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70年代イタリアン・プログレの雄 BANCOが新フロントマンを迎えまさかの復活!

c0072376_17391114.jpgBANCO DEL MUTUO SOCCORSO 「Transiberiana ~Limited Mediabook~」'19

スタジオアルバム・リリースは97年のアンプラグドアルバム『Nudo』以来で、オリジナル曲で構成されたスタジオ・アルバムのリリースは94年の『Il 13』以来と、実に25年振り(!!)となる新作17thが遂にリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

70年代からPFMやLE ORMEと肩を並べるイタリアン・プログレ・レジェンドバンドのカリスマ的フロントマンで、ヒゲモジャのデブな禿げオヤジ(字面だけ見るとホンットに酷いなw)という特異なそのキャラクターとオペラティックな美声がメジャーデビュー以来“バンドの顔”そのものであったヴォーカリストの Francesco Di Giacomoを14年に交通事故で亡くし(涙)、てっきりバンドは解散したものとばかり思っていましたが、まさかの新ヴォーカリスト Tony D'Alessioを迎えた6人編成で活動を再開し、リーダーの Vittorio Nocenzi(Piano、Keyboards、Vocals)のみ残してメンツを総入れ替えしたツインギーター&キーボード入り新編成となって初のスタジオ・アルバム(ボーナストラックとして18年のLIVE2曲と44ページの綴じ込みブックレット&ハードカヴァー仕様の限定盤)が遂にお披露目された。

正直、Francesco Di Giacomo亡き後に誰を加入させようとも、もう以前のような懐かしの古典的イタリアン・プログレを奏でるBANCOサウンドを聞く事は叶うまいと確信していたので本作に手を出すのを少々躊躇っていたが、不遇の80年代末期からバンドに加入し、前作では時代を意識したメタリックでエッジある派手なギター・サウンドを聞かせた Rodolfo Maltese(15年に逝去…R.I.P)に代わり90年代以降バンドに参加している Filippo Marcheggianiがリード・ギターへ昇格し、12年から参加している Nicola Di Giaがリズム・ギター、そしてベーシストに元IL BALLETTO DI BRONZOの Marco Capozi、ドラムスにMETAMORFOSIの Fabio Morescoを迎えたという情報を耳にし、なかなか強力なリズム隊を従えたんだな、とちょっと興味をそそられ、LOST INNOCENCE、GUERNICA、POZZO DI SAN PATRIZIO等のバンドに参加し、イタリアン・プログHMバンドSCENARIOを率いる実力と十分なキャリアを持ったフロントマン Tony D'Alessioが加入というダメ押し情報で、遂には好奇心に負け(笑)本作を購入してしまいました。

前作のメタリックでドライヴィンな幾分かプログHMを意識しただろう(夢劇場の2ndは92年リリース)ハードサウンドでありつつ過去作もしっかりフォローする Vittorioの躍動的で煌びやかなシンセ大活躍な作風が個人的に大好きだった訳だが、既に新人バンドがデビューして解散してしまうくらいの年数が前作から経過している事実を見るまでも無く当然サウンドは前作と全く違っているものと予想していたが、本作は初期の重厚な70年代風イタリアン・プログレ・サウンドと、より現代的なHRサウンドをMIXさせた絶妙なバランスのサウンドがベースになっており、モダン・プログレからアバンギャルドな作風だけでなく、AORやJAZZ風な要素まで多種多様に取り入れたその恐れを知らぬ挑戦的サウンドは、70年代の黄金期を想わせる名盤サウンドを継承しつつも、新たな要素を貪欲に加えてモダンサウンドへ進化を遂げた、まるで新人バンドのような新鮮な活気と情熱に満ちた極上のイタリアン・シンフォサウンドが息づくアルバムで本当に驚かされた。

勿論、メンツが殆ど違うので同じサウンドなはずないのは当然だが、どうやらこのサウンド進化の一番の要因は、本作の作曲を Vittorio Nocenziが『まるで自分が作曲したかのようで驚かされた』と言う、彼の息子でありピアニストでドラマーの Michelangelo Nocenziのインプット(当人達が見失いがちなBANCOらしいサウンドを外部の若い感性を持つ目を通して再構築されたか?)を得た事が大きいようで、作詞は70年代以来バンドに度々力を貸している脚本家の Paolo Logliの協力を得て完成させられている点も見逃せないだろう。

