた初期MONROが提示していたハードポップ・サウンドからかけ離れていると判断され契約を打ち切られてしまい、遂にバンドは崩壊してしまう…

バンド崩壊後、Andi Turnerと Marc“Jonah”Jonesはロサンゼルスを拠点とするバンドCALAMITY JANEに参加しアルバムを制作する事に。

CALAMITY JANE解散後に Marc“Jonah”Jonesは93年に英国に戻り、2021年にTRAITORS GATE(!?)のベーシストとして加入し、現在もプロミュージシャンとして活動を続けている。

Chris Ellisは現在スペイン在住で、ソロ・アルバムの制作など続けている。

Andi Turnerは米国へ永住し現在はカリフォルニア在住で、セッション・ミュージシャンとして活躍する傍らドキュメンタリー作品のプロデューサーとしても活動している模様だ。

黄金の80年代後期に素晴らしいアルバムを残しシングル・ヒットなどにも恵まれたものの、やはりメンバーが不安定だったのとデヴュー作の素晴らしいハードポップな煌びやかでスムースな音楽性、特にキーボードサウンドをバンドのプレイでなくプロデューサーの手によって後から付け加えられていた点やデヴュー・シングル曲のアイディアをセッション・ドラマーの Paul Burgessが持ち込んでいたりと、後から考えると彼等がヒットした音楽要素をバンドメンツ以外が持ち込んでいたり、その後もバンドメンツに恵まれなかったりと不運が重なり、華やかな時代に恵まれていたにも関わらず活動が長続きしなかったのが悔やまれますね。

なんと言っても Chris Ellisの甘い声質が実にマッチするSWEETっぽい雰囲気漂うシンセが活かされたUKハードポップ曲が素晴らしく、特にヴォーカル、ギター、コーラスは高水準でまとまっており、デヴュー作にして既にかなり良く出来たメロディアスな産業ロック風のハードポップ・アルバムなのは間違いないのですが、どの楽曲も華麗なメロディで表現されているもののリズム隊が完成していなかった弊害かどれも似たテンポな楽曲ばかりの印象は拭えず、もう少しコントラストや緩急があっても良かったかなと思え、また楽曲の出来栄えに少々バラツキがあったりとトータルでは完成度がイマイチなものの、何にしろデヴュー作でこの水準の作品を残せたのは間違いなく彼等自身が優れたポテンシャルを秘めていたのだし、フロントマンの交代やレーベル移籍に際して音楽性の変化など無ければ黄金の80年代に相応しい華やかなハードポップ作をもう二、三枚は残してくれていたのでは、と尽きぬ妄想が続いてしまいます…

改めて本作を聴き返して思うのは、本人達は意図していなかったのだろうが、完成したサウンドは当時の英国ロック・サウンドよりも北米や北欧のサウンドに近い感触が所々で漂っており、この路線の『次』があればひょっとしてまた違う展開をバンドは手にしていたのでは、と思えて実に興味深いですね。

Track List:
01. Some Girls
02. Here Comes the Night
03. Give Me Love Again
04. It's You
05. Lonely People
06. American Girls
07. Princess
08. Surrender
09. Open Up Your Heart
10. Rock This City

Bonus-tracks (All Unreleased Studio Tracks)
11: Message To The Heart
12: Killing Me

Taken off 『The Munich Sessions』
Recorded during 1987 at “Arco Studios” in Munich, Germany.
Featuring Carl Sentance(ex-PERSIAN RISK、Now with NAZARETH) on Vocals.

13: You Shock
14: Let Me Be
15: Bright Lights
16: Every Moment
17: Stay With Me

Taken off 『The Wales Sessions』
Recorded during 1988 at “Loco Studios” in Usk, South Wales.
Featuring Singer Shane Smith & Drummer Jimmy Gilmore.
Along with Original Band Members、Guitarists Andy Turner & Craig Richards、Plus Bass Player Marc“Jonah”Jones.

MONRO:Line-up
Chris Ellis       (Vocals)
Andi Turner      (Lead Guitars、Vocals)
Craig Richards    (Rhythm Guitars)
Marc“Jonah”Jones  (Bass、Vocals)

with
Paul Burgess     Drums

Chris Ellis脱退後に Carl Sentanceを迎えて制作された楽曲は、アルバムよりさらにメロゥでAOR寄りなハードポップ・サウンドでこの路線で2ndが制作されていればワンチャン米国へ進出してAORポップス路線で大成功もありえたのでは、と思えて今回初出のデモ音源を聴いて涙してしまいました…(´д⊂)

しかし、まさか現NAZARETHのフロントマン Carl Sentanceの歌声がこんな所で陽の目を見るとは、きっと本人も思いもよらなかった事でしょう(w

現在の彼の歌唱と全く違うソフトでポップ向けなデリケートなヴォーカル・スタイルを耳に出来るのでNAZARETHファンはチェックしてもいいかもしれません。

米国人ミュージシャンを迎えて制作されたデモは、テープの保存状態がよろしくなかったのか劣悪な箇所や音ヨレ、ヴォリュームの左右のズレ等がありますが概ね良好でキャッチーではあるもののよりメタリックで縦ノリが強いサウンドになっていて Shane Smithのパワフルでナスティな熱唱も相まって当時流行していたLAメタル、もっと言えばMOTLEY CRUEへ最接近したサウンドと言え、確かにお洒落なUKハードポップからダーティなLAメタルへガラリと様変わりしたこのデモを聴かされたらレーベル側も困惑した事だろうな、と思えます(汗

正直、米国人を迎えて制作されたデモ音源は個性が薄い、巷に良く居るMOTLEY CRUEフォロワーな典型的な80年代インディ・アメリカン・バンドと言うサウンドで、仮にこの路線でもしアルバムをリリース出来ていたとしても恐らく先は長くなかっただろうとは思えますね…

とまれキャッチーな80年代UKハードポップ作がお好みな方ならば間違いなく満足いく作品だと思えますので、ご興味あるようでしたらお早目にお求めください。

因みに現在も同名のロックバンドやグループが幾つか存在している模様なので、本バンドの音源をお求めの場合は確認してご購入下さい。


by malilion | 2021-11-17 02:18 | 音楽 | Trackback
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