SARIS 「Beyond The Rainbow」'20
Derk Akkermann(G&Key)率いる男女ツインヴォーカルを擁する5人組ドイツ産メロディック・ハード・プログレ・バンドの再結成後4作目となる3年ぶりの5thアルバムを3面開き限定デジパック仕様でGET! 何かとメンバーチェンジが多いバンドですが珍しく前作と同じメンツで制作されており、それが良い影響を与えたのか久しぶりの新譜である本作は前作以上のスケール感あるサウンドと安定感あるテクニカルなプレイ、そして重厚なコーラスがフィ-チャーされた素晴らしい出来映えであります。 本作は大雑把に言って前作と同一路線をさらに推し進めたサウンドと言え、ちょっと聞きプログハードバンドと思えぬ程に男女混声の分厚く美麗なコーラスパートをたっぷりフィーチャーしたキャッチーな歌メロが耳を惹くポップサウンドだが、イントロ等でホンプチックなシンフォニック・キーボードを響かせつつハードエッジなギターが随所でスリリングなメロディを奏で、ここぞと言う所で壮大で重厚なオーケストレーションを導入するなど初期からの叙情的でクラシカルな美旋律を保ちつつ効果的に荘厳さやプログレ的複雑な演出を見せつける等、色々と欲張りな要素を詰め込んでいるものの、非常に良くコンポーズされた完成度の高い素直に格好良いサウンドとなっている。 メロディ楽器であるギターとキーボードをリーダーでありベテラン・ミュージシャンである Derk Akkermannが掌握しているからこそなのか、中期SAGAばりにキャッチーなメロディとテクニカルなインストゥルメンタル・パートが立体的に交差する美しくもメロディアスなサウンドに終始彩られたそのサウンドは、ハイテクなインタープレイが飛び交うシンフォ&プログレ系的観点で言うと地味な部類かもしれませんが、良く練られたアレンジの効いたギター・フレーズやプレイ、そして表に裏に大活躍なキーボードの導入され方等、メインパートであるヴォーカルを阻害する事無い気配りと細心の注意が払われているのが分かり、派手さやテクニカルなプレイに頼らぬ熟練のミュージシャン達が繰り広げる深みある表現力と老獪な調べの数々を楽しめる良作と言えましょう(*´ω` *) SARISを際立たせているのは、パワフルで多才な男性ヴォーカルとソウルフルな女性ヴォーカルという2つの異なるアプローチのシンガーをフィーチャーしつつ、Henrik Wager、Anja Gunther嬢、Lutz Guntherの三名が織り成す男女混声ヴォーカルがメインなサウンドスタイルなのは間違いなく、以前トリプル・リードヴォーカル体制だった事もありましたし、本作に至ってはゲストでバッキングヴォーカリストを6名も招いて重厚にしてオペラチックなコーラスパートを構築するなど、Derk Akkermann的には分厚いヴォーカルパートはSARISサウンドに必須な要素と考えているのだろう。 Musicians: Derk Akkermann (Guitars、Keyboards) Henrik Wager (Lead & Backing Vocals) Anja Gunther (Lead & Backing Vocals) Lutz Gunther (Bass、Backing Vocals) Jens Beckmann (Drums、Percussions) With: Lena Hulsken (Backing Vocals) Annika Plackert(Backing Vocals) Laura Lutze (Backing Vocals) Joana Soballa (Backing Vocals) Sven Wobser (Backing Vocals) Nils Jischewsky(Backing Vocals) 前作の時にも感じられたが、キャッチーで爽快感あるサウンドはどこか生真面目で重厚な鈍色サウンドがイメージのドイツ・プログレ好きな方からすると余り好ましくないのかもしれないが、SAGAなどのカナダモノに近い柔和さと雄大なスケール感を漂わすドラマチックでありながら適度にポップなサウンドはインディベースで活動するバンドと思えぬ程にメジャー指向が強く、前作を気に入った方やASIAやSAGAのようなポップだけれどしっかりシンフォやポンプ風なキーボードやテクニカルな楽器パートがフィーチャーされたサウンドがお好きな方ならばきっと本作も好ましく感じるに違いありません。 まぁ、昔からドイツではSAGAやSWEETなどのキャッチーなヴォーカルメインなバンドが好まれていた事もありますから、そういった要素を兼ね添えたシンフォ系バンドが出てきても(実際、90年代ドイツにはキャッチーなヴォーカルメインなポンプバンドも多かった)少しも不思議ではないんですけどね(*´ω` *) 因みに本作はコンセプト作となっており、人生経験から得られる様々な教訓やエピソードをテーマとしてアルバムは綴られているが、コンセプト作特有な小難しいイメージはサウンドに欠片も無く、メロディアスなプログレ・サウンドにHR風リフとAOR風ヴォーカルを融合させたサウンドは終始キャッチーなメロディとエンターテイメント性に満ちており、言われなければコンセプト作と気がつかない程だろう。 プログレ系と言うと大抵はインストパートの割合が楽曲上で大きく、だからこそプレイヤー指向の強いグレ系ファンの注目を集める部分でもあるのですが、SARISは間違いなくヴォーカルパートをメインに据えた楽曲スタイルなのでソレ系を求める向きには少々お薦めし難いものの、複雑で分厚いコーラスとネオプログレ的なドラマチックなインストパートでダイナミックなサウンドを紡ぎ出し、オーケストレーションも加えたクラシカルなキーボード・プレイが壮大なスケール感を演出する、Derk Akkermannによる効果的な絶妙のアレンジ力と七色に変化する印象的なキーボードの音色、そして楽曲にフックを生み出し惰弱になりがちなコーラスメインのサウンドを引き締めるハードなギターリフが美しい調和と対比を生み出しながら物語を綴っていく様は、ユーロ圏バンド特有の叙情感を伴って美しく眩いており、多少毛色は違えども間違いなくシンフォ&プログレ系バンドと言えるサウンドだと思っとります(*´ω` *) 所謂一般的なシンフォ系やプログレ系のカテゴライズで紹介すると誤解を招きかねない分厚いコーラスが思い切りフィーチャーされたサウンドなのかもしれませんが、ポップ寄りなグロプレサウンドもいける、って方は是非とも本バンドをチェックしてみて欲しいですね。
by malilion
| 2020-06-20 15:58
| 音楽
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