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メロトロンを果てなくフィーチャーしたスパニッッシュ・シンフォ・ユニットがカタルーニャからデビュー!!

メロトロンを果てなくフィーチャーしたスパニッッシュ・シンフォ・ユニットがカタルーニャからデビュー!!_c0072376_16425759.jpgSCALADEI 「The Swing Of Things」'20

スペインはカタルーニャ州タラゴナ県のムニシピオ(基礎自治体)を拠点に活動する、HARNAKISとDOCTOR NOの元メンバーが新たに立ち上げたシンフォニック・ユニットが自主盤デビュー作をリリースしたのでご紹介。

既にデジタル先行で楽曲は幾つか公開されており、アルバムも去年末に配信されていたが現物がリリースされるのは今回が初めてとなっている。

ただ、インディのシンフォ・バンド定番なCD‐R製でのリリースなのが少々残念ではあります…orz

元々、DOCTOR NOは Enric Pascual(Vocals、Drums、Keyboards)とベーシストのデュオ体制で03年デビューし、その後ギタリストとキーボーディストを補充してバンド形態になって2枚目のアルバムを11年にリリースしたので、今回相方がベーシストからギタリスト Santi Calero(Electric & Spanish Guitars)に変わって活動を開始した、と捉えられなくもないかもしれない。

と、言うか知らない間にDOCTOR NOは消滅していたんですね(汗

まぁ、2009年に制作されていた2ndがレーベル消滅の煽りを食らって2年越しでやっと2011年にリリースされた劣悪な状況でしたから、もうずっと前からバンドは既に存在していなかったのかもしれませんが…

で、80年代初期SIポンプ風のヘッポコ・シンフォを聴かせていたDOCTOR NOからどのような発展変化があったのかが注目点だが、美しいメランコリックなメロディと多くのネオ・プログレッシヴ・バンド群からの影響を取り入れた叙事感あるサウンドを、これでもかと徹頭徹尾メロトロン&ストリングスを大々的にフィーチャーし、初期MARILLION風なダークでファンタジックな雰囲気とドイツのプログレ・バンドELOYを彷彿とさせる壮大なスペクタクルを感じさせるシンフォニック・ロックをMIXさせ、パワーとメロディーに満ちた演奏を堂々と繰り広げており、以前の安っぽさは完全に払拭された重厚感あるそのシンフォ・サウンドには少々驚かされました。

当時から Enric Pascualのヴォーカルはお世辞にも上手いと言えぬB級に片足突っ込んだヘッポコC級レベル(元々HARNAKISではドラマーだったしね…)なままだが、本作では見違えるような鍵盤捌きを披露(鳴らし過ぎな感がアルけど…)しており、プログレ的な技巧派リズムパートでもしっかり自己主張していて、伊達に十年を超える活動を続けてきた訳でない証とばかりにしっかりとスキルが向上したインストゥルメンタル・パートで叙情感タップリなヘヴィサウンドを轟かせているのは流石の一言だ。

見逃せないのは、以前は情熱のラテン系ブラジル・シンフォ勢に近く感じた Enric Pascualがクリエイトするサウンドが、Santi Caleroの拙いながらもウェットなメロディを奏でる“泣き”のギターの影響故か、MARILLIONやPENDRAGONっぽいユーロチックな美旋律とリリカルなピアノや重厚なメロトロンと荘厳なストリングスが交差する様は、他のユーロ圏のバンド達が放つクラシカルでエレガントな響きが少ない独特な風味を醸し出しつつユーロ・シンフォニック・サウンドへ大接近しており、Enric Pascualの持つマイナス要素を上手くSanti Caleroが薄めて違う魅力へ昇華したように思え、HARNAKIS以来となる二人のコラボは大成功だったと言えましょう。

この絶妙なアルバムを構成する楽曲は、父親への思い出や子供への愛情、そして青春の性の情熱まで、Enric Pascualが個人的なテーマを心の赴くままに語っていて、洒落た歌詞などでの商業的な成功だとかを一切考えていない自由奔放さが、如何にも内省的な歌詞を好むプログレチックな自主制作盤と言った感じの作品だ。

