![]() 72年に結成され、80年にアルバム・デヴューした当時、北欧トラッドとCAMELをMIXしたような北欧独特な透明感のある洗練されたインスト曲オンリーなシンフォ&プログレッシヴ・ロックを奏でるスタイルだったが、徐々に音楽性を変化させてゲスト・ヴォーカリストを招いたりメンバーが歌うヴォーカル入り曲も演りはじめ、活動停止前のアルバム『Tidings』'02 では初めて専任ヴォーカリストを擁するツイン・キーボード編成の6人組バンドになったが、その後の11年間彼等は新譜をリリースする事はなかった… 当初からメンバーは流動的ながら活動休止前の数作は比較的メンツも安定していたが、この長い長い休止期間で元居たメンバー達の姿は消え、11年ぶりとなる前作は唯一のオリジナル・メンバーである Harald Lytomt(Guitar、Flute)以外のメンツを一新したキーボード入り5人組というオーソドックスな編成で“70年代プログレッシヴ・ロックへの回帰”をコンセプトに挙げる通り、ハモンド、ムーグ、メロトロン、生ピアノ、タウラスなど本物の音色にこだわり抜いたヴィンテージ色を大々的に導入した、 Harald Lytomtの弾く Andrew Latimerを彷彿させる太くマイルドなトーンのギターが切なく伸びやかに咽び泣きまくる、定番の北欧トラッドやロマンチックで幻想的な叙情感が優雅に滲む、CAMEL張りな歌心溢れるシンフォニック・パートと、北欧フレーヴァー香る切れ味鋭いプログレ・ハード・パートとの鮮やかな対比が見事な復活作を届けてくれる。 8年ぶりとなる本作では、さらにメンツを補充し、前作からフロントマンに迎えられた同郷のシンフォ・バンドMAGIC PIEの Eirikur Hauksson(Vocal)の他、Glenn Fosser(Keyboards)、Per Langsholt(Bass)、Magne Johansen(Drums)の4名も引き続き参加し、さらに Lasse Johansen(Piano、Mini Moog、Mellotron、Keyboards)と Hans Jorgen Kvisler(Guitars)の2名が新たに加わった、ツイン・キーボード&ツイン・ギター(!!)の大所帯7人編成バンドとなって、ベテランとは思えぬフレッシュなエネルギーとドラマチックな北欧ノルウェー・バンドらしい哀愁と繊細な叙情感が響き渡る美旋律シンフォ・アルバムを再び届けてくれました!('(゚∀゚∩ 久しぶりな本作の内容はと言うと、Harald Lytomt入魂の Andrew Latimer直系のマイルド・トーンな泣きのギターが楽曲のメインカラーを決定付けているのは変わりないものの、一聴してすぐ気づくのは前作のシットリした北欧由来のセンチメンタルな叙情感は幾分か後退し、よりパワフルでアグレッシヴな所謂定番のユーロ圏シンフォ・ロック的サウンドの感触が強まって感じられ、それは前作ではMAGIC PIE風のヴォーカル・パフォーマンスを控えてシットリと歌い上げつつ、HEEP風なコーラスも聴かせシンフォ系サウンドにアジャストさせていた Eirikur Haukssonが彼本来のMAGIC PIE風のパワフルでダーティなヴォーカル・パフォーマンスをKERRS PINKに持ち込んで来たのと、大所帯のバッキング奏者達が奏でるサウンドの厚みが増し、さらにこの8年でシッカリと馴染んだ新メンバー達がバンドへの貢献として本作から披露し始めた、より今風のシンフォ・ロックへ接近したモダンで重厚な音楽性とダークなメロディの影響が色濃く感じられる作風になっている。 北欧バンドの専売特許であるヴィンテージ臭漂う叙情感とアコーディオンが奏でる鄙びた北欧ドラッド風味を随所に散りばめつつ今風へアップデイトされた強力なシンフォ・サウンドを、前作の70年代プログレ・リスペクトな音を鳴らしていたKERRS PINKが披露するとは正直予想外で、鍵盤奏者達の奏でる透明感と躍動感ある艶やかな美旋律と、不意に紡がれるツインギターの甘くセンチメンタルなフレーズ、軟弱になりがちなシンフォ・サウンドを引き締めるハードなリフと泣きのギター・トーン、それらが鮮やかに交差する優雅なアンサンブルと構築美あるリリカルな楽曲を、テクニカルな変拍子を交えながらボトムを固め支えるリズム隊の小気味よく堅実な仕事ぶりは、流石はベテラン・バンドと唸らされるソツなく見事な出来栄えであります(*´∀`*) 持ち味であるメロディアスな楽曲展開をメインにしつつ、北欧トラッドを取り入れたノスタルジックな美旋律がうっすら70年代プログレ風味を感じさせながらも、よりモダンでパワフル、そしてダークな感触も漂わす20年代シンフォニック・ロックとの音色が見事に融合した、新生KERRS PINKを記念する素晴らしい一作と言えましょう。 THE FLOWER KINGSをはじめ欧米のミュージシャンとの交流があってメジャーな北欧シンフォ・バンド達と比べると、そもそもがインスト・バンドだったし、長い休止期間もありましたし、元来がバンド的に地味なイメージなのは否めませんが、それでも本作は自主制作盤の北欧シンフォ・アルバムとしてはA級クラスの出来栄えで、長らく待たされた甲斐があったと言うものです。 と、諸手を挙げて絶賛しておいてなんですが、前作で聴けたユーロ・シンフォらしいシットリしたヴォーカルアプローチやHEEPっぽい妖しいファルセット・コーラスが減ったのが個人的にはちょっと残念ではありますし、本バンドにパワフルでモダンなサウンド路線への進化を余り望んでいなかったと言うのもあったりで、実に素晴らしいアルバム内容なのに、ちょっと残念な想いが残ってしまう、そんな身勝手な感想が無きにしも非ずだったりして… KERRS PINK Line-up: Harald Lytomt (Guitars) Eirikur Hauksson (Lead Vocals) Glenn Fosser (Keyboards、Hammond C3、Piano、Mini Moog、Mellotron、Accordion) Per Langsholt (Bass、Moog Taurys Basspedals) Magne Johansen (Drums、Percussion) Lasse Johansen (Piano、Mini Moog、Mellotron、Keyboards) Hans Jorgen Kvisler (Guitars)
by malilion
| 2021-02-27 16:09
| 音楽
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