![]() 前身バンドであるカヴァー・バンドACES WILDは84年に結成されていた、USAメリーランド州で87年頃に結成されたキーボード入リ5人組メロディアスHMバンドが90年に自主リリースした唯一のカセット・アルバムを、以前ロシア製R盤のブート・アルバムが出回っていましたが今回はマニア御用達レーベル Heaven & Hell Recordsがリマスター&ボーナストラック3曲を追加してオフィシャル初CD化したのを即GET! 2021年仕様にアルバムジャケやアートワークをリニューアル(オリジナルデザインはイラストなのを、各所を実写に置き換えタイトルのフォントも変更しているがデザイン構成は大きく変わっていない)したブックレットに詳しいバンドヒストリーが載っていて、それによると1984年に高校の友人である Kenny Carpenter(Guitars)とTodd Rosencrance(Bass)によってカヴァー・バンドACES WILDは結成され、フロントマンやドラマーなどメンバーは常に流動的でカヴァー曲を演奏しつつオリジナル曲の創作に勤しんでいたが、一向に状況は好転せず、結局89年に一旦バンドは解体され、音楽性の再構築及び再びメンバーを集め直す事に。 当初からメンバーは入り乱れており創設メンバーの Todd Rosencranceでさえ85年には居なくなったり、サイドギタリストが加入してツインギター編成になるど常に不安定な状況であったが、メンバー達は各自独自に活動を続け、活動の場を州外へ移す者(引っ越した Tony Dantの隣りにキーボーディスト Ron Prevostが居たのはラッキーだった)も居たりと状況は落ち着かぬままバンドはTRACERへと名前を変え、メリーランド州やバージニア州でプレイをし続けた。 89年に再びリズム隊をチェンジし、オリジナル曲も十分貯まったのでフルアルバムの制作を目論む頃にサイドギタリストが抜け、キーボード入りシングルギター編成の5人組バンドになるとメリーランド州アナポリスのLPSスタジオでデヴュー作の録音が開始される。 90年に記念すべきデヴュー作『Screamer In The Night』はリリースされるが、アメリカのメジャーシーンの時流は既に変化しつつあった事もあってか91年にはバンドのマネージャが去り、ベーシストの Gary Ryanも91年にバンドを抜け、新ベーシストに Rob Jonesを迎え、タレントスカウト番組に参加したり数多くの音楽イベントやショーケースで演奏を披露したがバンドがメジャー契約を得る事は叶わず、その後も新曲のデモ制作を続行するがそうこうする内にフロントマンの Tony Dantが時流を鑑みて音楽性を変化させた活動を決意しバンドを離脱、結果的にそれらのデモ音源は完成する事はなかった… その後の展開はこの手の80年代末期結成のメロディアスHRバンドにお約束な流れで、各メンバーがバラバラになって銘々が新たな活動へ向かう訳ですね…(´д⊂) さて、本作の内容ですが、ジャケのイメージから来るようなダーティさやワイルドさはサウンドから感じられず、程々に疾走感のあるアメリカンHRバンドらしいキャッチーでストレートな楽曲をベースに、テクニカルでひっかかりのある独特なギターリフで攻める革新的なアプローチや、マイナー調のユーロ・ブリティッシュ風サウンドを漂わすウェットなメロディが他のUSAバンド達と一味違ったり、シンセやピアノ、オルガン等が刻む独特な音色と響きの鍵盤プレイが耳を惹く、ヘア・メタル全盛の80年代末期当時のUSバンドとしては異色なメロディアスHRサウンドを聴かせるマニアックな一作となっております。 本バンドのサウンドがその他のインディ・USメロディアス・バンド達と違うのは、唯一のオリジナルメンバーでバンド創設者である Kenny Carpenterが恐らくユーロ系のHMバンドやHRバンドに強く影響を受けて居るのと、本バンドのサウンドを強く特徴付けている Ron Prevostが操るキーボードサウンドが所謂アメリカンHR的な華やかで煌びやかなシンセ中心なサウンドではなく、重く歪んだハモンド(プレイもスリリング! シンセ系の音色も白眉な使い方!)や艶やかなピアノ等によるそこはかとプログレっぽさも漂うブリティッシュ風なサウンドアプローチなのも間違いなく関係しているでしょう。 