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Jeff Scott Sotoが若かりし頃に在籍していたインディLAメタル・バンドPANTHERの唯一作。

Jeff Scott Sotoが若かりし頃に在籍していたインディLAメタル・バンドPANTHERの唯一作。_c0072376_15345296.jpgPANTHER 「Same」'18

新譜リリース情報を眺めていて Jeff Scott Sotoの新たなソロ・アルバムが前作『Retribution』から3年ぶりに本日リリースされた事を知り、購入前に前作を復習する為に聴いておこうかな、とラックを漁っていると本作が目についたので本日はコレを聴いておりました。

一時はJOURNEYのフロントマンも務め今やアメリカを代表するメタルシンガーの一人と言っても過言ではない Jeff Scott Sotoが、出世バンドである Yngwie J. Malmsteen's RISING FORCE加入以前に在籍していた、84年に結成されカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動した Mike Barrish(Guitars)率いるUSA4人組HMバンドが86年にリリースした唯一の6曲入りEPが2018年に4曲ボートラ追加&リマスターで待望のオフィシャル初CD化された、80年代USAメタル・マニア待望の一枚であります。

オリジナルのEP盤は今でもレア盤扱いで、本CDもマニア御用達レーベルのギリシャ No Remorse Recordsからのリリースで限定1000枚プレスだったのですが、現在でも比較的容易に購入出来る所を見ると、それ程HMファン、そしてYngwieファンや Jeff Scott Sotoファンには訴求しなかった模様ですね…まぁ、ドマイナーな存在だし、代表曲のようなものもありませんし妥当ではありますが(汗

彼等のサウンドは、SCORPIONS、IRON MAIDEN、JUDAS PRIESTといった当時流行っていたLAメタルよりも幾分か古典的なユーロHMバンドからの影響を受けた、AXEL RUDI PELL、Q5、DOKKEN、FIFTH ANGEL、LIZZY BORDEN、OBSESSION等のバンドがお好きな方になら訴求するかもしれない、妙な小細工の無いストレートで男臭いマイナーな正統派アメリカンHMサウンドでありましたが、当時の流行りのバブリーで煌びやかなサウンドと比べるとやはり華やかさやキャッチーさに欠けるのは否めないでしょう。

既にJeff Scott Sotoのヴォーカルはインディ・バンドのフロントマンと思えぬ安定感と力強さがあり素晴らしいものの、率直に言って楽曲の出来は特に目を見張るモノも無い、平均的なUSAインディバンドのアルバムより少し良いくらいの一枚、と言うのが現在の評価でそれは間違っていないと思いますね、私も。

実際、本作はアンダーグラウンドでヒット作となりロサンゼルスで最もホットなインディ・バンドの一つとなったが、レコーディング直後に看板だった Jeff Scott Sotoがさらなるキャリア・アップを求めPANTHERを脱退し Yngwie J. Malmsteen's RISING FORCEへ加入した為、後任に TJ Machなる新ヴォーカリストを迎え、さらにリズム・ギタリストに Jason Giridonoを迎え5人組バンドとして活動を継続するもののリズム隊もゴッソリと変わり、Mike Barrish以外のメンツを総入れ替えしてデモ音源を作成したが、結局メジャー・レーベルからお声は掛からず、歴史の闇へ消えていった典型的なインディ・バンドの末路を辿る訳で、そう考えると元メンバーの華々しい活動のお陰で後々に発掘された知られざる音源系の幻の一枚としては上物と言えるレベルの一枚ではあります。

当時話題を独占した飛ぶ鳥を落とす勢いの Yngwie J. Malmsteenのバンドに元フロントマンが在籍している、という事で多少はPANTHERのデビューEPにも注目が集まったのは間違いないでしょうが、残念な事にその話題の元ネタである Jeff Scott Sotoは本作リリース時には既に Yngwieバンドにその姿は無く、新フロントマンに Mark Boalsが加入して『Trilogy』を Yngwieが86年にリリースする訳ですから、なんともPANTHERにとっては面白くない状況だった事でしょう。

ツイてないバンドって、とことんツイてないんですなぁ…

で、本作の目玉である Jeff Scott Sotoのヴォーカルについてですが、その後のヴォーカル・スタイルと明らかに違う、所謂ハイトーン・ヴォイスを張り上げ、スクリームしまくる典型的なアメリカンHMに即したヴォーカル・スタイルと言え、後に彼の歌唱の特徴となるファンク・フィーリングや黒っぽい感覚が感じられない、良く言えば癖が無くストレートな、悪く言えばまだまだ未完成で青さの感じられるパワフルさも後の姿を幾分か既に彷彿とさせるもののまだまだ不足しがちで凡庸なヴォーカルを披露しているのが今となっては逆に新鮮に思えるのが聴き処とも言えるでしょう。

追加されたデモ音源でフロントマンを務める TJ Machのヴォーカルは Jeff Scott Sotoと比べてよりハイトーン系のパワー不足で線の細さやヨレを感じさせる、けれどLAメタル的な華やかなサウンドにはマッチしそうな甘みを感じさせる声質で、歌唱力は Jeff Scott Sotoに及びませんが、当時のインディ・バンドのフロントマンと考えれば特別悪い訳でもないレベルだと思います。

メンツ総入れ替えし、幾分か音楽の方向性を流行りのLAメタルに接近させ、Mike Barrishも頑張ってテクニカルなギタープレイをしてみせたりなデモ音源ですが、やはりコレ、という売りもキャッチーさも別段優れている訳でもない、消えるべくして消えていったインディ・バンドのC級音源レベルな、所謂マニア受け止まりなのは間違いありません。

また、待望のリマスター&オフィシャル・リイシューなのですが、マスターテープに問題があったのか、出だしの一曲目から即音がヨレて音量がダウンアップする不具合があって、その後も所々でサウンドに問題があるちょっとションボリな仕上がりのリマスター盤でありますので、オリジナル盤をお持ちの方は手放さない方がよろしいでしょう。

リマスターなのに、元々あまり音が良くなかったのか、少々篭り気味なサウンドは改善されておらず、さらに無理に音圧を上げたからかチリチリと耳障りな高音域でのノイズが気になるので…(´д⊂)

PANTHER Members:
Mike Barrish   Guitars
Jeff Scott Soto Vocals
Scott Taylor   Drums
Glen Davis    Bass

1988 Demo Tape Members:
Mike Barrish   Lead Guitars
TJ Mach     Vocals
Alex       Drums
Michael White  Bass
Jason Giridono  Rhythm Guitar

Tracklist:
01. First There Was Rock
02. Desire
03. Danger
04. Deliver The Axe
05. Warchild
06. Panther

Bonus track:
07. Set Me Free (Bonus track:Jeff Scott Soto Vocal)
08. Sheer Heart Attack (Demo bonus track)
09. Take It To The Limit (Demo bonus track)
10. When You?re In Love (Demo bonus track)



by malilion | 2020-12-06 15:20 | 音楽 | Trackback
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