VOLSTER 「Arise」'20 90年代初頭に、ここ日本でも人気を博しポストTNTと期待された北欧スウェーデン産メロハー・バンドMASQUERADEの元メンバー二人を中心に13年に結成された、4人組北欧モダン・ヘヴィネス・バンドが前作『Perfect Storm』から2年ぶりとなる2ndアルバムをリリースしたので即GET! MASQUERADEの元メンバーが新たに立ち上げたバンドと言う事で80年代風の煌びやかでキャッチーな北欧メロハー・サウンドの流れを汲むサウンドを期待した方には申し訳ないが、全くその筋を求める方々を満足させるノスタルジックなHMサウンドでは無いのをまずお断りしておきます(-_-;) 残念ながらメンバーチェンジが勃発し、Ulf Andersson (Guitar ex:MASQUERADE)と Henrik Lundberg (Bass ex:MASQUERADE、ex:HOUSE OF HEAVY)の中心2人はそのままに、フロントマンの Peter Tenningとドラマー Daniel Granlund (SYCONAUT)が脱退し、新たなシンガーに Mattias Wellhag (Vocals&Guitars ex:HOUSE OF HEAVY、BLACKSTORM、P.I.G、GLAM SLAM)が迎えられている。 そもそもMASQUERADEのオリジナル・ギタリスト Ulf Anderssonがアルバムデヴュー前に他プロジェクトの為にMASQUERADEを脱退(4thアルバムで復帰)し、Henrik LundbergはMASQUERADE解散までに四枚のフルアルバムを制作するが、バンド解散後に Ulf Anderssonと Henrik Lundbergは再び合流し、四曲入りデモテープ『VOLSTER』を Mattias Wellhagのヴォーカルで96年に制作するがこの時のセッションは上手く始動せず、けれど Henrik Lundbergはデモ『VOLSTER』のヴォーカリスト Mattias Wellhagと双頭プロジェクト・バンドとしてHOUSE OF HEAVYを結成すると09年にセルフタイトルのデヴュー・アルバムをリリースするものの、当時メジャーシーンにその名を轟かせていたヌーメタルの雄 SOUNDGARDENの北欧版バンド SKINTRADEのさらに劣化コピーの様だったHOUSE OF HEAVYのアルバムは案の定、市場で苦戦し、結局HOUSE OF HEAVYは自然消滅してしまう。 今一つMASQUERADE解散後、各自の活動が軌道に乗らぬまま13年に Ulf Anderssonと Henrik Lundbergが再び合流すると17年前の活動を再開させ、メンバーを集めてVOLSTERを結成するとデヴュー作『Perfect Storm』を18年にインディ・レーベルRock Of Angels Recordsからリリースするに至る、というバンドの成り立ちやサウンドを聴くに、デヴュー作のフロントマン Peter Tenningがそもそも Mattias Wellhagの代役(実際、Henrik Lundbergは Mattias Wellhagの事をVOLSTERのオリジナル・シンガーとインタビューで答えている)だったと捉える事も出来る訳で、紆余曲折を経て2ndにしてデモ当時の、原初のバンド形態へ戻ったと言えるかもしれない。 また、本作の北欧フレーバーが薄っすらまぶされた鈍色モダン・ヘヴィネスサウンドを聴くに、同路線サウンドなHOUSE OF HEAVYにも Mattias Wellhag参加していた訳だから、 HOUSE OF HEAVYに Ulf Anderssonが迎えられ、VOLSTERへ発展したと捉える事も出来るのではないだろうか? Henrik Lundbergと Mattias WellhagがクリエイトしたHOUSE OF HEAVYのサウンドはUSモダン・ヘヴィサウンドが8割で、残り2割が北欧メロディアス・サウンドだったが、Ulf Anderssonが加わった事によって北欧要素が増え、さらに楽曲の質が向上し、00年代から全世界で猛威を振るっている鈍色モダン・ヘヴィネス要素が5割で、残りは北欧メロディアス・サウンドをはじめ様々な音楽要素が入り乱れた絶妙なバランス具合となっている本作のサウンドは、HOUSE OF HEAVYの焼き直しサウンドではなく、ましてやSOUNDGARDENの劣化コピー・サウンドでもない、Mattias Wellhagのちょっと Jeff Scott Sotoっぽい低域のザラついたパワフル・ヴォイスを活かした80年代風なメロディアス要素もまぶされたグルーヴィーで図太くウネるような、ミステリアスさを醸し出す独特の旋律も合わさって、前作の中途半端な北欧要素が整理されよりストレートでアグレッシヴな芯の有るモダン・メロディアス・HMサウンドへと劇的に進化しているので、どうにも前作がピンと来なかった方にも是非とも一度チェックして欲しいものであります。 