Enric Pascualが語る所によると『アルバムを制作した二人は様々な音楽の影響を受けているが、やはりYES、GENESIS、CAMEL、PINK FLOYD等の、70年代の英国クラシック・プログレを愛する者であるという点で一致している』
『また、LED ZEPPELIN、RAIBOW、IRON MAIDEN等の英国HRバンドからもお互い影響を受けています』と、言う事らしい。

自身の音楽を『情熱を持って心で作ったロック。ギターソロをお探しの方や、ピアノ、スパニッシュ・ギターを聴きたい人の為の音楽。プログレッシヴなタッチのアンダルシアン・ロックをミックスしたようなロックだ』と語っている。

メロトロン大フィーチャーというと暑苦しいパッション渦巻くオペラチックなイタリアン・ヴィンテージ系シンフォか、クールで荒涼としたクリムゾンチックな北欧ヴィンテージ系シンフォに近いサウンドになると相場は決まっているものですが、本作はそのどちらとも言えぬ、仄かなスペイシー感と北欧系を思わせる冷ややかな爽快感、それでいて陰鬱とした翳りと不穏さもそこはかと感じさせる非スパニッシュ風(重要!)の独特な叙情感漂うスタイルで、なんとも形容しがたい朴訥とした味わいと隠し切れぬ不器用さがスタイリッシュでモダンな最先端のシンフォ系とも距離を感じさせ、意図してではないだろうがなかなか他で聴けぬサウンドとなっている点が実に面白く思えます(*´ω`*)

また、ネットでは三名のメンバーが並ぶフォトが公開されており、アルバムリリース後にメンバーが加入した模様(アルバムクレジットでもメンバーとして名を連ねている)で、現在はギターの Santi Calero、ベースの Samuel Calero(ギタリストの実子)、ヴォーカル、ドラム、キーボード&メロトロンの Enric Pascualからなるトリオ編成となっているようだ。

まぁ、旧友からの誘いでアルバムへ参加した Santi Caleroの息子さんがヘルプで一曲ベースをプレイしたら、そのまま正式メンバーへと昇格した、ってなありがちなパターンですね。

とは言え、この編成のままではLIVE活動は不可能なので、サポートメンツを迎えるか、さらなる新メンバーを迎えるかしてバンド活動を継続するものと思われ、っていうかちゃんと活動を継続して欲しいですね…DOCTOR NOやHARNAKISはアルバムをリリースしたものの、やはりスペインという地理的な問題故かシンフォ系バンドは活動が長続きしないので…(´д⊂)

因みに、このカタルーニャ人達によるバンド名は、Montse Roigeによる Priorat catalanの Scaladei修道院からその名を頂いており、アルバムジャケは Enric Pascualが手掛けた写真を使っている。

なんだかんだ言いましたが、極上のB級シンフォまでもう一歩のところまで来ているのは間違いないので、出来ればもうちょい歌の上手いフロントマンを招き入れるかしてサウンドの質の向上を図れれば、ワンチャン大手メジャーとはいかずとも大手インディ・レーベルから声がかかるくらいのレベルにはなっていると思うので、その辺りの問題点を解決する方向で活動を継続させて欲しいものです。


SCALADEI Members:
Enric Pascual(ex:HARNAKIS、ex:DOCTOR NO): Vocals、Drums、Keyboards、Mellotron
Santi Calero(ex:HARNAKIS): Electric & Spanish Guitars

With
Samuel Calero: Bass (Track 3)
Peter Fischer: Guitar (Track 1)

PS.
今回リリースのR盤はDL版よりボートラ追加で2曲多いので、音源マニアな方は是非現物をGETしましょう。

また、もう一つの別名新バンドEL PUENTE DE PASCALのデビュー作にも『The Swing of Things』のスペイン語(カタルーニャ語)ヴァージョンが収録されているので、本作が気に入った方はもう一方のバンドもチェックしてみるといいかもしれない。

本作と違い非英語だからか、心なしか Enric Pascualのヴォーカルも上手く感じる(w)し、サウンドの方も一般的な分かりやすいキーボード・プレイをフィーチャーしたイタリア風味もあるスパニッシュ・プログレルな上、何故か Santi Caleroのギターも生き生きしてるという…(汗

そして意気揚々と Enric Pascualが現在EL PUENTE DE PASCAの2ndを録音中と語ってるけど、あれれ? SCALADEIは? もうお終いなの?(汗


by malilion | 2020-09-22 16:37 | 音楽 | Trackback
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