人気ブログランキング | 話題のタグを見る

イタリア産URIAH HEEPフォロワー・HRバンドBLIND GOLEMのデヴュー作をご紹介。

イタリア産URIAH HEEPフォロワー・HRバンドBLIND GOLEMのデヴュー作をご紹介。_c0072376_00284333.jpg
BLIND GOLEM 「A Dream Of Fantasy」'21

Francesco Dalia Riva(Bass)率いるイタリアの5人組URIAH HEEPフォロワー・HRバンドのデヴュー作がリリースされたのを、少々遅れてご紹介。

今年初めにリリースされ70年代HRファン、特にHEEPファンの間で話題になった輸入盤で、国内盤が出るかもとしばし待ってみたけど一向にその気配もなく、結局待ち切れずに今頃購入した次第であります(汗

本バンドは、元々は元URIAH HEEPのキーボーディストで先頃惜しくも亡くなった Ken Hensleyがイタリアやオーストリアで行ったツアー用バンドとしてヴェローナ出身のベテラン・ハード・ブルース・バンドBULLFROG(アルバムを5枚リリース済)のメンバーと、URIAH HEEPのクラシックなレパートリー(フロントマンが David Byron時代)に特化したトリビュート・バンドFOREVER HEEPというイタリアの2つのバンドのメンバーからなるバック・バンドが母体となっており、才能あるミュージシャン達の出会いはすぐにバンド結成へのインスピレーションを生み、Ken Hensleyの祝福も受けて自分達のアルバムを制作するべくBLIND GOLEMは19年に結成されたのでした。

Francesco Dalia Rivaがインタビューで語っているが、特定の音楽フォーマットから逸脱しない初期URIAH HEEPのテンプレート・サウンドを強く意識した作風で本作が制作された事や、結成の経緯から本作に Ken Hensleyがゲスト参加(幾つかの楽曲でハモンドB3やスライドギターをプレイ)し彼の最後のスタジオ音源(2020年11月に亡くなった)を託すなど、URIAH HEEPのフォロワー・バンドの一作というだけでなく Ken Hensleyへのトリビュート作的な意味合いも間違いなく有しているが、本作がただの劣化コピー作や単なるオマージュ作でない事は初めに述べておきたい。

やはり本作のサウンドがURIAH HEEPのまんまコピーに陥っていない一番の要因はフロントマンの Andrea Vilardoの声質が David Byronと違う事(頑張ってソレ風な歌い方や声の使い方はしている)や、初期HEEPでお馴染みな David Byronの特徴的なファルセットを余り使わぬ歌唱スタイルなのが大きいだろう。

もっとも、超個性的で唯一無二な David Byronの癖の強いエキセントリックでエモーショナルな歌唱スタイルを真似出来るとも思えないし、無理して挑んだ場合は悲惨な結果やパロディ臭がハンパない事になるのは目に見えているので、フロントマンに無謀な声真似(地声は少しハスキーなのか、それが差を生み出している)を強いるのは止めて分厚いバッキング・ヴォーカルでHEEP風コーラスをタップリとフィーチャーする事で初期URIAH HEEP風な特徴をフォローする手法は賢いやり方だ。

逆にバックのサウンドは細部に渡ってURIAH HEEPの精神と類似性に彩られており、HEEPが愛されてきた特徴を完全に把握して様々な雰囲気を巧みに表現し、古典的なHEEPの特徴を全て備えつつ70年代英国HRと70年代英国プログレッシブ・ロックの黄金期を彷彿とさせるサウンドが再現されており、さらにレトロな雰囲気を醸し出す鮮やかなプロダクションが施される事で、ある特定のバンドだけへのオマージュに留まらぬクラシックHRへの情熱がヒシヒシと伝わってくる作風に仕上げられている点は見事と言えるだろう。

ただ、時代も時代なので初期HEEPや70年代英国バンドが定番ネタでバンド・イメージやサウンドの雰囲気を高める為に利用していた摩訶不思議なオカルト・テイストや悪魔的なおどろおどろしいイメージは本作では重きを置かれていない(最早、ギャグになっちゃうしネ)ので、その手のドロついた情念やダークなイメージで70年代英国ロックを捉えている方には少々不満が残る点ではあるかもしれない。

またキーボーディストの Simone BistaffaはDEEP PURPLEのトリビュート・バンドFOREVER DEEPのメンバーでもあり、2010年にDEEP PURPLEの楽曲を集めたLIVEアルバムを Iain Paiceをゲストに迎えて録音し、2013年には Iain Paiceと Don Aireyをゲストに迎えてオリジナル曲を集めたCD『FOREVER DEEP』を録音したりしているので、彼のサウンド的な嗜好は Ken Hensleyより Jon Lordへ傾いている事も影響して、本作のサウンドがまんまHEEPパロディへ陥らぬ助けになっているのかも?

