![]() 中南米 MEXICOの中部は東に位置するメキシコ第三の都市 Monterreyを拠点に活動していた、キーボード入り5人組シンフォ・バンドの99年唯一作『暁と黄昏』が19年度リマスター&ボーナストラック2曲追加でリイシューされたのを、かなり遅れてGET! 欧米のバンドに比べて知名度は低いものの同郷のCASTやICONOCLASTAと共に近年のメキシカン・シンフォの代表作と呼ばれる一枚で、オリジナル盤は米国カリフォルニアを拠点とするレーベル Art Sublime(ICONOCLASTA、HOLDING PATTERN、Jose Cid、Tony Spada等のリイシューで有名)からリリースされ、合計2000枚プレス(私の刻印は0208)されたが即完売し長らく廃盤となっていたマニアックなアイテムで、これはラテン・アメリカン・シンフォニックロック愛好家には嬉しい再販だろう。 本バンドは、元々は Marco Corona(G & Key)のソロ・プロジェクト(Marco Coronaは、米国に渡り音楽キャリアを築くだけでなく、Robert Fripp(!!)からギターのレッスンを受けいた事があるらしい)として90年代初期に米国 Los Angelesでスタートし、その後活動の場を メキシコの Monterreyへ移し、音楽学校の生徒でクラッシック楽器奏者である他メンバー達を迎えて95年頃から本格的に活動を開始した、半ば Marco Coronaのワンマン・プロジェクトバンドでありました。 アルバム・リリース前に、高等教育機関や地元のロックフォーラムでのライヴを披露(GENESIS、FOCUS、KING CRIMSON、MAGMA、DEEP PURPLE、EL&Pなどのカヴァー曲も演奏)し、Monterreyのプログレッシヴ愛好家達との交流を図るだけでなく、98年にはメキシコを代表するソングライターでありミュージシャンの Arturo Mezaに同行して米国シカゴで2回のプレゼンテーション・ライヴを行い、アルバム録音前にドラマーが交代、そして99年3月、Baja Californiaの Mexicaliで開催されたBaja Prog IIIフェスティバルのオープニング・アクトを務めるなど精力的に活動し、Monterrey芸術評議会から資金援助を受け本アルバムを制作すると、リリース後の00年メキシコでのプログフェスト、同年の米国南カリフォルニアでのプログフェスト等の有名なプログレッシブ・フェスティバルに参加するが、中心人物で活動的な Marco Coronaが次なる目標をバンド活動以外に定めたのか以降は無期限の活動休止となり、実質的解散(2ndアルバム用のデモは数曲存在していたし、何度か再結成の動きもあったらしい)状態のまま現在を迎えている。 ギーガー風のジャケを見るだけでどんな内容か聴こえてきそう(EL&P好きなんでしょうねぇ、笑)ですが、そのサウンドは他の南米産シンフォニック&プログレ・バンド達と似ていて、長いインストゥルメンタルのパッセージではギターとキーボードのソロが中心となるお約束なスタイルの、殆どインストゥルメンタルで構成された作品ながら僅かにあるスペイン語で歌われる男女ヴォーカル曲が長尺曲続きになりがちなアルバムを飽きさせぬアクセントにもなっている、全編を通じてクラシカルなテイストを散りばめた端正なインスト主体のシンフォニック・サウンドを展開する構成となっており、スケールの大きな楽曲や伸びやかなゲスト女性ヴォーカルの清楚な美声やフルートの涼やかな音色等のアレンジが素晴らしく、実に中南米らしい叙情的でメロディアス、そして色彩豊かでカラフルなシンフォニック・サウンドを堂々と披露している。 Disc1は、トータルな流れを計算した小品を主体に構成されており、GENESIS、CAMEL系の優美なアンサンブルが好みな方には堪らぬだろう典型的なメロウ系シンフォニックサ・ウンドで、ヴォーカルをフィーチャーした楽曲や、クラシカルなギターによる優美な間奏曲、ムーディーで洒落たJAZZっぽいピアノが活躍するヴォーカル・ナンバーまでが次々と現れ消えていく一筋縄で行かぬ展開が実に楽しく、キーボードが大活躍するパートはEL&P(と言うかEmersonか)的とキーボード・プログレ・ファンにも好評を博すだろう定番パートもしっかりあり、最後は如何にもなシンセとオルガンによる荘厳な楽曲で締め括られており、彼等の幅広い音楽的バックグラウンドが窺える実にバラエティ豊かな一枚だ。 