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80年代シンセポップ・トリオが4人組バンドになって本格始動! 新生SILVERNITEがギリシアからデビュー・フルアルバムをリリース!!

80年代シンセポップ・トリオが4人組バンドになって本格始動! 新生SILVERNITEがギリシアからデビュー・フルアルバムをリリース!!_c0072376_19552870.jpgSILVERNITE 「Silvernite」'20

以前ここでもデヴューEPを紹介したギリシア北部テッサロニキ出身で、紅一点女性シンガー Tanja Harkonen嬢を擁するレトロ・メロディアス・ポップロック・バンドが、遂に記念すべきフル・デヴューアルバムを完成させリリースしたので即GET!

アルバムジャケにはEPと同じくトリオ編成なのを伺わせるキャラクターが三人(チープなイラストなのがまたマイナーなインディ臭くてイイ♪)しか描かれておりませんが、アルバム内のクレジットを見るに、どうやらアルバム完成後にドラマー Minas Chatziminasが加入し、これで晴れて普通の4人組バンド編成となった模様だ。イヤー、目出度い!('(゚∀゚∩

なにせギリシアにはHMシーンがほぼ存在していないに等しいと聞き及んでいただけに、なんとかバンド活動出来る人員が得られて本当に良かった。

後の不安材料は一人だけフィンランド出身で恐らく未だに北欧在住な Tanja Harkonen嬢が、バンド活動を他のメンバー達と行えるのかとうか、という点なのですが、今現在一緒にギリシアで活動しているのか未確認ではあるものの、公開されている新曲のPVではメンバー4人で演奏している姿を披露している所を見るに、EPリリース時とは違って、一応一度は直に顔を合わせて演奏をした事はあるようですね。

相変わらず Thanos G.(Guitars)と Strutter(Synths、Programming、Bass&Backing Vocals)の二人が作詞作曲のほぼ全てを手掛けているのですが、それでも本作には1曲のみとはいえTanja Harkonen嬢が作詞で参加している楽曲も含まれており、EP時よりは幾分かバンドらしい環境が整ってきた模様でなによりです( ^ω^ )

そもそもSILVERNITEは、自身のリーダーバンドでパワメタのFIREWINDで活動する他、ギリシア産メロデスのNIGHTRAGEや北欧HMバンドのDREAM EVIL、ドイツのスピードメタルMYSTIC PROPHECYで活動をしていたが現在は脱退し、FIREWINDの活動に専念したはずだが、何故か北欧メロデスARCH ENEMYにヘルプ参加し6thアルバムアも制作し、Ozzy Osbourneのツアーにも参加したり、ソロ活動も活発に続けたりしている同郷ギリシア人でギタリストの Gus G.の17年日本ソロ・ツアーにベーシストとして同行した Strutterが立ち上げた80年代風なレトロ・サウンドを全面に押し出したメロディアス・ポップロック・プロジェクトであった。

StrutterはギリシアのメロディアスHRバンドやプログレッシヴ・パワメタ・バンド等でプレイしていた経験があり、Gus G.やUli Jon Rothの2014年欧州ツアーにも参加したギリシア以外のシーンも知る実力派ミュージシャンだが、相棒のギタリスト Thanos G.と80年代リスペクトなレトロ風味のシンセサウンドがキー・サウンドなプロジェクトを始動させ、フロントマンに北欧フィンランドのメロデス・バンドEVERSLAVEの一員として3作のデモ音源を発表した事がある Tanja Harkonen嬢を迎え、前述のEPアルバムを19年にカセットオンリー(!)でリリースと、ここでもこだわりと80年代への憧憬を隠さぬ行動に出る訳ですが、このご時世にカセットオンリーという暴挙が逆に注目を集め、後にボーナストラックを2曲追加して無事CD盤としてリリースされるに至り、ここでご紹介した訳ですね。

