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イタリアン・プログHM期待の新生EVEN FLOWが7年ぶりに2ndフル・アルバムをリリース!!

イタリアン・プログHM期待の新生EVEN FLOWが7年ぶりに2ndフル・アルバムをリリース!!_c0072376_13250003.jpgEVEN FLOW 「Life Has Just Begun」'21

Pier Paolo(Guitars)、Giorgio Lunesu(Drums)の兄弟を中心に1990年代後半にイタリアで結成されたキーボード入り5人組プログHMバンドの2ndが、前作アコースティックEPより2年ぶり、デヴュー・アルバムから7年(!)ぶりにリリースされたので即GET!

バンド名は『本当のアイデアや感情を表現しようとする意志に由来している』と公式サイトで説明されているが、実際はPEARL JAMの楽曲からバンド名を拝借したのかもしれない。

何故なら彼等の奏でるサウンドは所謂テクニカルな楽器のプレイが中心にメロディアスな楽曲が展開するプログHMと言われるジャンルではあるものの、世代的にグランジ&オルタナティヴ・ロックの影響を受けて居るだろう事が窺えるテイストやタッチがサウンドの所々から漂っているからだが実際の所は分かりません。ハイ。

08年に6曲入りデヴュー・デモEP『Dream Weaver』を自主制作でリリース、ベーシストとキーボーディストをチェンジし11年にリリースしたデヴュー・フルアルバム『Ancient Memories』でも主に夢劇場の3rd以降のダークでアグレッシヴなテクニカルHMをベースにイタリア産バンドらしい叙情感あるメロディと繊細で艶やかなアコースティック・サウンドやカラフルで鮮やかなシンセサウンドが随所に活かされた作品であったが、少々癖のあるヴォーカルの声質と歌唱法が好みを分けそうであったし、如何せん歌メロの弱さ(ヴォーカリストの力量がB級なのもデカイ)とヘヴィサウンドとメロディアスな要素がイマイチ巧く噛み合っておらず、92年以降イタリアは言うに及ばず世界中で雨後のタケノコのように突如姿を表し即消えていった一連の夢劇場フォロワー・バンド達と同じくC級に片足突っ込んだB級マイナー・プログHMな作品であった。

ただ、大雑把には夢劇場フォロワーの流れを汲むサウンドであったが、90年初頭に登場したフォロワー達と違って幸いにも世代的にズレていたのとグランジーなミュージックシーンを経過したのも関係したのか、彼等の奏でるサウンドはプログレ系お約束の派手なインタープレイやテクニカルなソロ・パートよりもヘヴィなタイトさやダークなメロディ、パワフルな勢いやダイナミックなHM的楽曲展開をメインにしており、緩急を交えた楽曲構成力にイタリアらしいプログレ風味が感じられるというサウンド要素の配分の差や、お約束のサックス奏者やANGRAのアルバムに招かれたブラジル人キーボーディスト Fabrizio Di Sarno(ex:Paul Di Anno、ex:KARMA)、ベースにフィンランドのメロデズ・バンドNOCTURNAL WINDSを率いる Jani Loikas(ex:HIN ONDE、AZAGHAL、YearningのLIVEメンバー、etc..,)が参加して記念すべきデヴュー・フルアルバムに華を添えていた点も含めて、以前のフォロワー達のサウンドとは毛色が違っていたのも確かだったと言えましょう。

続く13年リリースの5曲入りアコースティックEP『Flower Paths』では、ベーシストとキーボーディストをチェンジし、さらにFATES WARNINGの元ドラマーである Mark Zonder(ex:FATES WARNING、DRAMATICA、ELEGACY、etc...)や、SYMPHONY Xのベーシストである Mike Lepond、そしてJames LabrieのプロジェクトバンドMULLMUZZLERやソロ作でのコラボレーターであるキーボーディストの Matt Guillory(ex:DALI'S DILEMMA、ex:MOGG/WAY、ex:ZERO HOUR、現PFMギタリスト Marco Sfogliのソロ作、DEATH、TESTAMENT、OBITUARYに参加したアメリカ人ギタリスト James Murphyのソロ作、etc...)などの著名なアメリカ人ミュージシャンを中心に豪華ゲスト・プレイヤー達を招いて制作されている。

『Flower Paths』をフォローするツアーは盛況で、イタリアのミラノRock N'Roll Clubでは、後のLABYRINTHのフロントマン Roberto Tirantiを含む元URIAH HEEPのキーボーディスト Ken Hensleyをサポートするバンドとの共演も果たし、この時の縁でか Roberto Tirantiのソロバンドへメンバーが招かれたり、イスラエルのプログレッシヴ・オリエンタル・デスメタルバンドORPHANED LANDのスペシャル・ゲストとして、Aix-en-Provence、Lyon、Lille、Manchester、London、Parisとユーロ圏を股にかけたヨーロッパ・ツアーへ招かれるなど、メジャーシーンのミュージシャンとの交流や広域に渡るLIVE活動がインディ活動しか行えていなかったバンドに大きな影響を及ぼしたのは確かだろう。

