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Neil Fraser率いるブリティッシュ・メロディアスHRバンドTRISHULAが本格始動で2ndアルバムをリリース!!

Neil Fraser率いるブリティッシュ・メロディアスHRバンドTRISHULAが本格始動で2ndアルバムをリリース!!_c0072376_13455994.jpgTRISHULA 「Time Waits for No Man」'20

英国のローカル・ロックバンドBROADSWORDの元ギタリストで、TENの『Stormwarning』'11 への参加や、元TENのキーボーディスト Ged Rylands率いるRAGE OF ANGELSへの参加、ポルトガルのHRバンドSCAR FOR LIFEへのゲスト参加、そして Tony Millsを始め他ソロ・アーティスト作への参加やソロ・ギターアルバムなど多岐に渡って活動しているイギリス人ギタリスト Neil Fraserが率いるキーボード入り5人組ブリティッシュ・メロディアスHRバンドTRISHULA(トリシュラ)の2ndがリリースされたので即GTE!

Neil Fraserを中心に2015年に結成され19年にデヴュー作『Scared To Breathe』をリリース(AOR HEAVENリリースなのにゴシックホラー系みたいなタイトルとジャケデザイン…)しており、1年ぶりとなる2ndが早々にリリースされた訳だが残念ながらバンドメンツは大幅に入れ替わっている。

そもそもデヴュー作時点で Neil Fraserがギター、ベース、キーボードと兼任し、後はヴォーカルとドラマーの三人編成でアルバムが制作されていたので、実質的にはバンドというよりソロ・プロジェクトとしてスタートしたのは間違いないだろう。

バンドとして本格な始動を見据えたのかメンバーを補強し、シンガーは前作から引き続きウェールズ出身の Jason Morgan(ORANGEFALL、RAGE OF ANGELS)だが、他はボスの Neil Fraser(Guitars、Keyboards、Backing Vocals)と、ドラムスに Neil Ogden(DEMON、USI、LAWLESS、DIRTY WHITE BOYZ、FM、CHANGE OF HEART、Steve Overland、PERSESIAN RISK、etc...)、ベースに Dan Clark(UXL、Tim Jenks Band、REBECCA DOWNES)、キーボードは前作でもゲスト参加の Rick Benton(THE EAGLES、STATUS QUO、John Mayer、Paul Young、SPYRO GYRA、Shaggy、Kim Wide、SKINDRED、MAGNUM) という錚々たるメンツが名を連ねている。

ただ、なかなかに強力なキャリアを誇る猛者達をバックに従えてバンド体裁を整えてはいるものの、殆どがセッション主体なミュージシャンか他バンドとの掛け持ちメンバーばかりなので、実質的にはまだまだ Neil Fraserのソロ・プロジェクト的な意味合いが強いバンドだと予想出来てしまうのが、ちょっと悲しいですね…(´д⊂)

前作は Neil Fraserの弾くブルーズベースのハードエッジなギター・サウンドをメインに据えつつ、オーセンティックながら英国らしいウェットで叙情感あるほんのりポップなメロディとアレンジが随所で80年代の雰囲気が漂うクラシックなブリティッシュHRスタイルの楽曲を引き立てており、新人バンドらしい奇をてらうトリッキーなプレイや楽曲展開、スリリングさや無鉄砲な勢いは無く新鮮な驚きは少ないものの、反面ベテランらしい楽曲の緩急のつけ方や、堅実な楽曲の出来の良さ、ツボを心得たキーボード・アレンジと控えめな鍵盤さばき、そして随所で垣間見せる弾き過ぎぬテクニカルでコンパクトなギター・フレーズ等が実に味わい深く、古き良きブリティッシュHRバンド達を思わせるノスタルジックさを漂わせたブリティッシュ・メロディアスHRサウンドが詰まった会心の一作でありました。

続く本作は、煌びやかなメロディと伸びやかなヴォーカル・メロディが特徴なのは変わらず前作と同一路線なものの、猛者揃いのプレイヤー達の素晴しい演奏がバンドサウンドを一段上のレベルへ押し上げており、前作で感じられたノスタルジックな80年代風味は薄れてより現代的なアプローチでモダンなタッチが加わった楽曲は洗練され、前作以上に幅広いジャンルの音楽要素の断片を垣間見せつつスタイリッシュにまとめあげられた、英国風な憂いある美旋律が詰まった心くすぐるブリティッシュHRサウンド作となっている。

