H.E.R.O. 「Bad Blood」'20
デビュー前から二度も来日(!?)し、既に三度の来日をも果たすなどメジャーから鳴り物入りのデビューで注目な、デンマーク産ポップ・ロック・トリオの前作から一年ぶりとなる2ndがリリースされたのを遅れてGET! 前作『Humanic』も新人バンドのデビュー作と思えぬ造り込みとコンパクトでキャッチーな楽曲の出来は素晴らしかったが、個人的にはポップでシャレオツ過ぎる感触が強く、MAROON5やDIRTY LOOPSと同じ系等(ヴォーカルの黒っぽいファルセットとか、ね)を狙ってるっポク思え、幾分かメロハーやHR要素が強くなった本作の方が好みなサウンドだ。 まぁ、それでも十分にポップ畑の磨き抜かれた人工サウンドだし、個人的にはもっとバランスの崩れたサウンドの方がロックっポイ衝動を感じる生々しいサウンドで好みだけど、これだけ高品質でプロフェッショナルなサウンドにケチはつけられないだろう(汗 個人的にはまだまだ荒削りでダークな屈折した感情が渦巻いていたデビュー作である6曲入りEP『H.E.R.O.』のサウンド(EP収録曲は全て国内盤1stに収録。但し、EP音源とは違う模様)が好みだったが、元より売れ線メジャー狙いなバンドなのでデビュー作のような方向性の作品はもう二度とリリースされる事はないのだろう…ちょっと残念だ… “曲を書く時も、ギター・リフよりもまず先にメロディを見つけ出して、それに合うサウンドを肉づけしていくという感じだね。歌詞もメロディに合ったものを作るようにしている”と、インタビューでも語っている通り、前作でも感じたが楽曲に置けるヴォーカルの比重が大きすぎて、ちょっと(MIXも大きく関係してか)ロックっぽく聞こえぬ点は本作でも変わっておらず残念なポイントだが、それでも前作よりハードでエッジの効いたギターサウンドが前に出る比重が増えて聞こえるのがまだ救いだ。 Christoffer Stjerne(Vocals & Guitars)、Soren Itenov(Guitars)、Anders Kirkegaard(Drums)のトリオ編成と言う事で、正式なベースプレイヤーがまだ在籍していない事やキーボードの音もふんだんに鳴っているもののパーマネントな鍵盤奏者も居ないというような点もあってか『ソレってロックバンドなの?』という疑問や、音楽的な方向性的にもリズム隊が余り目立つ事や自己主張する事も無いのも少々退屈でいただけないように思う。 後はメンバーの少年時代である90年代はグランジ全盛期だった事から、NIRVANA、SOUNDGARDEN、PEARL JAM等を良く聴いており、彼等からも影響を受けている、というインタビューの答えを聞くに、北欧系にお約束の突き抜ける爽快感は弱めで反面ダルでノイジーな要素がチラついたりもして、やはり自分の求める80年代風メロハー・サウンドとはズレがあるのも当然か、と納得しておりました… サウンドの感触的にはベースがウェットなメロディが心地よいユーロ・ロックなれど、随所にUSAロック、USAポップスの要素やデジタリーなアレンジがまぶされている為に聞き終えた感想はアメリカンなサウンドに近く感じる折衷サウンドと言え、表面的にはストレートで勢い重視なポストロックのFOO FIGHTERSやMANIC STREET PREACHRS、GREEN DAY、AUDIOSLAVE等の影響がモロに窺えるサウンドなれど、個人的には最近メロハーで流行なタイプとも言えるカジュアルなサウンドなので十分許容範囲ではあるんですけどね。 なんだかんだしょっぱなからネガティヴな事ばかり並べ立てましたが、デジタリーでモダンな要素とオールドスクールなサウンドを巧くMIXし、コンパクトでバランス良い楽曲が納められたアルバムには、ヘヴィな楽曲もあれば美しいバラードもあり、新人バンド離れした磨き抜かれたバラエティに富む楽曲が目白押しで、終始キャッチーで耳を惹く歌メロとコーラスが心地よく楽曲の上で輝いており、メジャーアクトに今にも迫らんばかり(迫ってるのは、ポップスのメジャーアクトだけど…)の高品質なサウンドなのは疑いようもありません。 ジャケットのセンスもモダンで良く、実にこのバンドのサウンドを現している優れモノなのも大変素晴らしいと思います。 まぁ、単に私の好みとちょっとズレている、ってだけの話ですから。 ポップでキャッチーなのは大好物だけど、バランスが悪くともハードさロックスピリットや生々しさや危うさも感じさせて欲しい、っていう欲張りな自分からすると、彼等のサウンドは少々小綺麗で優等生過ぎるように思えて物足りなさを感じてしまうんですよね。 妙にロック要素あるサウンドじゃなく、最初っからポップスなんだ、っていう主張なサウンドならこんな不満も感じなかったのになぁ…(汗 次作辺りでさらにモダン要素が加速して、ハードなサウンドは影を潜めてエレクトロニックなサウンドやアレンジの比重が増え、歌メロももっとブライトなポップさを感じさせる方向(歌詞にアメリカンな脳天気さが無いのはユーロ圏バンドらしいけど)へ進んでシャープさが増してさらに売れ線なポップサウンドへ接近するんじゃないの? ていうか、そんな予感がするなぁ…('A`) 遠からずフォローするのを止めてしまいそうなサウンドへ進化しそうなバンドですが、まだ現時点では十分ロックっぽいテイストやタッチも感じさせる守備範囲なサウンドなので、高品質なポップロック好きは勿論、キャッチーなメロハー系やAOR系もお好みな方にもお薦めしておきしょう。
by malilion
| 2020-06-05 10:41
| 音楽
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