EVERSHIP 「The Uncrowned King Act 1」'21
ツインギター5人組USA産70年代後半~80年代風シンフォ・バンドが前作から3年ぶりとなる3rdアルバムをリリースしたのでご紹介。 デビュー作はヴァイオリンを導入した如何にも80年代風のキャッチーなKANSAS風USAプログハード・サウンドが絶品だった Shane Atkinson率いる13年結成のワンマン・プロジェクト・バンドが、前作で兄弟の James Atkinsonも加入しバンドメンツを固めつつツインギター編成へ進化し、YES、GENESIS、QUEEN、KANSAS、RUSH、Jimmy Hotz等の影響を前面に押し出した、より多彩で幅広い音楽性と壮大なスケールを演出するリヴァイバル系USAプログハード・サウンドを展開して見せ、続く本作ではプログレ系お約束の大作志向へサウンドをさらに進化させた、米国人作家 Harold Bell Wrightの短編小説である『The Uncrowned King』の、事実には触れぬ真実にまつわる寓話をベースに脚色したロックオペラ・スタイルのコンセプト作となっており、タイトルにもある通り次作と併せて物語の全貌が明らかとなる前後編構成作の前編アルバムとなっている。 バンドメンツに変更はなく、作曲家、マルチミュージシャンでありプロデューサー&エンジニアでもある Shane Atkinsonの操るシンセサイザー、オルガン、メロトロン系等のヴィンテージ感ある多彩なキーボードサウンドを主軸に、James Atkinsonと John Roseのツインギター・コンビがサウンドにハードエッジを生み、時にアコギ、クラッシックギターと、繊細で艶やかな演出を様々に加えつつ、TRIUMPHの Rik Emmettっぽい透明感ある歌声と卓越した歌唱力のヴォーカリスト Beau Westが荘厳な楽曲をバックに切々と歌い上げる、USA産バンドと思えぬリリカルさとウェット感ある陰影色濃い優美なメロディに加え、70年代後半~80年代の壮大なスケールとヴィンテージ感満載に展開するUSプログレ・サウンドを再構築し、よりモダンにキャッチーに彩度を上げて現代に蘇らせ続ける挑戦が最早オリジナリティへと昇華されたセンチメンタルなサウンドを徹頭徹尾貫く、今の時代になかなかお目にかかれぬファンタジックでドラマチックなUSAハード・シンフォ作で、続きモノらしくラスト・トラックで第2幕に向けて疑問だけを残して前編の幕を一旦閉じる、完結となる続編へ早くも期待が高まる本格派シンフォニック・ロックの秀作だ('(゚∀゚∩ 従来通りHARRISONの70年代のアナログ・コンソールで録音されたサウンドや Shane Atkinsonが拘りまくったアナログ・キーボードを操るテクニカルでセンスあるプレイが見所の一つなのは間違いないが、YESやGENESIS等の70年代のUKプログレッシブ・ロックからの影響が如実なアーティスティックな音楽性を保ちつつも、USAバンドらしいポップでキャッチーなヴォーカル・アプローチや複雑に交差するコーラス・ワーク、そして裏方作業の長かった Shane Atkinsonの本領とも言うべき練り込まれた絶妙のアレンジ等で大衆性も加味するだけでなく、人生・信仰・それらに対する人間の認識を描いた本アルバムのテーマに沿うべくドイツ語で歌われる賛美歌コラールを導入した宗教的なカラーや、よりロック的なダイナミクスやクロアチア、アドリア海の海岸に作られた建造物が波の音で無秩序だが調和的な音を奏でる環境音(!)も取り入れた意欲的な挑戦作となっていて、Shane Atkinsonが只のリバイバル懐古勢でないプログレ・ミュージシャンらしく新たな試みに挑む姿勢をしっかり保持している現れと言えましょう。 VANGELIS張りのスペイシーで分厚いシンセサイザーやヴィンテージ感香る燃えるような弾き倒しのオルガン・ソロを筆頭に、爽快感あるキャッチーなヴォーカルと変化に富んだメランコリックなメロディ、そしてテクニカルにスリリングに繰り広げられるメロディアスなストーリーが、KANSAS、STYX、QUEEN、EL&P、YES、CAMEL、E.L.O、といった偉大な先輩バンド達が構築した素晴らしいサウンド・テイストを伴いつつ、タイトなリズムとそれに伴うハードなリフ、シンフォニックなパッセージを奏でるシンセ、リズミカルなメロトロン、深淵なムーグ、透明感あるピアノ、ナッシュビルの合唱団による神々しいコーラスが渾然一体となって絶妙に混じり合いながら、時に幽玄に時に幻想に目くるめく展開されていく様は70年代後半~80年代プログレ好きな方には堪らぬ喜びを与えてくれるのは間違いない(*´∀`*) 面白いのは、ここまでヴィンテージ感あるサウンドが中心に構成されているEVERSHIPのサウンドだが、何故か Shane Atkinsonが叩き出すドラム・プレイだけ妙にアタック感の強いシャープでキレあるHM的パワフル・サウンド(彼的にはRUSH風を目指してる?)で、叙情感ある優美で巧みな鍵盤捌きを見せる同一人物が奏でる音と思えぬギャップを感じさせる所が専任ドラマー不在なEVERSHIPならではの特色とも言えるかもしれません。 また『The Voice of the Evening Wind』では Poem Atkinsonがその若々しい歌声を聴かせており、Shane Atkinsonのご息女(声変わり前の男の子?)なのか親戚なのか未確認ながら、EVERSHIPはますますAtkinson家主導なバンドになりつつあるんだな、と再確認しましたね。 未だインディ・バンドなれど、KANSAS、STYX、QUEEN、EL&P、YES、GENESIS、CAMEL、E.L.O、RUSH等の昔ながらの美しいアナログ・シンセサイザー・サウンドが気にっている方なら間違いなくチェックする価値のあるメジャー級のアルバムですので、もしご興味あるようでしたら是非一度ご自身の耳でその出来栄えを確かめてみて下さい。 EVERSHIP members: Beau Wes (Lead Vocals) Shane Atkinson (Keyboards、Drums、Vocals、Percussion、Theremin、Ssound Design) James Atkinson (Lead Guitar :GENTLEMAN'S PISTOLS) John Rose (Rhythm、Classical、Acoustic & Lead Guitars) Ben Young (Bass) With: Matt Harrel 12 String Guitar"The Pilgrimage" Poem Atkinson "The Voice of the Evening Wind" Mike Priebe Additional Backing Vocals The Adriatic Sea Sea Organ The Charles Heimermann chorale
by malilion
| 2021-06-21 13:25
| 音楽
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