DANGER 「1989 -Deluxe Edition-」'15
80年代後半、アメリカのメインストリームがバブリーでキャッチーなヘア・メタルやポップな産業ロックで絶頂期を迎えようとしていた頃、遠くスペインの地にも影響を及ぼしメロディックHRシーンは盛り上がりを見せていた。 HIROSHIMA、MANZANO、MARSHALL MONROE、SANGRE AZUL、ALCAUDON、PRAXIS、TOKIO、FORCE、SHALOM、NIAGARA、JUPITER...等のスパニッシュ・ロックバンド達が、マイナーながらもユーロ圏のメジャー・バンド達にも決して引けを取らぬクオリティーのアルバムをリリースし、そのUSバンドに無い洗練さの対局にある不器用ながらも濃厚で匂い立つ狂おしい美旋律と英語圏でないアンダーグラウンドなバンドならではの独特な音使いがコアなメロディアス・ロックファンを魅了していたが、その中でも特にアンダーグラウンドな活動をしていたのが、ドラムとリードヴォーカルを兼任する Jose Manuel Fernandezによって83年に結成されたマドリッドを拠点に活動したオブスキュアなHRバンド MARSHALL MONROEであった。 本バンドはそのMARSHALL MONROEの元メンバーを中心に、SANGRE AZULの元メンバーも加えて1989年に結成され、その年のヤマハ主催のバンドコンテスト『Yamaha Band Explosion(武道館開催)』にも出場した過去を持つスペイン産キーボード入り5人組メロディアスHRバンドで、惜しくも僅か活動一年程で解散し正式なレコーディング音源を残す事無く忘却の彼方に消えていった…までは、スペインのインディバンドあるあるな物語だったのですが、なんと彼等は25年の時を経て突如再結成し、当時書かれたものの陽の目を見る事がなかった楽曲の数々をレコーディングし2013年に本デヴュー・アルバムをリリースしたのだった。 ただ、当時500枚限定でリリースされたハズの本作は14年に『Rescue 1989』というタイトルとジャケットのデザインを変更しボ-ナストラックを2曲追加しレーベルも変えて再びリリースし直されており、さらに少なくとも数回ジャケを変え3回はリイシューを繰り返されているので、当初は限定盤であったはずだが最終的には恐らく合計2000枚以上は市場に出回っているものと思われる。 因みに本作も、最初のリリース時のジャケと同じ装丁で500枚限定のナンバリング(私のは139だが意味は既に無い)が入っているが『Rescue 1989』にさらに89年のデモ4曲を追加してリリースされた新装盤で15曲入り(オリジナルは9曲入り)となっており、正確なリリースデイトが不明ながら恐らく15、6年頃だと思われる『Rescue 1989』風なジャケでない最初のレーベルからリリースのオリジナルの電飾文字デザインながら内容は『Rescue 1989』のデラックス盤と同一音源の盤となっている(ややこしい…) マイナーなスペイン産オブスキュアHRバンドで、しかも短命だったにも関わらず何度も繰り返しアルバムがリイシューされて来た事からも、本作の出来が素晴らしく彼等の創作した楽曲が決してスペイン国内のみで終るようなクオリティでなかった事を遅まきながら証明していると言えるでしょう。 また、再結成に際して全員オリジナル・メンバーでのリユニオンは叶わず、中心人物であったドラマーの Jose Manuel Fernandezを欠き、新たに Jose A. Pereira Tomas(ex:YING YANG)を迎え入れて本作のレコーディングは行われているので、オリジナル編成での彼等のデモテープ音源等(本作にも4曲収録されているが)をお持ちの方はかなりのレア度なお宝音源所有者と言う事になりますね。 先にも述べましたが80年代末期に Jose Manuel Fernandez率いるMARSHALL MONROEが解散すると、Carlos Abad(Keyboards)、Luis J. Perona(Bass)、Jose Manuel Fernandez(Drums & Vocals)の元メンバーの3人と、Jorge Fontecha(Vocals ex:BABEL)、Jose A. Martin Moreno(Guitar ex:SANGRE AZUL)の5名によってDANGERは結成され、MARSHALL MONROE活動時や結成当初はスペイン語でヴォーカル・パートは歌われていたが、ヤマハ主催のバンドコンテストで世界各国のバンド達の活動を目の当たりにし、ワールドワイドな活動をするならば自分達も英語詞で活動しなければならぬと悟り、帰国後に創作されたDANGERの楽曲は全て英語詞となっていたのでした。 