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ドマイナーなUSテキサス南部のプログレ・ハード・バンドHEYOKAのデモ・カセット音源を含むレア音源集が限定CDリリース!!

ドマイナーなUSテキサス南部のプログレ・ハード・バンドHEYOKAのデモ・カセット音源を含むレア音源集が限定CDリリース!!_c0072376_19284140.jpgHEYOKA 「Secret Rarities 1978-86」'21

70年代中期から80年代後期頃まで活動したUSテキサス南部の伝説的なプログレ・ハード・バンドの唯一のフルアルバム『Spirit Of Revelation』'12の原型とも言える1979年から1986年までの貴重なLIVE音源とスタジオ・セッションを収録したデモ・カセットの発掘音源が今回新たにマニア御用達レーベル、英国のPROG AORの『Texas Rock Dyamonds』シリーズ第一弾として300枚限定(!?)でリリースされたのを少々遅れてGET!

数枚シングルをリリースしたのみだがテキサス州のロックファンには良く知られた存在で、RUSHの初のUSツアーをはじめSan Antonioを通過する主要なアーティストのオープニング・アクトを務め、80年代初頭にはMTVで楽曲が紹介された事もあったが、結局メジャー契約を得られず作品を残さぬまま80年代後半には消えた幻のアメリカン・プログレ・ハード・バンドである彼等の音源は、そもそも旧Shroom Productionから300枚限定CD-Rとしてリリースされた03年発掘コンピ盤『The Lost Heyoka Recordings』が初出で、その後その発掘音源収録のスタジオ音源のみで再構成され12年に新規改訂盤として米国のレーベルShroomAngel Recordsからリリースされたのが『Spirit Of Revelation』であった。

そのリイシュー作『Spirit Of Revelation』はCDは1枚もの、アナログLPは2枚組でリリースされ、残念な事にCD盤には『Taking Notes/Feel It』及び『Danger Stranger』や未発表LIVE音源が未収録でありました…(´д⊂)

今回発掘された79年に行われたスタジオ・セッションのラフミックス・テープは当時バンドに近かった様々な人々に提供されたモノで、幸運にもテキサスの右隣ルイジアナ州在住の一人が受け取ったデモ・カセットを長年に渡って保管してくれていた為にリリースが可能になった貴重音源(『Spirit Of Revelation』では最終的な姿に仕上げられた楽曲のソース音源で、MIXややリード・ギターのテイク等細部が異なる)で、彼等のファンには堪らないレア音源の数々が収録されている。

本作は84年のカセットや78年の7"EPの音源を含む様々なソースから集められたコンピレーション盤で、アルバム未発マイナー・バンドの発掘音源のさらにラフミックス・デモ・カセット音源や未発曲という極めてマニアックな音源を含みますが、JETHRO TULL風の激しい情感迸らすフルートを組み込んだドラマティックなブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック要素とアメリカ南部バンドらしいスピードと攻撃性に満ちたワイルドなサザンHR要素をブレンドし、当時のメインストリームも意識していた為か中西部出身の大先輩バンドであるKANSAテイストやフォーク・テイストもまぶしつつ、北米産バンドならではのキャッチーでメロディアス、そしてパワフルな抜けの良いサウンドと楽曲にはプログレ・ハードらしい技巧的な大作志向も反映されており、当時のメジャーシーンを意識したUSプログレ・ハード・バンド達が目指した洗練されたユーロロック・テイストとUS受けするコマーシャル性を取り込んだ音楽性と全く方向が違う、泥臭いサザン・ロックと『スマートさよりパワー!』と言わんばかりな男臭さ漲るウネるHRサウンドは、実はかなり稀有な存在で、本作はそんな彼等の楽曲のスタジオとライブの両ヴァージョンが楽しめる、当時のバンド内で渦巻く音楽性と80年代USプログレ・アンダーグラウンド・シーンが垣間見える大変興味深い一枚と言えよう。