前作がどうにもイマイチだった一番の理由は、Peter Tenningの如何にも北欧HMヴォーカリスト的な線の細さと高めなキーの歌声や声質のせいばかりとは言えない(定番の北欧HMなら彼の歌声はマッチしただろうし、中途半端な北欧HM的キーボードの導入が足を引っ張った?)が、少なくとも本作での Mattias Wellhagの中域から低域をメインにしたパワフルでソウルフルな、バンドサウンドにアジャストした熱唱を得たことでモダンでヘヴィな鈍色サウンドの恰好良さと切れ味、そしてスリリングな魅力が倍増したのは間違いなく、今回のメンバーチェンジはバンドと Mattias Wellhag双方にとって大正解だったのは間違いない。 また、HOUSE OF HEAVYの時に、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードプログラミングまでこなしていた多才な Mattias Wellhaを得た事で、VOLSTERは2ndアルバムにして Mattias Wellhaがギターもプレイするツインギターの4人組編成へと生まれ変わり、分厚くタイトなヘヴィ・サウンドを聴かせる事が可能になったのもバンドにとって大きくプラスに働いているのも見逃せぬ点だろう。 大雑把に言ってモダン・ヘヴィネスサウンド系なのは間違いないが、随所で北欧バンドらしい美しく叙情的な美旋律を織り込んだり、ブリティッシュHR風な要素(DEEP PURPLEは最早お約束w)やアーバン・テイストなAOR風味、そしてオルガンやシンセ等の使い方にプログレ的要素や80年代的華やかなロックサウンド(露骨な白蛇パートが…)なども垣間見せ、各自がこれまでの活動で培ってきた様々な音楽要素がモザイクのように楽曲の至る所に散りばめられたそのハイブリッド・サウンドは、さすがキャリア組が結成したバンドが放つアルバムだけあってポッと出の新人バンドには成しえぬ高いクオリティと深みを感じさせ、前作に引き続きThe Panic Room Studioの Thomas“Plec”Johansson (SOILWORK、ONSLAUGHT、DYNAZTY、etc...) によるマスタリング、そしてバンドとの共同ミックスだけが理由でないのは明らかだ。 逆に、1stで感じられたストーナー的なニュアンスは本作のサウンドから姿を消しているので、ソレ系統のサウンドが気に入っていた方には本作の音楽性の変化は面白くないかもしれないが、新メンバーを迎えて発展的進化を遂げた彼等を応援して欲しいものです。 尚、バンド名が協力的関係とか特別な関係とか如何にもユニットやプロジェクト向きな『bolster』という言葉をもじった言葉になっている為か、同名別ジャンルのバンドやユニットが世界中に多数存在するので本バンドのアルバムをお求めの際は混同されぬよう注意されたい。 また、何故か本作のバンドメンツのクレジットは Ulf Anderssonと Henrik Lundbergの二名しか明記されていないが、ヴォーカル・パートはちゃんと Mattias Wellhagが担当しているので、恐らく Mattias Wellhagの抱えている契約関係か何かの問題でクレジット出来なかったか何かなのでしょう、きっと。 ドラマーは既にオーディションを開始しているとの事で新たなメンツが遠からず補充されるのでしょうが、本作のプレイはこれまでにVOLSTERのヘルプを何度かしてきたと言う Mattias Eriksson(ノルウェーのHMバンドTHUNDERBOLTのドラマーと同一人物か不明)辺りがヘルプしたのか、はたまたスタジオミュージシャンのセッションプレイなのかは判然としておりません。 コロナのお陰でLIVE活動もままならないでしょうが、早くメンツを固めて万全の体制で創作活動に励んで欲しい、そんな期待の北欧新バンドであります(*´ω`*)
by malilion
| 2021-01-26 16:26
| 音楽
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