後はUSAバンド定番の分厚いコーラスでサビをリフレインする、なんていうお約束の売れ線楽曲構成も余り見られず、やはり意図的に定番のヘア・メタルスタイルな楽曲から距離を取ろうとしていたインディ・バンドらなではの魅力的な実験性が伺えます。 今の耳で聴くと本作のサウンドは実に興味深く、当時巷に溢れていたヘア・メタル・バンドと一味違う個性的なサウンド創りに成功しており、これで『演奏や楽曲も出色の出来栄えだ!』となれば良かったのですが、残念ながら完成度も含めて総じて今一歩感は拭えず、またそれを当時のメジャーシーンが求めていたのかと言うと甚だ疑問であったと言わざるを得ないだろう。 その他大勢との差別化に成功したユーロ・ロック風な雰囲気のあるサウンドで攻めているものの、フロントマンの Tony Dantの歌声は細く甘い声質のキャッチーなメロディアスUSバンドのヴォーカリストで良く聴かれるハイトーン主体(ちょい初期のVince Neilッポかったり)な歌唱な上に、楽曲自体はコンパクトでストレートな定番のUSロックの範疇を大きく逸脱する展開や構成は見られず、と劇的な変化ではなく少し毛色の違うメロディアス・サウンドでメジャーシーンに迎合しての成功を目論んだのだろうが、結果的にはどこかチグハグな中途半端(アルバム前半はかなり攻めてる!)でマイナーな印象を与え、さらに間の悪い事に慢性的なメンバー・チェンジのゴタゴタで活動が滞るうちにグランジー・ブームが到来し彼等の未来を断ち切ってしまったのは、時の運とは言え悲劇以外の何物でもない。 尚、折角のリマスター&リイシューなのですが、オリジナルの録音レベルが余り高くなかったのかリマスターされたはずの本作の音量がかなり小さく、ボトムのサウンドは持ち上がっているがちょっと2021年度リマスターとは思えないションボリ気味な仕上がりとなっていて、救いはノイズ等が殆ど聴こえない事なんですが、それでも少し残念なリイシュー作であります…('A`) 今回追加されたボーナス3曲は本作リリース後に制作を開始した未完成のデモ曲が収められており、未完成とはいえ楽曲が途中で途切れるとか言う事はありませんし、特に劣悪なサウンドという事もありませんので恐らくアレンジ等が完成していなかっただけと思われ、オリジナル・カセットテープをお持ちのダイハードなファンの方でも本作に手を出してみても決して損はしない音源となっており、限定500枚でのリイシューとなっておりますので本作が気になる方はお早目にGETする事をお薦め致します。 ![]() 01. Screamer in the Night 02. Threat or a Promise 03. Every time 04. Dreamin Again 05. Shadow of a Doubt 06. Light of the Morning 07. Bed of Nails 08. Who Do You Want 09. Sweet Lucy 10. Evil Heart 11. Two Times Goodbye Bonus Tracks: 12. Playing with Fire 13. Deep in the Night 14. Thunder on the Road TRACER Musiciens: Tony Dant (Vocals) Kenny Carpenter (Lead & Rhythm Guitars) Ron Prevost (Keyboards、Synths、Backing Vocals) Gary Ryan (Bass) Jim Raleigh (Drums) with: Rob Thompson (Lead Guitars Tracks 9-11) Rick Sanchez (Drums Tracks 9-11) Todd Rosencrance (Bass Tracks 9-11) Don Fenwick (Bass Tracks 2、4、5) Rob Jones (Bass Tracks 12)
by malilion
| 2021-07-27 16:30
| 音楽
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