![]() “カナダのMARILLION”ことカナダはケベックのネオプログレ・バンドRED SANDが、前作から1年ぶりとなる10thアルバムをリリースしたのを少々遅れてGET! 前作で再びバンドメンツに変動があってトリオ編成になり、本作も前作と同じ顔ぶれで制作されていて、前作から一層にリーダーでギタリストの Simon Caron(Guitars、Bass、Piano、Keyboards)のワンマン体制が強化されたイメージのままなアルバムとなっている。 前作リリース後にオフィシャルサイト等でLIVE要員として参加した Andre Godbout(Bass)と鍵盤奏者 Jean Benoit Lemire(Piano & Keyboard)の名前が公表れていたがどうやら彼等はそのままバンドメンツに迎えられる事はなかった模様だ…とは言え、未だにLIVE要員として採用されてはいるので、もしかしたら次作で、という事はあるかもしれない。 デヴュー以来、MARILLIONのメロゥな部分だけ抽出して煮詰めたかのような“泣き”とメロディアスさのみを追求した木訥で真摯なプレイとサウンドが実に甘美だった彼等だが、前作から一気にPINK FLOYDカラーが強まり、所々でCAMELやGENESIS、そしてPENDRAGON等のポンプ系要素が顔を出す、Simon Caron個人が影響を受けた音楽要素が色濃く反映された繊細でセンチメンタルなサウンドへ変化したが、本作でもその路線に変化はなくMARILLIONよりPINK FLOYDカラー(非サイケ)の幽玄なテイストの方を強く感じるリリカルでウェットなメロディが味わい深い叙情感あふれるシンフォニック・サウンドが心地よい作風ながら歌詞は重い『七つの大罪』をテーマにしたコンセプトアルバムとなっている。 これからは“カナダのMARILLION”じゃなく“カナダのPINK FLOYD”って呼ばないといけないなぁ…(汗 朴訥なヴォーカルはいつものままに、テクニックよりフィーリングやエモーショナルさに重きを置いたアコギや歌うようにメロディアスなベースは意外な程に爽快感があって驚かされるが、一方で Simon Caronの操るメイン楽器であるエレクトリック・ギターはこれまで通りにメランコリックなやるせない雰囲気とロマンチシズム漂う儚く気怠げでムーディーな美旋律を繊細に紡ぎ続け、哀愁へと淡い幻想色に楽曲を染め上げていくMARILLION風からPINK FLOYD風へカラーが変化したもののRED SANDファンにとっては変わらず嬉しいサウンドと言えるだろう。 これまでどちらかと言うとゆっくりめのテンポでキャッチーでないナイーヴなメロディの楽曲ばかりだった彼等のサウンドに少々変化が見て取れ、幾分かテンポがアップし、さらにキャッチーでポップな感触が増したのと、切なくノスタルジックな情景を描き出すギターの後ろで良く動くベースと甘いシンセの旋律、そして今までに余り聴かれなかった変拍子や洒落たアレンジなどが相まってこれまで以上にサウンドから歌心が感じられ、そんな要素が不思議な化学反応を引き起こしたのか古臭いともモダンとも言い表し難い淡いドラマティックさ漂う80年代末期ポンプっぽいシンフォニック・サウンドを聴かせてくれている。 個人的に興味深かったのは、シンフォ・バンドだからと音楽形態にこだわらず、所々でヴィンテージ・タッチでメランコリックなメロディと朴訥な歌声のみで綴られるシンプルな楽曲も演奏して見せるなど、ポップス、ロック、プログレ要素を全てエレガントにMIXしつつサウンドに多様性を持たせ、テンポやリズムチェンジが多い魅惑的で起伏があって変化に富んだメロディを構築して見せる、如何にもプログレ系という実験的で挑戦的な試みを聴かせてくれた事でしょうか。 ただサウンドのクオリティがアップしたのと反比例するように、前作でも苦言を呈したが本作でもヴォーカルパートの印象が薄く、まぁシンフォ系なんだから別段驚くようなポイントでもないし実際ヴォーカルはしっかりフィーチャーされているし歌ってもいるけれど、Simon Caronのギターとキーボードが全編に渡って大活躍しまくる為か Steff Dorvalの巧い歌声が活躍しているイメージは薄く、ヘタウマなヴォーカリストが多い凡百のシンフォ・バンドに反してちゃんと歌えるフロントマンを擁していながら実に贅沢な使い方をしているなぁと思うわけです。 前作より明らかに楽曲の完成度の上がった甘々にメロゥで感傷的な美旋律シンフォ・サウンド系がお好みな方や初期MARILLION、PENDRAGON、ARENA、そしてPINK FLOYD等がお好みな方や叙情派ドラマティック・サウンド好きには見逃せぬシンフォ・バンドなのは間違いないので、ご興味あるようでしたら一度チェックしてみて下さい。 RED SAND:Line-up Simon Caron (Guitars、Bass、Piano、Keyboards) Steff Dorval (Vocals) Perry Angelillo (Drums)
by malilion
| 2021-11-15 00:14
| 音楽
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