![]() スウェーデン人ドラマー J.K.Imperaを中心に名うての強者を招いてのメロハー・プロジェクト通算5作目で3年ぶりとなる新譜がリリースされたのをちょい遅れてGET! 2012年デビュー以来、バンド編成で毎年1枚とコンスタンスに新作をリリースして来たが、前作『Age of Discovery』から完全ソロ・プロジェクト化し、80年代から90年代にかけて北欧HMを好んで聴いてきたHMファンなら間違いなく目を惹くメンツを曲毎に迎え、ゴージャスなラインアップが目まぐるしく入れ替わってキャッチーでブライトなモダン・メロハー・ロックを演るこの手のプロジェクトならではの一番簡単で確実な話題性と音楽性の幅広さを両立させる禁じ手をしょっぱなからブチ込んでその後どうするのか、と心配させた Johan Kihlbergですが、ちゃんと彼はその後の事も考えていた模様です(w デヴュー時は J.K.Impera(Ds)を筆頭に、ソウルフルな名シンガー Matti Alfonzetti(Vo:JAGGED EDGE、SKINTRADE、DAMNED NATION他)、北欧メロディック・ロック界随一のお助けマン Tommy Denander(G:RADIOACTIVEを筆頭にAORセッションやプロジェクト多数)、そして Mats Vassfjord(B:VINNIE VINCENT、GRAND DESIGN、220 VOLTN他)の4人でバンドらしくマイナーながら地道な活動を続けていた訳ですが、大勢のゲスト・プレイヤーを招いたプロジェクト作の後に自身がドラマーの座から退いて(!?)まで新たに豪華なメンツで再構築しスーパーバンドへと変貌を遂げた、新生北欧メロディアスHMバンドIMPERAの第一作(正確にはJohan Kihlberg's IMPERA名義でその前に映画サントラを一枚制作している)が久しぶりに国内盤でリリースされた。 注目の新メンバーは、シンガーにNOCTURNAL RITESの Jonny Lindkvist、ベーシストにEUROPEの John Leven、ドラマーにはKING DIAMOND、MERCYFUL FATE、SABATON、DREAM EVIL、THERION等多種多様なバンド&プロジェクトに参加し、現在はソロ活動をメインにしている Snowy Shawを起用、ギタリストは前作にも参加し、LION'S SHAREでの活動を始め数多くのバンドやプロジェクトのプロデュースで北欧メロディック・シーンで大活躍する Lars Chrissが参加し、Johan Kihlbergはギターとキーボードの一部をプレイするのみでアルバムの制作指揮者として本作に参加している。 また、それだけでなく前作同様にゲストプレイヤーも招かれており、LION'S SHAREの元キーボーディスト Kay Backlund、前作に参加していたベーシスト Mats VassfjordとKING DIAMONDのベーシスト Pontus Egbergが招かれており、前作に引き続き Johan Kihlbergの北欧スウエーデンHMシーンにおいての顔の広さを物語っていますね。 正にスーパー・バンドに成ったJohan Kihlberg's IMPERAだが、ライナーで Johan Kihlbergが語っているのを見るに残念ながらこの豪華メンツが長続きするようには思えず、友人である Mats Vassfjordや Lars Chrissは次作にも引き続き参加してくれるだろうが、他のメンツは甚だ怪しいのがなんとも(汗)、な状況なのが少々残念ですね… で、本作の内容ですが、これだけの北欧シーンで名を馳せた猛者達が集っての作品なので当然の如くプレイには問題なぞ欠片も無く、問題となるのは楽曲の出来やアルバムの方向性となる訳ですが、本作に参加したミュージシャンの名前を見て期待したリスナーの想いを裏切ることない仕上がりなのは間違いなく、如何にも北欧HMという透明感とキラキラしたキーボード・サウンドが特徴な、Johan KihlbergがSF作品好きと言う事でちょっとソレっぽいSFファンタジックな趣を醸し出すテイスト(シンフォニックで壮大なキーボードの演出!)が随所で香る、欧州HMバンド定番のウェットなメロディとキャッチーなヴォーカルラインが仄かにダークな雰囲気を漂わす思いの他にストレートなHMサウンドとなっている。 これだけキャリアの有る北欧ミュージシャンズが集った作品なので新人北欧インディ・バンドに特有の妙なマイナーHM風の臭みは無く、寧ろドライでカリカリにエッジの立ったギターサウンドの影響もあってか80年代LAメタルっぽい感触も覚える瞬間が多々ある、渇いた叙情を紡ぐギターとサイバー感覚を演出するシンセサウンドがミスマッチな差異を演出する所がちょっと面白い点と言えるだろう。 Lars ChrissのLION'S SHAREでの活動や参加しているメンツを思えば、もっとテクニカルでモダンな最先端HMな方向へサウンドの舵を切る事も出来たはずだろうが、そこはバンドを統べる Johan Kihlbergの好みもあってか、幾分オーセンティックな80年代から90年代にかけてのHMサウンド形態を残しつつ、北欧テイストも出しながら今風のモダンHMサウンドへアプローチしているように思えます。 