『Flower Paths』の好評を鑑みたのか、引き続き19年にも5曲入りアコースティックEP『Mother』が自主制作R盤でリリースされる。

ここでバンドは予てからのウィークポイントであったフロントマンを、男女ツイン・ヴォーカルを擁するイタリアン・メロディック・パワーHMバンドTEMPERANCEの Marco Pastorino(Vocals&Guitars)をメンバーへ迎えて補強し、さらにベーシストも再びチェンジし、前作に引き続き Mark Zonder、Mike Lepond、Matt Guilloryらをゲストに招くだけでなく、デヴュー・フルにもゲスト参加していた Fabrizio Di Sarnoと『Flower Paths』ツアーで親交を深めたORPHANED LANDからドラマー Matan Shmuelyもゲストとして招くなど、これまでの活動で得た人脈をフル活用して制作されたEPは、伸びやかでパワフルな上にシャープな感触も併せ持つ Marco Pastorinoの抜群に安定感ある歌声と洗練度の増したモダンな楽曲、そしてよりイタリアン・バンドらしい叙情感ある艶やかなメロディが実に魅力的で、ゲストプレイヤー達の披露する繊細な優れた演奏も相まってインディ・リリースの作品とは信じられぬ極上の仕上がり具合となっており、当時このEPがどうして国内リリースされなかったのか不思議なくらいでした。

さて、満を持して放たれる本作ですが、これまでの多岐に渡る経験が十分に活かされた一作に仕上がっており、キャッチーでメロディアスな歌メロを基軸に、テクニカルでプログHMらしい展開の妙が活かされた楽曲の上でキーボードとギターが華麗に交差する完全にワールドクラスなレベルのアルバムで、未だに彼等が自主制作という立場に甘んじているのが信じられません。

フロントマンは引き続きTEMPERANCEの Marco Pastorinoが務め、前作アコースティック作では幾分抑え気味でクリアーな歌声やシットリした歌唱をメインに聴かせていた彼も、そのパワフルでアグレッシヴな歌声を如何なく披露し本領を発揮しているだけでなく、本作にはソロ活動や元FIREWINDに在籍していた事で有名なギリシャ人キーボーディスト(ギターもメチャ巧い!) Bob Katsionisが強力な助っ人として招かれており、そのテクニカルでセンスあるモダンなキーボードプレイや音色のチョイスの妙は素晴らしく、随所でオーケストレーションやシンセによる小技を活かしプログHM作にありがちなサウンドを一段階上のレベルへ引き上げるのみならず録音や楽曲アレンジ等でも本作の制作に尽力している点は見逃せないだろう。

実際、シンセサウンドが主導する絶妙な切り返しや楽曲の導入部分など以前と比べモノにならぬレベルの高さで、そんな鍵盤サウンドに引っ張られるように Pier Paolo Lunesuのギタープレイも冴えを増しており、リフにソロにメロディにと切れ味の鋭さやエモーショナルさが一層に色濃く、押し引きを心得た各メンバーのプレイはとても2ndアルバムと思えぬ深みと瑞々しさを楽曲に与えている。

ただ、残念な事に4人しか写っていないメンバーフォトを見るに Bob Katsionisはゲスト参加のみのようなので、LIVE時には新たなキーボーディストが招かれる事になる模様だ…(´д⊂)

さらに毎度の事なのでもう驚きも少ないが、どうにも本バンドを率いる Pier Paoloと Giorgio Lunesuの兄弟はキーボーディストとベーシストをコロコロ変えるのに抵抗が無いのか、本作でもベーシストとして新メンバーが招かれており、この辺りのメンバーが安定しない点などが彼等の活動を妨げているようにも思えるので、是非ともパーマネントなメンツで固めて一刻も早くバンド体制を整えて継続的な活動を開始して欲しいものであります。

デヴュー・フルで感じさせた夢劇場のダークでメタリックな影響を完全に払拭した本作のモダンでカラフル、そしてテクニカルでキャッチーなプログHMサウンドは、実にイタリアン・バンドらしい叙情感と艶やかな音色に隅々まで余す所無く彩られており、そのスムースでクリアなサウンドの完成度の高さは完全にインディ作というカテゴリーを超越しているので、欧米の凡庸なプログHM作を聴くくらいなら自主盤インディ作と侮らずに是非本作をチェックしてみて下さい!

強引に例えるなら夢劇場の名作2ndがイタリア風味に濃厚なメロディになってさらにモダンにキャッチーに恰好良い21世紀型プログHMサウンドになってる彼等の2nd、聞かなきゃホント損しますぜ!!

EVEN FLOW Line-up:
Marco Pastorino   (Vocals)
Pier Paolo Lunesu  (Guitars)
Giorgio Lunesu    (Drums、Percussion)
Gavino Salaris    (Bass)

with:
Bob Katsionis    (Keyboards)


by malilion | 2021-04-23 13:25 | 音楽 | Trackback
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