Disc2は、9パートに分かれたコンセプチュアルな“Icons Suit”が収録されており、ほぼオール・インストのトータル58分に及ぶその内容は、組曲形式に次々と曲が流れて行く『静』と『動』の対比鮮やかなダイナミックな展開で圧倒する構成で、グレゴリアン・チャント、パイプオルガン、オーボエ、アコースティック・ギター等の多様な要素が駆使されるだけでなく、KING CRIMSON、EL&P、TRION等を彷彿とさせるフレーズも飛び出す、トラディショナルな70年代プログレ風味とクラシカル・シンフォニックが絶妙に溶け合ったキーボード主導による重厚で迫力あるサウンドは、大抵のプログレ愛好家に好意的に受け止められる事だろう。 とてもデヴュー・アルバムとは思えぬ二枚組110分を超える大作コンセプト・アルバムは、メンバー以外にオーボエ、フルート、ギター、コントラバス等のクラシック楽器のゲスト奏者が参加しており、同郷のICONOCLASTA、O TERCO、BACAMARTEをはじめ、YES、GENESIS、CAMEL、そしてEL&Pスタイルのシンフォニックなメロディと、KING CRIMSON風の折衷的トーンな硬質なギター、FOCUS、MAGMA等の伝統的ユーロ圏プログレ・サウンドだけでなく、繊細なアコースティック・ギター、流麗なピアノ、リリカルなリコーダー等が丁寧に紡ぐ精緻なアンサンブルから溢れんばかりに漂う『気品』は初期PFMを彷彿とさせ、CELESTEなどの70年代イタリアン・プログレ群の影響が窺える濃厚な美旋律や、少しネオ・プログレなタッチも匂わせつつEmersonスタイルなプログレ的パッセージと宗教音楽やバロック音楽等の本格感漂うクラシック色が見事に融合し大迫力で奏でられる様は精巧で優美な輝きを放つかの様で、さらにはTANGERINE DREAMのようなエレクトロニックな影響も随所で感じ取れる、アナログとデジタルを巧みに使った鍵盤楽器メインで織りなすサウンドはアレンジも良く練られており、豊かな響きと艶やかな音色でアルバム後半の組曲を彩るその意欲的な内容と圧巻のスケールは実に素晴らしく、メキシカン・シンフォの代表作と呼ばれるだけの事はある優れた一枚であります。 なんだか本作は重厚で小難しいシンフォ・サウンドばかりなイメージですが、クラシックなパッセージの最中に突如現れる軽やかで繊細なフォーク・ノートや、ラテン・フレーバー色濃いアコースティックなギター、そして荘厳でシンフォニックな教会オルガンやEmerson風の派手なキーボードだったり、一転してスペイシーで煌びやかな小気味よいシンセが飛び出して来たりと、総じて楽曲のディテールは複雑なもののネオ・プログ風なタッチや現代音楽的なモダンさも感じさせ、加えてアーバンテイストあるJAZZ風サウンドや、牧歌的な空気(Marco Coronaのギターが Robert Frippや Steve Hackettスタイルが多い為)が漂ったりと、ドプログレ一辺倒で無い落差と緩急あるサウンドが本作を非常に興味深いものにしているのは間違いない。 意外にキーボード・プレイ自体からはモダンで現代的な雰囲気も感じ取れ、Marco Coronaの音楽的バックグラウンドが次々と露わになっていく、そのセンス良いシンセを使ったプレイと情熱的で勢いあるサウンドは、多様で知的な、そして複雑で高い創造性を感じさせ、聴いていて非常に楽しいアルバムだ( ^ω^ ) Marco Coronaと Mario Mendozaが操るキーボードはデジタルとアナログの組み合わせで、アナログシンセやミニモーグも使われているが、エミュレートでメロトロンをはじめとする多種多様なヴィンテージ系キーボードによる70年代を彷彿とさせる音色を再現しており、アルバムで聴けるハモンドオルガンのサウンドに少しデジタリーな響きがある箇所(彼等はXB-2を使用し、クラシックなB-3は未使用)もあったりするが、全体的なアルバムのクオリティを著しく下げている訳ではないので、キーボードマニアな方はそういった点に注意して本作を聴いてみるのも違った楽しみ方の一つと言えるだろう。 