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ロシアン・シンフォの雄 LITTLE TRAGEDIES(Маленькие Трагедии)が新譜をリリース!!

ロシアン・シンフォの雄 LITTLE TRAGEDIES(Маленькие Трагедии)が新譜をリリース!!_c0072376_14002626.jpgLITTLE TRAGEDIES 「Paradise Behind The Stove」'20

ロシアン・シンフォ・バンド LITTLE TRAGEDIESが、20世紀初頭の詩人 Nikolai Alekseevich Klyuev(1884-1937:旧ソビエト連邦の象徴主義者の農民詩人)や Sergei Alexandrovich Yesenin(1895-1925:ロシアの叙情詩人。20世紀ロシアで最も人気ある詩人の一人)の詩作をモチーフにした新たなコンセプト・13thアルバムを前作『At Nights』から5年ぶりにリリースしたのを、ちょい遅れてGTE!

デビュー時からのクラシック音楽や70年代ヘヴィ・プログレ、THE FLOWER KINGS、MOSTLY AUTUMN、WHITE WILLOW等のシンフォ系バンドからの影響が窺える非常にメロディアスな独特のシンフォ・スタイルに変化はなく、繊細で甘美なギターとロシア語のヴォーカルがエキゾチックに絡む楽曲には古典的な雰囲気が色濃く漂い、創設者でありバンマスでもある Gennady Ilyinが操る常に即興的なアクセントを加えた重厚でテクニカルなキーボードが主導する叙情感あるロマンチックな音楽には、どうしょうもなくロシア産バンドらしいクラシカルな香りが満ちている。

アルバム枚数を重ねる毎にますますサウンドのスケール感がアップし、壮大で重厚になっていくクラシカルな香り漂うシンフォニック・サウンドだが、本作ではバンドメンバーが6人に増強され、さらにトランペット、トロンボーン、チューバ、バグパイプ、といったゲスト奏者をフィーチャーしつつ、メンバーが演奏するサックスの音色も随所でタップリ鳴り響かせており、いつになく艶やかで壮大、そして華麗にして重厚なサウンドには気品があふれており、これには長く新譜を待たされたファンも文句なくニッコリだろう(´ω`)

前述の詩人達に影響を受けたからか、10月革命後の思想や北ロシアの農民文化などメッセージ色や民俗色が強く感じられ、ロマンチシズムを背景にした切なくミステリアスな音楽のコンセプトがそうなので仕方がないかもしれないが、詩を歌詞に反映させる為か歌というより語りのような囁く言葉数多い無理くりな歌詞が、非常に滑らかなメロディに乗り切っておらず終始違和感があり、このポイントは本作の評価の是非に大きく関わる要因になりそうでもある。

まぁ、元々さして上手くないヴォーカルパートはオマケ的な扱いであったし、歌えていないC級レベルなのが本バンドの最大の欠点(わざわざ新加入させた専任ヴォーカルなのに…)だと思うが、インスト多目なプログレ系では良くある事だし、これだけキーボード・サウンドの洪水を浴びせ続けられるサウンド形態だとヴォーカルの存在感なんてハナから殆ど無いも同然(汗)なので、そこまで大きな問題になってない感はありますけどね。

唯一の救いはゲストで女性ヴォーカルがオペラチックにその艶やかな美声を響かせるパートもあったりで、クラシカルなシンフォ・サウンドに華を添えており、フィメール・ヴォーカル嫌いな自分でさえも、このバンドのヘッポコ・ヴォーカルを聴くくらいなら彼女の美声をもっと聴いていたいと思ってしまいましたから…('A`)

その点だけに目をつぶれば、オルガンやシンセサイザーをはじめ、時に甘美なメロディを紡ぐ鍵盤類を操る技術力と解釈の繊細さや、時にスリリングなハードエッジを聴かせるギターのツボを心得たプレイ、息苦しささえ覚えるテンション高目な技巧派リズムセクションの切り返しの数々と、音符と音階の連続とハーモニーは非常に緻密で複雑なものの、それ等が渾然一体となって不可能じみた精度と圧倒的なスピードで交差し、優雅な美旋律と格調高いクラシカルなシンフォニック・サウンドへ昇華する様は、言葉に表せぬ程に美しく調和が取れており、その魅力的で美しいサウンドの全てが軒並みシンフォ・ファンを興奮させ、湧き出すアドレナリンを止める事がは出来ぬ程に夢中にさせるだろう。

やはりと言うか、当然と言うか、Gennady Ilyinが見せる長いクラシック・ピアノ・ソロは美しく、本当に印象的で絶品であります(´ω`)

前作と比べるとコンセプト故かEL&PとU.K.をMIXしてモダンにパワーアップしたようなサウンドやロック的エネルギッシュなアンサンブルが切り込んでくる展開の妙は少なく感じますが、それを補って余りあるクラシカルで気品溢れる美旋律が満載なシンフォ・サウンドが優雅に艶やかに展開されておりますので、同路線のサウンドを聴かせる東欧ハンガリーのAFTER CRYINGファンや壮大なキーボード主導なシンフォ・ロックが好きな方は是非本作をチェックして欲しいですね。

尚、本作は複数メディアでのリリースが成されており、CD盤、カセット(!)の他にオープンリールテープ版(!?)がある変わり種の一作となっているので、そちらのマニアな方もチェックしてみるといいかもしれない。


LITTLE TRAGEDIES Members:
Gennady Ilyin      (Kyboards、Voice)
Alexander Malokhovsky (Guitar)
Alexey Bildin       (Soprano Saxophone、Tenor Saxophone)
Oleg Babynin      (Bass)
Yuri Skripkin      (Drums)
Dasha Reznik      (Voice)

With:
Alexander Volobuev   (Pipe)
Alexander Mamontov   (Trumpet)
Andrey Konchakov    (Tuba)
Alexey Snitkin      (Trombone)



by malilion | 2020-12-01 13:52 | 音楽 | Trackback
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