Hank Marvin、Ritchie Blackmore、Gary Mooreなどのギタリストに影響を受け、十代の頃から様々なバンドに参加し、JAZZ、ファンク、アコースティック、HM等の幅広いジャンルに即したギタープレイを繰り広げてきた Neil Fraserのこれまでの経験が本作の幅広いサウンド造りに活かされているのは明らかで、70年代ブルーズHRサウンドをベースにしつつ、ソリッドなパワフルさと英国らしい哀愁のメロディを交差させフィーリングたっぷりに七色の美旋律を紡ぎ出す様と、Jason MorganのHAREM SCAREMの Harry HessとTENの Gary Hughesを足して二で割ったようなミドルレンジ主体の伸びやかでエモーショナルな歌声が憂いのブリティッシュ・サウンドによくマッチしており、Rick Bentonの職人的キーボード・プレイと煌びやかなシンセ・サウンドが合わさって、80年代ブリティッシュHRサウンドがシャープでスタイリッシュな今風の装いに仕立て直されたかのような、なんとも言えぬ味わいとほんのり新鮮味を感じさせる楽曲に仕上がっているように思えます(*´ω`*)

前作からのこの大きな変化は、やはりリズム隊がしっかりと専任プレイヤーに任された故か、芯が図太くソリッドでパワフル、それでいてしなやかに弾け踊るリズムが実に心地よく、幾分か平坦だった前作のリズムパートと違い様々なリズムアプローチや絶妙の緩急を生み出しており、相乗効果的に Neil Fraserの弾くギタープレイにも伸びやかさと鋭さが増して感じられ、プロジェクト作と違いバンド作ならではの各メンバー間のやり取りから生み出される爽快感と熱いフィーリングを伴ったオーガニックな共振が楽曲を一層に輝かせているのは間違いない。

また、Jason Morganのヴォーカル・アプローチにも変化が窺え、前作では随所で聴けたガナリ的歌唱パート(ココがちょっと Harry Hessッポク聞こえてた)が消え、良い意味で“力み”のようなものが抜けており、前作はニューウェーブ風味もチラリと垣間見えるブルーズベースなHRサウンドに合わせソウルフルな熱唱に喉を震わせていたように思うが、本作ではモダンなフィーリングが増えたサウンドに合わせてより自然でクリアな歌声を披露したり、前作以上にハイトーンの滑らかな歌声をフィーチャーしたパフォーマンスを見せており、これは Neil Fraserとのコンビネーションが一層に進みTRISHULAというバンド・コンセプトへの理解が深まったのとバンドサウンドがより今風に発展したが故の変化とも言えるのではないだろうか?

そして、Neil Fraserのギタープレイからノスタルジックさを漂わすブルーズ臭が薄れ、幾分ハードエッジでメタリックな感触が減退し、よりAORやフュージョン・サウンドへ接近したクリアトーンの流麗なギタープレイを多用するようになったのは、楽曲の完成度と洗練度が向上したのと、随所で耳を惹く Rick Bentonの操る涼やかで華麗なデジタリーなキーボード・サウンドの割合が大きくなったのが一番の理由に思え、Neil Fraserがギタリストとしてでなくリーダーとしてバランスを考慮して哀愁を漂わす楽曲をしっかりコンポーズしている様は、リーダーバンドだからと弾き倒ししがちなギター小僧には出来ぬ押し引きを弁えたベテランならではの余裕だろう(*´ω`*)

前作はAOR要素は薄めで寧ろノスタルジックなブリティッシュHR要素が強い、どちらかと言うとAOR HEAVENカタログ的にはハード目なサウンドに属するアルバムで少々心配しておりましたが、本作は無事AOR要素が増してブリティッシュHR特有なブルーズの臭みが薄れ、如何にもAOR HEAVENリリース作といったモダンでスタイリッシュなメロハー・サウンドへ接近しておりますので、前作がピンと来なかったメロハー・ファンの方でも本作は楽しめるのではないでしょうか?

個人的には前作の如何にもブリティッシュHRという湿り気を帯びたブルーズベースな泥臭いサウンドが好きでしたが、まぁ、Neil Fraserの目指す先が70年代でも80年代でもない『今』なのだと、雄弁に本作のモダンなメロハー・サウンドが語っておりますのでそこは仕方がありませんね(汗

TENやHEARTLAND、それからRAINBOWをはじめ数々の古典英国HRバンドが好きな方にもデビュー作から是非チェックしてニヤリとして欲しい、ブリティッシュ・メロディアスHR界期待の新バンドであります。

TRISHULA Members:

Neil Fraser    (Guitars、Keyboards、Backing Vocals)
Jason Morgan  (Lead Vocals)
Rick Benton   (Keyboards、String Arrangements)
Dan Clark    (Bass)
Neil Ogden    (Drums)


by malilion | 2020-09-30 13:39 | 音楽 | Trackback
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