前置きが長くなりましたが本作の内容はと言うと、バブリーでキャッチーな分厚い爽快なコーラスをフィーチャーした、煌びやかでフックありまくりな楽曲が目白押しな80年代アメリカンHR直系のメロディアスHRサウンドで、89年当時に本作が正式にレコーディングされていたならばワンチャン国内盤リリースもありえただろう内容で、米国で大成功を収めた87年のWHITESNAKEや同じく全米でその地位を確立していたSCORPIONS風のユーロ圏バンド特有のウェットなメロディも保ちつつもしっかりと当時の米国メインストリーム・サウンドへ接近しているゴージャスで煌びやかなメロハー・サウンドなのは間違いなく、AOR調なメロディだけでなく随所で挿入されるキーボードがほんのり北欧っポイのもさらに日本受けする要因な最高な音を鳴らしており、初期BON JOVI、NIGHT RANGER、WINGER等の米国バンドだけでなくEUROPE、TREAT、DALTON、TNT等のユーロ圏バンドも彷彿とさせるサウンドは、本当に89年当時からタイムスリップして来たかのようにピュアでストレートでグランジー要素やモダンサウンドなど欠片も見当たらないレトロ・マニア歓喜な作風で、今で言えばTHE POODLESやH.E.A.Tに近い英米サウンドの折衷作のようなヒットポテンシャルの高いメロハー・サウンドと言えるだろう。 勿論、メジャー・レーベルのリリース作では無いので細かなクオリティや楽曲の完成度やプロデュース具合についてはメジャー・クラスの高品質サウンドとはお世辞にも言えないが、バジェットの限られたインディ・バンドのアルバムにしては音も良く、キャリア組が結成しただけあってインストゥルメンタル・ワークはアレンジ等も含めて非常に手慣れていて良くコンポーズされており、ミドルレンジ主体で伸びやな力強い歌声を聴かせる Jorge Fontechaのヴォーカルにほんの少し David Coverdaleっポイ雰囲気(ボーナスのアコースティック・ヴァージョンでソレが良く分かる)が見え隠れするのも如何にもなポイントで、シンプルでストレートな楽曲はキャッチーでブライトな非常に商業的な作風の、中心人物がドラマーであったからかリズムアプローチが豊富でダンサブルな楽曲も満載な、けれど特にテクニックに優れている訳でもなく音楽的に新しい試みに挑んでいる事もない、歌詞も典型的な思春期の人々向けの分かり易い路線で、気軽に音楽を聴いて時間を過ごすのに非常に適している作風なのは、当時の米国メインストリームの作風に準じているのだろうからコレは意図的なものなのは間違いない。 まぁ、余りにもアメリカナイズされた朗らかハッピー・サウンドなので、スペイン独特な臭メロや哀愁の美旋律を期待している諸兄にとってはちっとも嬉しい方向性でもサウンドでもないし、結果的に産業ロック系な流れは今や凋落して臭メロなバンド達が今ではメインを張る市場になっている訳だが、確かに80年代末期スペインでは本作のようなバブリーなUSAサウンドがもてはやされていたのは紛れもない事実なのです。 これまでに上げた欧米のバンドや、91 SUITE、EDEN LOST、HARDREAMS、GOLDEN FARM、NAGASAKI、ICE BLUE等といった現代のスペインのメロディアス・バンド等がお好みな方にもお薦めな一枚でありますのでご興味あるようならまだ比較的入手し易い模様ですので早目にGETしておきましょう(*´∀`*) フェイスブックの更新が滞っておりますが、近年にはSANGRE AZUL等の同年代バンド達とのLIVEも披露していたりしてまだバンドは存続している模様なので、是非とも次なる新作を届けて欲しいものであります。 Track List: 01. Action 02. Take My Love 03. Since You Been Gone 04. Alone 05. Never Treat Me Like a Loser 06. Hunter 07. Danger (Let's Get Away) 08. Rock & Roll 09. Without Someone To Help Me Bounus Track: 10. Hunter [Acoustic version] 11. Take My Love [Acoustic version] 12. Action (Demo '89) 13. Never Treat Me Like a Loser (Demo '89) 14. Danger (Demo '89) 15. Rock & Roll (Demo '89) DANGER LINE-UP: Jorge Fontecha (Vocals ex:BABEL)、 Jose A. Martin Moreno (Guitar ex:SANGRE AZUL) Carlos Abad (Keyboards ex:MARSHALL MONROE) Luis J. Perona (Bass ex:MARSHALL MONROE) Jose A. Pereira Tomas (Drums ex:YING YANG)
by malilion
| 2021-09-23 02:26
| 音楽
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