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北欧メロハーの新星 PALACEが3rdをリリース。

北欧メロハーの新星 PALACEが3rdをリリース。_c0072376_06473304.jpgPALACE 「Rock and Roll Radio」'20

北欧スウェーデン産メロハーのニューカマーが、前作『Binary Music』から2年ぶりとなる3rdアルバムを去年末12月に海外でリリースしていたのですが、ちょっと待っても国内盤リリースの情報が聞こえて来ないので待ち切れず輸入盤を購入してしまいました。

デヴュー前からメロハー界隈のプロジェクトや新バンドにギタリスト兼ベーシストとして参加したり、ソングライター兼ギタープレイヤーとして多方面で名を売り、満を持してFrontiers Recordsのレーベルオーナー Daniel Floresの肝いりで、マルチ・プレイヤー&ソングライター Michael Palace(Vocals、Guitars、Bass、Keyboards、etc...)が自身のリーダーバンドPALACEで16年『Master of the Universe』にてデヴューした訳ですが、マルチプレイヤーあるあるの症状が早くも露呈し2nd『Binary Music』でデヴュー作参加のメンツは全員居なくなり、ドラマーだけヘルプを仰いでゲスト参加してもらう体制でアルバムは制作されていたのですが、遂に本作に至ってはヴォーカルを筆頭に全ての楽器を Michael Palaceが手掛ける完全ワンマン・プロジェクトと化してしまいました…

ウーン…素朴な疑問だけどそこまでするなら、なんでバンド名義で活動するん?(汗

デヴュー作は80年代リスペクトなガチガチにスタジオで作り上げた古典的なメロハー・サウンドが詰まった、A級までいかぬ極上のB級メロハーにもう一歩、な出来の北欧特有の憂いを帯びた美旋律と(些か無理の見える)ハイトーン・ヴォーカルに分厚い爽快なコーラス、北欧お約束のキラキラ感満載の大仰なキーボードに透明感溢れフック連発のキャッチーな楽曲、そして繊細さも兼ね備えたハードエッジで徹底的にメロディアスなHRサウンドを新人離れした完成度を提示した Michael Palaceが、続く2ndでは北欧らしい叙情性を含みながら産業ロック、AOR、ニューウェーヴ、北欧HM等の要素をバランス良く取り入れつつ、より楽曲重視なスタンスで煌びやかなキーボード・サウンドの比重を増したコンパクトでキャッチーなサウンドで埋め尽くしたAOR寄りなアルバムを届けてくれた訳ですが、続く本作ではさらに従来の路線を推し進めたキーボードとヴォーカル、爽快コーラス中心な華やかでゴージャスな産業ロック&AOR路線のサウンドで楽しませてくれております(*´ω`*)

ただ、PALACEを北欧メロハーとして捉えていたファンにとって、本作の大々的にキーボードを導入した楽曲形態は少々好みからズレる恐れがあるように思えるのがちょっと不安かなぁ…

正直、Michael Palaceはギタリスト的なスタンスが基本のシンガー&プレイヤーかと思っていただけに、ここまでポップスに片足突っ込んだコンテンポラリー寄り(お約束のムーディーなサックスも導入!)のメロハー風楽曲をキーボードサウンドで埋め尽くすアルバムをリリースしてくるのは予想外でありました。

この辺が同じマルチプレイヤー・ミュージシャンである英国人 Steve Newmanとちょっと違い、だからなのかギタリスト的なスタンスも保ち続けている Steve Newman率いるNEWMANのアルバムは切れ味鋭いハードなギターがしっかりと未だにコンテンポラリー寄りな楽曲でもフィーチャーされているのが面白いですね。

無論、Michael Palaceだって『ここぞ!』という所でテクニカルで流暢な早弾きや魅力的なフレーズを奏でているのですが、どうにも分厚く華やかなシンセサウンドの方が楽曲内で目立っているバランスなので、アルバムを聴き終えた後のギターの印象が薄くなってしまうんですよねぇ…

方向性がよりコンテンポラリー寄りになったのは確かではありますが、さらにメロディックに構築されたコンパクトでキャッチーな楽曲と磨き抜かれ造り込まれた高品質なサウンド・クオリティ、幾重にも重ねられたブ厚い爽快なコーラス・ワーク、練り上げられ細部にも気を配った細かなアレンジ、派手で煌びやかなキーボード・サウンドばかりで惰弱になりがちなAOR寄りサウンドを引き締めるハードエッジなツボを心得たギターサウンドと、ギリギリでメロハーなサウンドのスタンスも保っているとも言え、Michael Palaceの抜群のコンポーズ能力が詰まった楽曲の数々は前作を遥かに凌駕する仕上がりなのは確かなので、是非とも彼のファン以外のメロハー・ファンな諸兄にも本作をチェックしてもらいたいものです。

後は、2ndで無理なハイトーン・ヴォーカルを披露するのを止めたのが大正解だったと、本作のミドルレンジ主体でパワフルに深みある歌唱を披露する Michael Palaceの自信に満ち溢れた七変化のヴォーカル・パフォーマンスを聴くに確信出来ますね(´∀`)

とは言え、殆ど3分台のキャッチーでコンパクトなバランス重視な楽曲ばかりなのは結構なのですが、ロックっぽい“生”な感触のサウンドは殆ど聴き取れないレンジの狭い固いデジタルサウンドばかりで、この路線がさらに推し進められるともうメロハーとは言えず、単なるポップロックの領域へ入ってしまうので、それはそれで聴いてみたい気もするけれど、そうなると相手にするのがポピュラー・ミュージックシーンの巨人達や大ベテランやプロ中のプロな天才的職人連中になる訳で、だとすれば先行きがちょっと不安ではありますけど……

北欧メロハー好きは勿論、80年代のAORやTOTO等の煌びやかなキーボードサウンドもフィーチャーしたUS産業ロックを好む方にも十分訴求する高品質なメロディアス作なので、華やかな80年代USサウンドへの憧憬を隠さず現代風にモダンに再構築した本作のサウンドの仕上がり具合を、是非ご自身の耳で確かめてみて下さい。




by malilion | 2021-02-24 06:47 | 音楽 | Trackback
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