アルバム収録曲の全ては、地鳴りのような重く歪んだメロディックなハモンド・オルガン、泣き叫ぶような粘っこいワウ・エフェクトが効いたギター、ファルセットの分厚いコーラス、そしてアコースティックな吟遊詩人の音色を織り交ぜ、お馴染みなHEEPサウンドの標準的なフォーマットに従って心地よい音色とメロディーで表現されているが、巧みな楽曲構成とヴィンテージな楽器の音色の再現や繊細なフレージングが音楽を単なる初期URIAH HEEPフォロワー・サウンドだけではない次のレベルへ引き上げているように思う。

特徴的なヴィンテージ・サウンドや70年代風ファルセット・コーラスがふんだんに盛り込まれ表面的には濃厚なレトロ臭のするサウンドな本作だが、その実随所でモダンな手法や表現も活かされており、最初から最後まで魅力的な美旋律とスタイリッシュな音楽性で満たされた現代的な音楽作であるのは間違いなく、特にHEEPサウンドにこだわりをもっている Francesco Dalia Rivaが刻む巧みなベース・ラインは、幅広い表現の織り成された楽曲の中で華やかさを加え、HEEPファンだけでなくプログレからHRまで幅広いファンも楽しませる事だろう。

『このアルバムでは、スピーディーでラウドなロックだけでなく、より内省的な部分やプログレッシヴな部分など様々な側面をカバーしたかったんだ』
『考えてみると“ハードロック”というのは非常に幅広い音楽的ソリューションであり、URIAH HEEP自身も、例えば『Salisbury』というアルバムで、フォーク、バラード、ブルース、プログレ組曲、メタルソングを収録しているんだ』

Francesco Dalia Rivaが語る通り、本作はクラシックな味わいが素晴らしい70年代英国HRの旨味がタップリと詰まった一枚だ。

アルバムジャケットにも拘って、70年代HRバンドでお馴染みな Rodney Matthewsの手による『The Masters Arrive』なるイラストをジャケにしているのもいいですよね♪(゚∀゚)

このアルバムは当初の目的を正確に達成しており、70年代の伝説的なロック・マスター達を知らぬ若いリスナーでも十分に楽しめるだろうが、MAGNUM、RAINBOW、DEEP PURPLE、ATOMIC ROOSTER、LUCIFER'S FRIEND、そしてもちろんURIAH HEEPのようなバンド達が70年代から作り上げて来た魔法のようなミステリアスでエキサイティングなサウンドが大好物な70年代英国HRファンに是非にお薦めしたい一作であります(*´∀`*)


Track Listing
01.Devil In A Dream
02.Sunbreaker
03.Screaming To The Stars
04.Scarlet Eyes
05.Bright Light
06.The Day Is Gone (Feat. Ken Hensley)
07.The Ghost Of Eveline
08.Night Of Broken Dreams
09.Pegasus
10.The Gathering
11.Star Of The Darkest Night
12.Carousel
13.Living And Dying
14.A Spell And A Charm

Band Line-up:
Andrea Vilardo     (Lead Vocals)
Simone Bistaffa     (Hammond Organ、Piano、Synthesizer)
Silvano Zago      (Electric、Acoustic & Slide Guitars)
Francesco Dalia Riva  (Bass、Acoustic Guitars、Backing Vocals、Lead Vocals on 7、12、13)
Walter Mantovanelli   (Drums)

Special Guest:
Ken Hensley       Hammond B3、Slide Guitar

R.I.P Ken Hensley!


by malilion | 2021-08-24 00:31 | 音楽 | Trackback
<< 70年代、80年代、90年代初... 関西ミュージシャン中心に結成... >>