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キーボードを大々的にフィーチャーした80年代英国産メロディアスHRバンドLAROCHEの音源が初CD化でリイシュー!

キーボードを大々的にフィーチャーした80年代英国産メロディアスHRバンドLAROCHEの音源が初CD化でリイシュー!_c0072376_09582635.jpgLAROCHE 「Dancing After Midnight...」'21

マニア御用達レーベル、イタリアのSTEELHEART Records『The”LOST UK JEWELS”Collectors Series』の第22弾として今年の二月にリリース予定だったのが今の今まで遅れに遅れていた、英国ウェールズ出身のキーボード入りツインギター5人組メロディアスHRバンドLAROCHE(ラローシェ、La Roche)のEPとデモ音源を集めたコンピレーション・アルバムがリマスター&初CD化で500枚限定リイシューされたのを即GET!

1987年と1988年にデモテープを2本制作し、1989年に自主制作盤EP『Dance』をリリースしたもののフル・アルバムのリリースはせず解散した彼等の、EP『Dance(オリジナルは200枚プレス)』に加え2本のデモ・カセット音源を追加した本コンピレーション・アルバムで聴けるサウンドは、まさに80年代黄金期に相応しい派手で壮大なシンセサウンドを大々的にフィーチャーしたキャッチーなメロディアス・ハード・サウンドで、如何にも英国産バンドらしいウェットな美旋律が主軸となっており、US産バンドのような能天気さも無く、底抜けに爽快にもなり切れぬイマイチ煮え切らぬポップさと、楽曲個々の完成度やフックは今一つ劣るが80年代USメインストリームHMの空気を色濃く漂わせつつ全体の雰囲気で気持ちよく最後まで聴かせてしまう、英国メロディアスHRバンドが得意とする典型的な“アノ”サウンドだ。

Keith Emerson、Robert Berry、Carl Palmerが結成し88年にデヴュー作をリリースした英国シンフォ・バンド3の派手なシンセ&キーボード・パートを思わせる Nixxi Gilbertが操る高らかに鳴り響く分厚い鍵盤サウンドが楽曲を主導する事などから、当時アメリカでも趨勢を極めんとしていた産業ロック&AORハード・サウンドや俗にヘア・メタルと後に呼ばれる売れ線狙いのコマーシャル・サウンドが特徴のメジャー・アメリカンHMバンドAUTOGRAPHやGIUFFRIA、そしてWHITE SISTER(共に84年にデヴュー作リリース)に対するイギリスからの回答として評判になったそのサウンドは、やはりどうしょうもなくユーロ・ロックのウェットなメロディを奏でており、90年代のグランジーブームが到来しなかったとしても果たしてメジャー契約を得てワールドワイドに活躍出来たかは少々疑問がある、逆にそんなマイナー臭い要素やメロディがアンダーグラウンドな英国インディHMバンド好きの心の琴線をくすぐるマニアックなサウンドであります(*´∀`*)

まぁ、お手本であるAUTOGRAPH、GIUFFRIA、WHITE SISTERがその後どうなったかを知るメロディアスHMファンならば、彼等のデヴューEPの評判は上々であったが80年代末期は既にこの種のメロディアスな音楽を求めるシーンは崩壊しつつあり、結局は有名レーベルとの契約には至らなかった、という同じようなインディ・メロディアス・バンド達の話を既に嫌ほど耳にしている事だろうから、彼等が90年代を迎える事なく短命に終ったとしてもそう驚かないだろう…(´д⊂)

キーボディスト Nixxi GilbertはGIUFFRIA、GENESIS、EL&P、DEEP PURPLEに影響受けており、ギタリスト Marti LawrenceはSCORPIONS、Michael Schenker、G-FORCE(つまり Gary Mooreか)に影響を受け、さらにバンドの中心人物である二人は当時大人気であった BON JOVIの影響も受けて居ると言う事で、彼等が当初どういった方向性のサウンドを目論んでいたのかが伺えるでしょう。

