![]() “スイスのYES”こと変則トリオ・バンドWELCOMEの79年作2ndアルバムが今回初CD化され1stと合わせて国内盤でリイシューされたのでご紹介。 リイシュー自体は目出度い事なれど、CD化にあったて曲順が変えられているが再発モノ定番の未発音源等の追加は無く、SHM-CDでリマスター&紙ジャケット仕様というだけで三千円超えというボッタクリ価格には正直閉口する。 まぁ、マイナーな70年代スイス・プログレ・バンドの音源を再発してくれた事はありがたいが、この価格設定は如何なものかと思いますね。 阿漕な事ばかりして、遠くない将来に自分で自分の首を絞める事にならなきゃいいですけど… ~閑話休題~ 彼等のアルバムは海外レーベルからのリイシューが97年に一度成されているが、YES的なサウンドで有名な1stアルバムのみの再発となっており、80年代突入寸前の時代を反映してかよりポップなサウンドになった2ndアルバムは、その存在を知られるのみで一度もリイシューされる事無く今日を迎えるに至っておりました。 まぁ、ブートまがいのCDはあったかもしれませんが、オフィシャルでの2ndアルバム再発はこれが初となっております。 76年発表のデビュー・アルバムの切れの良い演奏と印象的なメロディの楽曲展開を聴くに、この時期のスイス産プログレ・バンドとしてはかなりの高水準なのは確かで、Chris Squire張りのゴリゴリした野太いベースと忙しないリズム・セクションをバックに雄大に広がるメロトロンや、荒々しく唸りを上げる攻撃的なオルガンとシンセサイザーの絡みはエネルギッシュで格好良く、そしてクラシカルなキーボードのメロディはちょっとオランダのTRACEを思わせ、終始3人がリード・ヴォーカルを取りキャッチーで清涼感ある分厚いヴォーカルハーモニーを披露する所も相まって、キーボード・オリエンテッドなサウンド形態のYES直系シンフォニック・サウンドと言えるだろう。 と言っても、只の『Close to The Edge』『Relayer』期のYESのコピー・バンドと言う訳ではなく、効果的に配されたワウギターや突如ソロを取り始めるベーシストとドラマーによるギターは初期EL&Pっぽい所もあり、一糸乱れぬ重厚なアンサンブルと攻撃的なサウンド・テクスチャーの数々、そして精緻な技巧に裏打ちされたドラマティックな楽曲展開はスイス産バンドならではの特色と言えるかもしれない。 サウンド的には英国のプログレ・バンドDRUIDと同様にYES・コピー系に分類されるサウンドなれど、メンバーが三人なので必然的にYESまんまのサウンドにならなかったのが幸いしたように思え、スイス・バンドらしい清涼感と本家に無い伸びやかさがシンフォニックなサウンドに有り、それが独自性に繋がっているように思う。 ギター兼ベース、キーボード、ドラムスという変則的トリオ編成で1stアルバムは制作されており、続く本作でも変則編成なのは変っていないが、ベーシストを Francis Jostから Helmi Erdingerに交代して制作されている。 また、本作の制作直後にギタリストが加入し、後に四人組体制で初となる3rdアルバムの制作に入ったらしいが、程なくしてメンバーの半分がバンドを脱退した為にその音源がどれ程の完成度だったのか不明だし、結局バンドは解散してしまった為に未だにその音源は陽の目を見ていない。 いつか発掘音源等がリリースされるといいですねぇ(*´ω`*) さて、79年リリースの本作についてだが、デヴュー作がレーベルからのサポートを満足に受けられなかったのも関係してかセールスは芳しくなく、そういった創作面以外での状況や刻一刻と移り変わる音楽業界の時流を考慮したのか、レーベル移籍して制作された本作はメンバー・チェンジしたのも良い契機と捉えたのかYES風味の濃かったデヴュー作よりポピュラーなロックへ接近したサウンドへと作風を変化させている。 大雑把に言って1stの作風を継承した大作を二曲のみ収録し、それ以外はキャッチーなヴォーカル・メインのコンパクトでポップなサウンドの小曲で構成されたアルバムで、ベーシストの Helmi Erdingerのプレイから Chris Squireっぽいカラーが消えたのと、全体的にキーボードの音色や随所に配されたシンセが清涼感ある音色になってデヴュー作のような重厚さや攻撃性は感じられず正反対な軽快さを感じさせるGENESIS風な幻想風味あるサウンドへ変化しており、ヴォーカル・パートからもYES風ハーモニック・ヴォーカルが減って Bernie Krauerのハイトーン・ヴォーカルをメインに配した構成になり、さらにシンプルにアコースティックなギター・ワークが大変心地よいポップス寄りな使われ方(Steve Howe張りな屈折した引っ掛かりあるプレイではない)をしていて、前作のド迫力なメロトロンが暴れまくる技巧派なYES直系サウンドを期待していた当時のプログレ・ファンを失意のドン底に叩き落した事だろう。 まぁ、不幸中の幸いだったのはデヴュー作は余りにもマイナーな存在で殆ど知られておらず、本バンドは2ndからようやくシーンに認知されだした訳だから、そうしたプログレ系ファンからの怨嗟の声は少なかったでしょうけどね(汗 ただ、オリジナリティという点で見ると明らかにYESからの影響が強すぎたデヴュー作より、GENESIS風味やEL&P風味が強まり、さらにポピュラー・ミュージック寄りな要素をMIXしたサウンドを聴かせる本作の方が、音楽的には後退しているかもしれないが明らかに独自性は高く思え、幻に消えた3rdアルバムで一体どんな進化を見せたのか実に興味深く、本作を最後にバンドが消えてしまったのが残念であります。 本作で聴ける軽快でポップス寄りなプログレ風味香るサウンドは、ある意味でじきに到来するプログレ冬の時代にビッグネーム・バンド達が取り組む事になる売れ線を考慮したプログレ・サウンドの走りとも言えるので、彼等の2ndアルバムのアプローチはリリースされるには時代が早すぎた、という捉え方も出来るかもしれません。 本作最大の売りである、それぞれ7分、17分を越える二曲の大曲は、前作の作風を更に洗練させ、荘厳化した、シンフォニック・レベルを最大限に高めた『正にこれぞプログレ!』というサウンドなので、YES、EL&P、ENGLAND、Chris Squireのソロ・アルバム等がお好きな方ならチェックしても決して損をする事はないので、ご興味あるようでしたらオールドスクール・プログレな本作をチェックしてみてはいかがでしょうか? 前回の海外リイシュー・デヴュー作をお持ちの方も、今回のリマスター・バージョンの方が明らかにサウンドがクリアで音圧もアップしておりますので、懐具合に余裕があるようでしたら是非チェックしてみて下さい。 Bernie Krauer (Lead & Backing Vocals、Hammond RT2 Organ、Bosendorfer Grandpiano、Wurlitzer Electric Piano、Mellotron、Hohner D6 Clavinet、Mini Moog、Oberheim Synthesizer、Hohner Harmonica) Helmi Erdinger (Bass、Backing Vocals、Electric & Acoustic Guitars、Xylophone) Tommy Strebel (Drums、Backing Vocals、Percussion)
by malilion
| 2020-11-02 16:34
| 音楽
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