ラフミックス・デモ・カセットなので完成度は『Spirit Of Revelation』に劣るが、最終バージョンの各楽器のバランス調整や修正が施された音源よりも、より自然な奔放さや即興感とスケール感あるユーロロック・テイストを本作のサウンドの方が感じさせるように思え、この辺りは個人的な好みもあるだろうが、本作のサウンドの方がより彼等らしさが色濃く浮き彫り(リズム隊の音、特にベースがブイブイ前に出ていて凄く活きが良く感じる)になっているようで実に魅力的だ(゚∀゚)

一応、KANSASフォロワーの分類に入るかもしれないバンドではあるが、他のフォロワー達が導入するユーロ・ロック的なウェットなメロディや神秘主義的な楽曲が醸し出す叙情性とファンタジックなサウンド、そして特徴的なメロディを奏でる鍵であるヴァイオリンは導入せす、フルート奏者をバンドに擁する事からも伺えるようにJETHRO TULL方向からのユーロ・ロックへのアプローチやインスパイアを感じさせ、KANSAS同様にファンタジックさを感じさせる楽曲なもののバンド名(HEYOKA:ハオカーは、アメリカインディアンのスー族の神話に伝えられる、雷と狩猟を司る精霊の名)が示すようにネイティブ・アメリカンのイメージを彷彿とさせるBlack Elkの神秘的な導きや土着音楽のディテールを織り込んだその重厚なヴィンテージ・サウンドは、他のUSプログレ・ハードに無い強い独自性と確かなクオリティを有しており、ふんだんに取り入れられているKANSAS要素はメジャー契約向けのお飾り程度でバンドの音楽性は本質的にはKANSASフォロワーでない(ややこしいw)バンド、と言った方が適切かもしれない。

Mike P.Grothues (Lead Vocals、Flute)と Armando "Dito" Garcia (Guitars、Vocals)を中心に70年代初期に結成され、フルート奏者を複数バンドに擁し、キーボード入りツインギター5人組でメンバーが楽曲によって楽器を持ち替えたりと如何にもプログレ・バンド的な芸の細かい編成なのだが、そのサウンドはプログレ系にありがちなキーボードがメインでなく、あくまでワイルドで奔放なギター(非リフ圧し)とエモーショナルで涼やかなフルートがメイン、そしてキャッチーなUSバンドらしい分厚いコーラスが楽曲の多くを彩っており、所々でフルートとキーボードを効果的に用いたシンフォニック・サウンドやプログレらしいサイケ風味あるスペイーシーなシンセが鳴り響き、巧みな鍵盤捌きがリリカルな調べをドラマティックに奏でるものの如何せん裏方的な扱われ方がメインな為にどうしても一般的なプログレ・ハード的な叙情感が薄目な印象になるのは否めないだろう。

パワフルさやエキセントリックさにばかり目を奪われがちだが実はかなり幅広く確かな歌唱スキルを有する Mike P.Grothuesのヴォーカル(Greg Lakeを伸びやかにしたイメージな歌声)をはじめ、バンド一丸となって飛び出してくるアグレッシヴながら高い演奏技術や怒涛のLIVEパフォーマンスとは裏腹に、当時チャートを賑わしていたUSプログレ・ハード・バンド達のスマートな洗練されたサウンドと違って泥臭いサザン・ロック要素を強く感じさせる事もあってか終始野暮ったく、だからこそ当時メジャー・レコード会社と契約出来なかったんでしょうねぇ。

時代的にもう少し洗練されたサウンドに進化すればメジャー契約も決して夢ではなかったように思うが、この豪快さと泥臭さこそが彼等特有の持ち味でもあり魅力でもあるのでなかなかにサウンドを変化させ洗練させるのが難しく、最終的に売れ線サウンドへの転身を否定して解散の道を選択したのかもしれません。

まぁ、本作収録の『Star Tonight』でポップでキャッチーな煌びやかなシンセを活かした所謂80年代の大衆向け曲を演っているので、一度は売れ筋サウンドを試してみたけれどシックリこなくてその方向へ進むのは止めたんでしょうね。