面白いのがセカンド・ギタリストとしてバンドに参加し、色々とヴォーカリストを試してはマッチせずを繰り返しフロントマン不在のまま楽曲を制作していた時、分厚いバッキングヴォーカルをバンドメンバーで入れ、ガイドヴォーカルを歌った Andy DeCroixの歌声が思いの他 Nixxi Gilbertが思い描いていたヴォーカル(ちょっと苦り気味な声質で Jon Bon Joviをマイルドで伸びやかにした風)に近かったので彼をフロントマンに抜擢した、という下りをライナーで Nixxi Gilbertが語っているのですが、苦労して探し回ってたら一番身近に該当者が隠れていた、ってちょっと漫画染みてて如何にもインディ・バンドの結成ストーリーみたいで良いですよね(w

本バンドはキーボディスト Nixxi Gilbertとギタリスト Marti Lawrence、そしてドラマーの Tony Jayeの三人を基本構成にしており、ベーシストは結局セッションマン等で補いメンバーが一時も定着せず、フロントマンも何人かの交代の後に迎えた Hugh Jonesの歌声で最初の記念すべきデモテープを制作するもののすぐに脱退してしまい、結局セカンドギタリストだった Andy DeCroixがフロントマンに、と短い活動期間にも関わらずバンドメンツが常に不安定だったのも彼等の活動を妨げていた大きな要因であったのは間違いないでしょう。

後は、インターネットが発達し瞬く間に地球の裏側のミュージシャンとセッション出来る現在からはなかなか想像しにくいでしょうが、活動を開始したのがウェールズのド田舎だった為にメンバー集めに苦労した、と Nixxi Gilbertが語っております(汗

EP『Dance』の方はリマスターの効果かハッキリクッキリなサウンドにブラッシュアップされており今の耳での鑑賞に耐えるサウンドに仕上げられており、デモテープのサウンドはリマスターされてはいるものの少々ヨレたりノイズが聴こえたりする箇所もありますがそれでもEPと遜色ないキャッチーなそのハードポップ・サウンドを十分に楽しむ事ができ、自主制作でいいからLPかEPで初期の音源もリリースしていて欲しかったと思わずにおれません…

個人的には Nixxi Gilbertがプログレから影響を受けているので、そこはかと楽曲の端々にポンプっぽいテイストが感じられ、そんな点がその他のメジャーを夢見て散っていった80年代末期メロディアスHRバンド群と一味違うユーロ・ロックらしさビンビンな英国サウンドに思えて大変興味深いですね。

とまれ幻の80年代英国産メロディアスHRバンドの音源がこうして無事リイシューされましたので、GIUFFRIA、AUTOGRAPH、WHITE SISTER、HOUSE OF LORDS、TOUCH、SILENT RAGE等のファンな方にお薦めな一枚でありますので是非チェックしてみて下さい。

Track List:
01. Down The Tubes (Instrumental)
02. Seventeen
03. Dance…
04. Long Distance Lover
(From“Dance”EP 1989)

05. High School Love
06. Holding Back
07. Living A Lie
08. Rich Girls
(From Cassette Demo 1988)

BONUS TRACK:
09. At Night She Breathes
(From Cassette Demo 1987)


Demo 1987 Musiciens:
Nixxi Gilbert    (Keyboards)
Marti Lawrence  (Guitars)
Tony Jaye     (Drums)
Hugh Jones     (Vocals)
Lyndon Hurford   (Bass)

Demo 1988 Musiciens:
Nixxi Gilbert    (Keyboards)
Marti Lawrence  (Guitars)
Tony Jaye     (Drums)
Andy DeCroix   (Vocals & Guitars)
Dave Vandervell  (Vocals)
Steevi Hayes   (Bass)

“Dance”EP 1989 Musiciens:
Nixxi Gilbert    (Keyboards)
Marti Lawrence  (Guitars)
Tony Jaye     (Drums)
Andy DeCroix   (Vocals & Guitars)
Steevi Hayes   (Bass)


by malilion | 2021-07-21 09:58 | 音楽 | Trackback
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