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北欧のSKID ROWなDAYNAZTYがAMARANTHE化な7thをご紹介。


北欧のSKID ROWなDAYNAZTYがAMARANTHE化な7thをご紹介。_c0072376_17483428.jpgDYNAZTY 「The Dark Delight」'20

去年の春先に本作リリース前にネット公開されていたサンプルを聴いて何かピン、と来なかったので後回しにしていたらこんなに購入が遅れに遅れてしまったが、とりあえず北欧スウェーデン産ツインギター5人組中堅HMバンドの『AFM』移籍後2作目となる通算7作目のアルバムを今頃に購入したのでご紹介。

サンプル曲がイマイチ自分好みでなかっただけでアルバムはまた違う印象を持つかもしれない、と思い切って今回購入してみたが、その心配はやはり杞憂で終わらなかった模様だ……

17年からAMARANTHEにフロントマンの Nils Molinが加入した影響か前作では新風が持ち込まれ、それまでの“北欧のSKID ROW”風なサウンドをベースにモダン化を進め少しづつ音楽性の幅を広めて着実に進化して来たバンドサウンドが、前作ではほんのり北欧HM風味が混じったウェットな叙情感とキャッチーさ漂うユーロピアン・メロディアスHMサウンドへ再び進化し、サウンドの毛色が七割がた変わったのだが、今回はさらにその変化を推し進めた結果か、初期の80年代USAバッドボーイズ・バンド達への憧憬を隠さぬUSロックンロール・サウンドから完全に決別し、前作の北欧メロディアスHMサウンドからも距離のある新サウンドへと変わってしまっている。

というか、ぶっちゃけAMARANTHEのフォロワー・サウンドへ大接近してしまった感(ジャケが全てを物語ってるよなぁ…)が強く、そりゃあAMARANTHEの方がスケール感が有る、キレある劇的で重厚な恰好良いメタル・サウンドでメジャーな成功を収めているれども、確かにフロントマンがAMARANTHEに参加しているし、だから参考にするのもサウンド要素を持ち込むのも有りだけれども、それで元々所属していたホームバンドのサウンドの個性が失われてしまっては元も子もないじゃないか、と思うのです…(ツд`)

本作のサウンドだけを聴けば、AMARANTHE風の重厚で劇的な、パワフルでスケール感満点のメジャー路線な正統派ユーロHMサウンドで、ほんのり北欧HM風なマイナーな叙情感とデジタリーなアレンジやシンセサウンドも活かされた、演奏技術も歌唱もプロダクションも全てが高品質で結実したバンド史上最も完成度が高く商業的な成功が見込めるアルバムなのは間違いなく、文句をつけるのは殆んどイチャモンに近いのは分かってはいるんですよ、いるんだけど、ねぇ…コレならAMARANTHE聴けばええやん、ってなってしまうんだよなぁ…

Nils MolinがAMARANTHEで色々と学んだのか歌メロはかなり充実しており、これまでで一番のヴォーカル・パフォーマンスなのは確かだし、個人的にはフィメール・ヴォーカルもグロウルも嫌いなので、その二つの要素が無い今回の新作は有りか無しかで言えば間違いなく“有り”なんですが、オリジナリティの薄れたフォロワーサウンドに成る前の、『USモダン・ヘヴィネス』だったり『北欧HM』だったり『メロハー』だったりと多彩な音楽要素とメロディで楽しませてくれた、元気溌剌なUSロックンロール風の北欧ブライトサウンドを知っているだけに余計に悲しいのです…(´д⊂)ドウシテ

まぁ、80年代USロックンロール風味や初期の弾けるようなハイエナジー・サウンドは前作の時点で既にかなり弱くなっていたのですが、代わりにメロディアスな北欧風味が増していたので個人的に大満足だったし、今後はポピュラリティが高い普遍的ロックサウンドへ接近路線を強めていくのかと予想していたんですが…ウーン…さらにメジャー化する為に大幅なAMARANTHE化を選択したって事なんですかねぇ。

ただ、前作で増した叙情感あるサウンドの影響でか後退して感じられたパワフルさとアグレッシヴな感触が戻って来ており、さらに前作同様なキャッチーさや叙情感あるメロディも維持しつつ、デジタリー・サウンドやアコースティック風味、そして優美で壮大なストリングスパートや分厚いシンガロング等のゴス系な要素を聴かせ、より幅広い音楽要素とバランスの取れた完成度の高いスケール感ある高品質サウンドに仕上がっているので、その点は素直に彼等がさらに一段大きく成長したんだな、と実感出来て嬉しいんですが…

後は、彼等の初期がラフなグラム風ロックンロール・サウンドを身上にしていた事から意図的でなく自然とそうなっていただけなのでしょうが、本作のサウンドはちょっと造り込み過ぎなきらいがあるのか、スケール感はあるものの音の密度が高く硬いデジタル・サウンドばかりが耳について、広がりのあるナチュラルなサウンドの響き等が余り聴こえ来ない点にも少々息苦しさのようなものを感じてしまうのです。

なんだかんだで同時期にデビューした同じ新人バンド達とは一味違う、バッドボーイズ系でも80年代アメリカンHMリバイバラーでもない独自の道を模索し、唯一無二のサウンドを確立しつつあるように思えていた彼等が、まさか新作でAMARANTHE化してしまうとはねぇ…

皮肉な事にチャート的にもAMARANTHE化したのは正解であったようなので、今後彼等はこの路線を推し進めるのかもしれませんね。

個人的には技術的に未熟でも楽曲の完成度が低くても、プロダクションが劣ろうとも、多少フォロワー感があっても懸命にオリジナリティを生み出そうともがき苦しんでいる、そんな挑戦的でアーティステックなピュア・サウンドが好きなので、彼等の今回の計算づくめな感アリアリなアルバムは余り好きになれません。残念です。


by malilion | 2021-03-07 17:48 | Trackback
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