持ち味を殺してまでこの安っぽいサウンドの方向へ進まなくて正解だったと思います。ええ。この軽いシンセが鳴る方向性は彼等に似合わないですから。

彼等の2枚組LIVEアルバム『Live In Houston 1982』'82 でも明らかにされているが、当時PINK FLOYD、RUSH、JETHRO TULL等のカバー曲を織り交ぜて演奏していたのと同様に、RAM JAM、CRACK THE SKY、JO JO GUNNEなど、彼等のLIVEでお馴染みのアーティスト達のカバー・バージョンが本作には収録されており、インディ・バンドと思えぬ高い演奏技術や一糸乱れぬアンサンブル、そしてオリジナル曲と打って変わって破天荒でストレートな乗りの良いロックン・ロール・サウンドと各メンバーのLIVEならではのラフでワイルドなインタープレイを楽しむ事が出来るのは旧来からのファンには嬉しいサプライズに違いない。

また、本作最大の目玉は『Spirit Of Revelation』や『The Lost Heyoka Recordings』に未収録であった非常に珍しい楽曲『Moods』『Wink Of An Eye』のLIVE録音テイクが収録されており、LIVEで何度も演奏されて来たもののスタジオできちんと録音された事が今までに無い幻のオリジナル曲で、バンドが現役時代に残した録音未完了曲だ。

『Moods』は、終始HRテイストが強い演奏に軽やかなフルートが絡み、ワイルドでノイジーなギターとタイトでヘヴィなリズム隊が音の塊となって唸りを上げる激しい演奏を繰り広げながら、メンバー全員による分厚くキャッチーなコーラスが駆け抜けていく、なかなかに複雑なプログレ・バンドらしい凝ったアレンジと歌メロ、そして各メンバーのテクニカルなプレイが息つく暇も無く怒涛の展開を繰り返す佳曲で、どうしてスタジオ録音で漏れてしまったのか謎であります。

『Wink Of An Eye』は、センチメンタルなフルートの音色が印象的なヘヴィ・バラードで、しっとりと Mike P.Grothuesが歌い上げているバックで何故かヘヴィでノイジーなギターが顔を出す謎なアレンジの成された曲だ。そこはフルートとピアノで無難に綺麗に纏めておけばええやん(w

さらに本作は折り畳み式ミニ・ポスター付きとなっており、如何にも当時風なイラスト(『Whot Boogie』'78の7" Singleのジャケのイラストがカラー化した『The Lost Heyoka Recordings』のジャケと同一画)が付属している、カルトな音源に相応しいマニアックなオマケとなっている。

古いデモ・カセットの発掘音源を含むLIVE音源なのでノイズやヨレ等の劣悪な音質は仕方がないが、それを割り引いても実に面白く興味深いサウンドと言え、KANSAS、JETHRO TULL、RUSH、PINK FLOYDなどが好きな方にお勧めなだけでなく、80年代インディUSプログレ・ハードのマニアックな異色作にもご興味あるようでしたら一度本バンドの音源をチェックしてもいいかもしれない。

Track listing
01.Change My Ways
02.It's All Gonna Be Alright
03.Peaaimist Fled
04.The Trilogy: I Passage II Restrictions III Revelations (Alternate Studio Version 79)
05.Star Tonight
06.Taking Notes/Feel It (From 84 Cassette)
07.Whot Boogie (From 7" Single 78)
08.Moods
09.Wink Of An Eye (Live 84)
10.Black Betty (RAM JAM Cover - Live 86)
11.Hold on (CRACK THE SKY Cover)
12.Take Me Down Easy (JO JO GUNNE Cover - Live 82)

HEYOKA LINE-UP:
Mike P.Grothues     (Lead Vocals、Flute、Drums、Percussion、Keyboards)
Armando "Dito" Garcia  (Electric & Acoustic Guitars、Guitar Synth、Flute、Vocals、Keyboards)
David Alcocer II     (Electric Guitar、Vocals、Bass)
Patrick Hood       (Bass、Vocals、Electric & Acoustic Guitars)
Gerardo Ramirez     (Drums、Percussion、Flute、Keyboards)



by malilion | 2021-08-06 19:29 | 音楽 | Trackback
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