さて、国内外から注目を集める事に成功した彼等が、満を持して制作したフルアルバムのその内容はと言うと、前作から引き続きエイ リアンに侵略された地球を奪還すべく、人類が立ち上がる様を描いたSFコンセプト作となっており、EP同様にレトロ風味の利いたシンセサウンドと Tanja Harkonen嬢の滑らかで美しいポップス的なヴォーカルがキャッチーに楽曲を進めていく路線に変更は無く、Tanja Harkonen嬢のヴォーカル・パフォーマンスのレベルも楽曲の完成度も上がり、 EP当時より精進した成果が見事に結実した、ダークでスペイシーな美旋律とAOR風のシャレオツなメロディが軽やかに交差し80年代リスペクトな楽曲を彩る、どこか懐かしいのに今風のモダン・サウンドにブラッシュアップされた一癖あるポップ・ロック・アルバムとなっている。

楽曲制作にも参加した事で前作よりSILVERNITEへの理解が深まったのか、Tanja Harkonen嬢のヴォーカル・パフォーマンスが様々な表情を楽曲に与えており、少しコケティッシュで甘ったるいポップス風な歌唱から、透明感あるクリアーでストレートな歌声、ユーロビート風なデジタル処理されたメカニカルなヴォイス、メロデスで培ったダーティでパワフルなガナリ声もチラリと聴かせたりと、EP時より明らかに歌唱法の幅が広がっており、よりSFコンセプト作の情景やキャラクター達の心情を表現出来るようになったのか『フル・アルバムではギリシア出身のフィメール・ヴォーカリストにどうせメンバーチェンジするんだろうなぁ』というEP時の勝手な私の予想を覆し、実に良くバンドに馴染んでいて、よりスケールアップしたキャッチーな楽曲との相乗効果を著しく生んでいるように思えます(*´∀`*)

80年代のロックやポップスにインスパイアされた楽曲に、ノスタルジーを取り入れ新たな息吹を吹き込んだそのサウンドには、オールドスクールなシンセ、メロディアスなリードギター、ポップフィーリングたっぷりなヴォーカル、SFコミック、ウォークマン、カセットテープ、ローラースケート、アーケードゲーム、時代がかった大きなサングラス、バブルガム、セクシーな紅いルージュ等々、過ぎ去った青春のグラフティや忘れかけていた情熱が渦巻いており、80年代当時を知るリスナーにある種共通な追憶を引き起こさせる独特な味わいとセンチメンタルな香りが強烈に漂っていて、本作は聴くリスナーの年齢によって評価が著しく変わる一作かもしれない。

個人的に彼等のサウンドは大好物な部類なのですが、ボスである Strutterが操るシンセがサウンドの基軸になっているし、サウンドの方向性が80年代レトロ・ポップロックだから仕方がないのだが、少しキーボードサウンドの比重が多すぎるきらいがあり、総じてハードエッヂなギターサウンドが少な目なので、産業ロックや切れ味鋭いハードポップ、そして最近の高品質なメロハー・サウンドが好きなリスナーには少々かったるく古臭いサウンドに聴こえてしまうかもしれないのがちょっと不安ではあります。

とまれ、まだ結成して日も浅い彼等が予想以上に見事なサウンドを引っさげて、こうして遠くギリシアからフルアルバムを届けてくれたのをまずは祝いたいですね。

ギリシアでの活動はなかなかに厄介でしょうが、出来るだけ長く活動しコンスタントに作品を届けてくれる事を祈っております。

尚、本作は限定のデジパック仕様が初回リリース盤なので、お求めの方はお早目に。

さらに、本作と連動した短編コミックスもアルバムと同日リリースする予定との事なので、本作が気に入った方はそちらの方もチェックしてみるといいかもしれない。


SILVERNITE Line-up:

Tanja Harkonen  (Lead Vocals)
Strutter (Synths、Programming、Bass&Backing Vocals)
Thanos G.      (Guitars)
Minas Chatziminas (Drums)



by malilion | 2021-03-04 19:55 | 音楽 | Trackback
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