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前作の不調が嘘のよう! 原点回帰したUNRULY CHILDの7thはメロハー・ファンにお薦めデス!!


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UNRULY CHILD 「Our Glass House」'20

去年の12月に海外でリリースされ、国内盤リリースあるかとしばらく待ってみたけどそんな気配が微塵も無いので、諦めて今頃に新譜を購入してみました…(´д⊂)

購入を渋ったのは国内盤リリースの件もありますが、前作『Big Blue World 』'19 がその内容の余りの酷さにレビューするのを躊躇っていたら、いつの間にか他バンド作へ興味が移りその存在を(半ば意図的に)忘れていたのを思い出したのがもう一つの大きな原因でもあります…('A`)

世界の音楽シーンがグランジーの波に呑まれつつあった1992年、その造り込まれた煌びやかなUSAメロハー・サウンドでデビューし80年代王道HR/HMファンに熱い支持を得た彼等も世の流れには勝てず93年頃に解散、2010年にメロハー・レーベルFrontiersの音頭取りでオリジナルメンツで再結成して以来、微妙に音楽性を変化させつつコンスタントにアルバムをリリースして来たのだが、遂に前作でリズム隊がゴッソリと抜け、以降リズム隊を補充せず Mark Free改め Mercie Free(Lead Vocal:ex-KING KOBRA、ex-SIGNAL)、Bruce Gowdy(Guitars、Keyboards、Vocals:ex-STONE FURY、WORLD TRADE)、Guy Allison(Keyboards、Percussion、Vocals:ex-AIR SUPPLY、ex-THE DOOBIE BROTHERS)の初期からのコアメンバーのみのトリオ編成での活動になり、アルバム制作にはゲストプレイヤーやセッションマンによるリズム隊を迎える体制となっておりました。

前作と前後してアーカイヴBOX音源集等のリリースもあった事やメンバーのインタビュー等からバンドの存続が危ぶまれていたのですが、こうしてデヴュー29年目の今年に前作から約1年振りと短いスパンで元気に新譜をリリースしてくれたのをまずは素直に喜びたい。

さて本作についでですが、まずトリオ編成のままなのは今回も変わらずなのですが、本作はベーシストにあのフレットレスベース(!)の名手 Tony Franklin(ex-THE FIRM、ex-BLUE MURDER、etc..)を迎えて制作にあたっているのが一つ目の大きなトピックでしょう。

また二つ目の大きなトピックは、前作での気の抜けたコーラのような毒にも薬もならない、スーパーのBGM染みたヘッポコ・サウンドから一転、あのデヴュー作を彷彿とさせる(!!)ようなミステリアスでダークなメロディとムーディーなグルーヴある楽曲や、USAバンド特有な乾いた叙情感とプログレ由来の凝ったアレンジが効いた構築美ある楽曲だけでなく、近作で一番のハードエッジなギターがフィーチャーされた楽曲群には、これまでコンテンポラリー・ロックとクラシック・ロックを巧く取り込んでエキサイティングでキャッチーなモダン・サウンドへ生まれ変わらせて来た手法が随所で活かされており、至る所に散りばめられたフックある美旋律、そして爽快なコーラスと歌メロはソリッドなHRからスムースなAORまで何れも”UNRULY CHILDらしさ”がしっかり刻印された抜群の仕上がりで、前作のダメさ加減が嘘のような快作となっている点だ!('(゚∀゚∩

さらに三つ目のトピックとして、今回デヴュー作収録の楽曲を2曲(!)、ドラムレスなハーフ・アコースティック&ストリングスアレンジの優美で甘々なサウンドな2020ヴァージョンで収録しているのですから、明らかにメンバーもデヴュー作を意識して本作を制作したのが分かると言うものです。

バンドロゴもシンプルでモダンなデザインへ変更されているので、心機一転な想いで本作をバンドが制作した意気込みがヒシヒシと伝わってくるんですよねぇ(´∀`)

ここまで読むと『そんなに出来が良いのに、なんで国内盤出ないんだ!』と、思われるでしょうが、まぁ、国内盤がリリースされないにはそれなりの原因があるんですよ…ええ…(汗

本作の評価を落としているだろう要因の一つは、ドラマーを迎えずに制作した為か、ドラムーパートがドラムマシーンで録音されており、如何に名手 Tony Franklinのベースがファンキーでテクニカルであろうと、肝心要のサウンドの基礎であるドラムパートが平坦でのっぺりとした、人工的で魂のこもっていない、有機的な音が殆ど聞こえずパワー不足な、ロックっぽい生さの感じられない無機質サウンドという印象は拭い難いのが…orz

さらに前作の出来が散々だった影響か本作の制作費が余りレーベルから用意されなかったのか、致命的な事にプロダクションに問題を抱えており、楽曲はデヴュー作を思わす素晴らしい方向性なのにも関わらず、音の悪い(時間が無くてサウンドミックスが満足に仕上がらなかった? 濁って聴こえる…)アルバムとなってしまっているのです。

うーん、彼等のデヴュー作はガッツリと造り込まれたプロダクションとミックスでサウンドをピッカピカに磨き抜くので有名な Beau Hillが手掛けていた事もあって、同一方向性な楽曲の本作は余計にアラが目立ってしまうんですよねぇ…皮肉なもんだなぁ…orz

それなりのクオリティの音楽をリリースしてインディ活動を地味に続けている愚直でマイナーなB級HMバンドなら、このレベルのサウンドだろうと目くじら立てて騒ぎ立てる事もないかもしれないんですが、彼等はデヴュー作にして既にハイクオリティなトップレベルのA級サウンドを提示してしまった訳だし、その後も紆余曲折ありながらも一定レベル以上の楽曲とサウンドをクリエイトしてきた訳ですから、ここにきていきなりこの粗悪なサウンドのアルバムというのはいただけないんですよねぇ…('A`)

UNRULY CHILDのこれまでのアルバムや構成するバンドメンツのキャリアを考えると、本作はバンドに相応しい基準を下回っているクオリティのアルバムと言わざるを得ないが、にも関わらず、素晴らしい音楽性、親しみやすい楽曲、そして Marcie Freeの未だ衰えること無いワールドクラスな抜群の歌唱力は、本作を“駄作”とアッサリ切って捨ててしまうのを躊躇わせる強力な要素になっているように思う。

最近のメロハー・バンドの作品や彼等のデヴュー作のような切れ味鋭い即効性は無いが、何度も聴けば聴くほど本作は良く聴こえ、耳に馴染んでくる、非常に成熟されたサウンドで構成されたアルバムだと言えるので、プロダクションやドラムマシーン等なんだかんだとネガティヴな点を上げましたが、是非一度ご自身の耳でチェックして本作の出来映えを判断してみて欲しいですね。


UNRULY CHILD Line-up:

Marcie Free  (Vocals)
Bruce Gowdy (Guitars、Keyboards、Vocals)
Guy Allison  (Keyboards、Percussion、Vocals)

with:
Tony Franklin (Bass)




by malilion | 2021-02-23 00:22 | 音楽 | Trackback
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