ここまで絶賛しておいてなんですが、ゲスト女性ヴォーカリストを除くヴォーカル・パートのレベルは総じて『プログレだからOK』というC級レベルで楽曲の高いレベルと比べて著しく低く感じるし、独創性という点では70年代英国プログレ・バンド群やイタリアン・プログレ勢に大きく劣るのは否めないものの、バカテクでグイグイ押しまくるハイテク集団ではないアンサンブル中心にメロディ第一で歌心ある展開をするシンフォ・サウンドからは、若いながらもメンバー全員がしっかりとしたテクニック(ちょっとドラマーは腕が落ちる?)を持っている事が良く分かり、これだけ盛り沢山な内容ながらデヴュー作と思えぬ纏まりの良いアルバムな為、聴き終えた後の印象が実によろしいのが本作の評価を上げている一因なのではないでしょうか? メキシコシティのスタジオ Beet-Huumでエンジニアの Fernando Diaz氏によって徹底的にリマスタリングされた本作は、ボトムがアップされシャープさの増したクリアーなそのサウンドを聴くにリマスター効果の程をかなり実感出来、また本作の最大の目玉である追加された2つのボーナストラックは、1曲はフィメール・スキャットを追加した別ヴァージョン『Requiem(Alternate Take)』とプログフェス2000の前夜に超限定でリリースされたシングルCD『El Trenecito』で、メロトロンをタップリとフィーチャーしたこの一曲、約12分の為だけにでもオリジナル盤をお持ちの彼等のファンのみならずクラシカルなサウンドが艶光るUSシンフォ・ファンならば本リマスター盤をもう一度買い直す価値は充分にあると言えましょう(*´ω`*) CODICE Musicians: Marco Corona (Classic & Acoustic、12-String & Electric Guitars、Keyboards *、Bass & Vocals) Mario Mendoza (Keyboards *) Arturo Garcia (Bass David Martinez (Drums、Percussion) Luis Maldonado (Vocals) With: Marisa Calderon (Lead & Backing Vocals) Javier Ferretyz (Guitar solo) Ricardo Martinez (Moog & Yamaha Synths) Miguel Lawerence (Recorder) Marcela Alvear (Oboe) Arturo Guajardo (Voice) Juan Carlos Alvarez (Voice) Mario Mendoza (Voice) Ruben Martinez (Voice) * Roland D550/S10/MT32、Korg P3/M3R、Ensoniq Digital Piano、Emu、Hammond XB-2、Micro Moog 尚、バンドの公式フェイスブックがあるものの、結成から約25年が経過した事を記念しての回顧サイトらしく、各メンバーはそれぞれ活動を現在も元気に続けている、という事が明記されており、CODICEはメンバー各自にとって完全に過去の出来事となっている模様で、リイシューを記念しての再結成等は望み薄なのが残念だ('A`) 本作は限定盤という話は聞いていないが、そもそもメキシコ盤はプレス数がかなり少なく限られているのが常なので、もし本バンドのアルバムにご興味ある方はお早目にお求めになるのがよろしいのは間違いないでしょう。
by malilion
| 2020-12-30 17:29
| 音楽
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