確かに言える事は、前作で幾分か感じられたAOR風なアプローチは完全に姿を消し、よりオーセンティックなモダンHMサウンドへ近づいた音のアルバムだと言う事だ。 個人的にはもう少しヴォーカルメロディに甘味やキャッチーさ、楽曲構成的にももう少し経験豊富な各プレイヤーの腕前が光る派手なインタープレイなんぞ組み込んで『これぞ北欧スーパーバンドのHM作! 』な、ウェットなメロディアス・サウンドを聴かせて欲しかった所ではありますが、Johan Kihlberg的には私の望むようなサウンドは『古臭い!』とバッサリ切り捨てて、よりバランスを最重要視したプロダクションとパフォーマンスの両方の観点から非常に洗練された仕上がりを目指した結果が本作なのではないでしょうか? ただ、バランスを重視していると思しきなのだが、ヴォーカル・メロディや楽曲から漂う雰囲気は北欧らしいのに全体的に妙にドライな仕上がりのサウンドな上に、北欧北欧したマイナー調のメロディは影を潜めており、一番耳につくのが縦横無尽に弾きまくるLars Chrissのカリカリに渇いたスピーディーでエッジ立ったメタリックなギター・サウンドばかりなアルバムだなぁ、という印象で、メタリックなギター・サウンドが大好きなリスナーを除いて決して手放しで褒められるような傑作HMアルバムではないだろう。 某誌でのレビューで、本作は『DOKKENっぽい』サウンドと評されていたが、確かにDOKKENがちょっと北欧HMっぽい方向性のアルバムを制作した、みたいなイメージの“ちょっと古いけどモダンな新しいサウンドのアリーナロック風なメロディアスHMアルバム”というのが一番本作を表す正しい言葉かもしれない(汗 一時期流行ったTHERIONやAVANTASIAのようなオールスタープロジェクトは、Tobias Sammetのような主導者ミュージシャンが常に魔法のような瞬間を生み出す為尽力して自身もプレイに参加し、その背後にあるコンセプトを引き出すのに成功しているのに対し、本作は経験豊かなミュージシャン達の優れたスキルだけで構成されたアルバムにも関わらず、悪い意味で典型的な“お仕事”的サウンドしか鳴らしていない為にアルバムは終始熱狂的な盛り上がりに欠け、豪華なメンツを揃えたプロジェクトが自動的に刺激的なアルバムを生み出す訳ではない、肝心なのは腕前だけではなくミュージシャン同士の化学反応から生まれる、俗に“マジック”と呼ばれる現象なのだという事実を再確認させる一作となってしまったのは少々残念ではありますね… Johan Kihlbergが映画音楽好きな事もあり本作のボーナストラックでそれ風のインスト曲が収録されていますが、この辺りの要素をもっとバンドへ持ち込めば他の北欧HMバンドにない独自性を確立する手助けになりそうに思えるのでが、本作ではちょっとした彩りの一要素程度な扱いなのが惜しいように思えます。 本作を聴き終えて思うのは、やはりHMはソングライターが自身の作品の演奏を完全に他のミュージシャンへ任せるのに最も適していない特殊な音楽形態と言う事で、ポップスなどの他ジャンルならいざ知らず、少なくともHRやHMというプレイするミュージシャンのアティテュードが重要視され、作曲者とバンドは一体でなければならない、魂から迸るサウンドを鳴らすのがロック・アーティストだ、と認識されている現状に置いては、いくらベテラン精鋭ミュージシャンを雇ってバンドの態でアルバムを制作しようともプレイヤーでない人物が中心のバンドユニットはシリアスなバンドとはみなされないだろう、という事だ。 数十年の経験を持つベテラン・ドラマー Johan Kihlbergとは言え、この点だけはクリアするのは難しかったようですね…… 出来る事なら次作では自身がドラム・パートを担当する素晴らしい作品を届けて欲しいものであります。 Johan Kihlberg's IMPERA Line-up: Johan Kihlberg Mastermind Lars Chriss Guitars (LION'S SHARE) Jonny Lindkvist Vocals (NOCTURNAL RITES) John Leven Bass (EUROPE) Snowy Shaw Drums (ex:SABATON、ex:KING DIAMOND、ex:MERCYFUL FATE、ex:THERION、DREAM EVIL) with: Kay Backlund Keyboards (ex:LION'S SHARE) Mats Vassfjord Bass (ex:VINNIE VINCENT、ex:GRAND DESIGN、220 VOLT) Pontus Egberg Bass (KING DIAMOND)
by malilion
| 2021-04-12 10:50
| 音楽
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