SAGA 「Symmetry」'21
先頃惜しまれつつ43年の歴史に幕を閉じた彼等ですが、予想通りLIVEアルバム『So Good So Far』が最後の音源と言う訳ではなかったようだ。 しかも、予想していた未発音源集やヴァージョン違い等ではなく、全て新録音源の22thアルバムが3年ぶりに届けられたのを、少々遅れてGET!!('(゚∀゚∩ ファンとしては一度はバンド活動終了の知らせを受け泣く泣く彼等を見送った訳ですから、本作の知らせに欣喜雀躍した事でしょうが、新録ではあるものの彼等が過去に発表してきた楽曲をアコースティック・アレンジしたセルフカバー集で、今までにも幾度かLIVEでアコースティック・アレンジされた楽曲のプレイや17年のツアーで数曲のアコースティック・ヴァージョン等が披露されてきたが、既にバンドが活動を終えている今、彼等の残したライブラリを紐解くような本作は、昔ながらのダイハードなファンや近年彼等の虜になった新しいファンまで幅広い層にアピールし、彼等の宝石の様なバックカタログへ導くだろう実に興味深い企画盤であります。 SAGAのトレードマークである、Ian Crichtonが紡ぐ螺旋状に上昇していくようなテクニカルなギター・サウンドや Jim Gilmourを筆頭に重厚で手の込んだトリプル・シンセサイザーが織り成す音の壁の代わりに、チェロ、ピアノ、クラリネット、マンドリン、アコーディオン、ヴァイオリン、バンジョー、アコースティックの6弦と12弦ギター、そして控えめなドラム等のアコースティック楽器を用いた、アンプラグド作ならではの新アレンジや一部の楽曲の構造は大幅に変更され創意工夫の凝らされた再録ヴァージョンになっており、さらにゲスト・ミュージシャンの奏でるストリングス・アンサンブルがSAGAの古典的な楽曲に全く異なる繊細で優美な感触と気品を与え、お馴染みな曲の数々に新しいエネルギーと命を吹き込んでるかのようだ(*´∀`*) コロナ騒動の影響で2020年はコンサート・ツアーやスタジオ・レコーディングが軒並み中止となり音楽ファンやアーティストにとって厳しい年であったが、反面 Devin Townsend、Anneke van Giersbergen、Steve Hackett等のアーティストはコロナウイルスによるロックダウン中にエレキ・ギターを置いてアコースティック・アルバムを制作しており、今回SAGAもその一枚に加わる事になった訳だが、Ian Crichtonは本作について『2017年のヨーロッパ・ツアーでのセットを音響的に確かめた後、アコースティック・レコードを録音する事にしたんだ』と語っている事から、本企画盤はバンド終了前から構想されていたらしく一連のコロナ騒動で創作されたアルバムとは少々事情が違う、ちょうどカーテンコールのような作品とも取れるかもしれない。 また、この手の再録アルバムだと往々にして定番曲をアコースティック・アレンジしてズラリと並べただけの味気ないアコースティックBEST染みた構成になりがちだが、賢明にも彼等はその手の愚行に陥る事はなく、40年以上にも及ぶ活動で遺して来た豊富な数々の素材から本企画に相応しい楽曲を選んで既発LIVE作との楽曲の重複を避けつつ、2曲のメドレー大曲を含んだ独創的なアレンジを施した洗練されたアコースティック作に仕上げる手腕はベテランならではの余裕だろう。 Michael Sadlerが語るには『このアルバムは、アコースティック・アルバムというよりも、これらの曲をよりオーガニックな形で再構築したものだ。私達は常に挑戦する事が好きなので"クリエイティブな思考を結集して、ありふれたアコースティック・アルバム以上のモノを作れないか試してみよう "と考えたんだ』との事なので、全体的に回顧的な音と新しいスタジオ録音の間のバランスを取った、殆どの楽曲は長年のファンを満足させる程度にはオリジナルに忠実であると同時に革新的な試みと新鮮な音楽的アイデアに満ちた本作のサウンドを聴くに、その挑戦は十分果たせたのではないでしょうか? バンドメンバーに変更はなく最終作『So Good So Far』'18と同じ5人ですが、面白いトピックは Michael Sadlerの十代の息子がゲスト・ヴォーカルで本作に参加している事でしょう。 SAGA members: Michael Sadler (Vocals) Jim Crichton (Acoustic and Fretless Bass) Ian Crichton (Acoustic Gitarre、Mandoline、Banjo) Jim Gilmour (Piano、Clarinet、Accordion、Vocals) Mike Thorne (Kick、Snare、Kitchen Percussion) Additional Musicians: Shane Cook: Fiddle Stephany Seki:Cello Beth Silver: Cello Seren Sadler: Guest Vocals Songs / Tracks Listing 01. Pitchman 02. The Perfect Time to Feel Better (Time To Go/The Perfectionist/We Hope You're Feeling Better) 03. Images Chapter 1 04. Always There 05. Prelude #1 06. Say Goodbye to Hollywood 07. Prelude #2 08. The Right Side of the Other Hall (Footsteps in the Hall/On The Other Side You Were Right) 09. La Foret Harmonieuse 10. Wind Him Up 11. No Regrets Chapter 5 12. Tired World Chapter 6 ここ日本では完全に過小評価なプログ・ポップバンドSAGAの待望の新作『Symmetry』は最初から最後まで予想外の良さや驚きが満載で、全体的にバンドがこれまで試みた事の無い素敵でリラックスした美しいサウンドに仕上がっており、本作は長年のファンの為にバンドがくれた素晴らしい贈り物であると同時に、複雑でありながら親しみやすいプログレッシヴ・ミュージックを愛する全ての人が必須なアルバムであると言えましょう(´∀`) プログレどうこう関係なく、美しいアコースティック・サウンドに満ちた本作をどうぞ一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。
by malilion
| 2021-06-12 14:56
| 音楽
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