“Trans-Siberian”は非常にパーソナルで複雑なコンセプト・アルバムで、シベリア鉄道をモチーフにした地球上で最長となる遙かな旅路が綴られており、何年にも渡って経験し現在までに味わった喪失感(バンドメイトとの死別や Vittorioの病の事を指して?)や、さらには希望の復活を伝える人生の比喩的な物語(壮大な風景、事故、狼との闘い、荒廃した遺跡、美しい降雪、そして最終的には海に到着するまでのアジアを横断する架空の旅)は、困難、夢、希望、期待、驚き、そして世の不思議について語られ、それらの比喩話には商業的成功を求めての失敗(80年代の愚かなポップ路線変更で金を稼ごうとしたのを指して)から学び、再びやり直すアクシデント等が赤裸々に描かれていて、全てをさらけ出して再び自らのアーティスティックな未来を定義づけると共に、その長いキャリアを音楽的にも歌詞的にも自伝的物語の態をとって総括した渾身の復活作となっている。

また、Vittorio Nocenziが語る所によると、シベリア鉄道をモチーフにした理由は『シベリアは極端な土地で、それは我々が経験する極端な時代、環境の大惨事の深刻さ、そして知性を破壊するグローバリゼーションの為の隠喩でもあり、無知で思いやりのある原理主義的狂信者によって支配される現代生活の衰退に対する警告でもり、全ての芸術家がそれらの問題に対して倫理的な緊張を与えなければならないと信じているから』と言う事らしい……

時代が時代なので70年代のような壮大で長尺な楽曲の姿は無く、本作の最長トラックは6分半程度となっているが、バンド創設時から作曲を務める Vittorio Nocenziと息子 Michelangeloによる楽曲群やアレンジメントの妙は冴え渡っており、キャッチーなビートに、パーカッシブなキーボードサウンド(図太いシーケンサー・サウンドが最高♪)、渦巻くようなソリッドなリズムセクション、浮遊する金物を活躍させるアバンギャルドな面を覗かせつつ変拍子が随所で顔を出すHR的畳みかけや、エッジ鋭いギターが強調された攻撃性と、これぞBANCO!と、いう情熱を再燃させる古典的でジャジーなタッチとモダン・ロックがMIXされた重厚なサウンドに、アートロック風の艶やかなアコースティック・パートを導入した古典的イタリアン・プログレらしいメロディアスでフックある展開は、結成1969年というキャリア50年を誇るイタリアン・プログレ大御所バンドの面目躍如な、優れたミュージシャンシップと未だ衰えぬエネルギー、そして独創的な静寂と荘厳なムードできめ細かく装飾されており、まるで煌びやかな宝石のように眩い輝きを放つその楽の調べは素晴らしいの一言だ(*´ω` *)

そして、本作における最大の注目点と言えば、新たに伝統あるバンドのフロントマンの座に就いた Tony D'Alessioについてだが、IL BALLETTO DI BRONZO、OSANNA、PFM、AREA、そしてBANCOの熱烈なファンだったと言う事で生前の Francesco Di Giacomoと交流があり、奇しくも“もし自分が歌えなくなったならば後任には是非 Tonyを”と Giacomoからお墨付きをもらう程の歌唱力で、同郷バンドMETAMORFOSI、LE ORME、MUSEO ROSENBACH等でも耳に出来る、喜怒哀楽の感情表現で巧みに声を使い分ける技量や、オペラチックに憂いある声色を震わせたり、弾けるような朗らかな歌声を轟かす、非常に情熱的なイタリアン・ヴォーカルスタイルで、勿論 Giacomoの唯一無二の美声を再現は出来ないが、可能な限り似せた歌唱を聴かせたり、自身のスタイルであるシャープで伸びやかな歌唱やHM畑で培ってきた強靱でパワフルな喉を披露したりと、ステージに出る度に Giacomoと絶えず比較される過酷な立場ながら、勇気、技術、そして持てる情熱の全てを捧げたその堂々たる歌いっぷりは、新たなる時代へ向けてBANCOサウンドが進化する足がかりとなっているのは間違いないと言えよう。

古典的イタリアン・プログレサウンドが色濃く思える本作だが、じっくり耳を傾けてみるとそこかしこにモザイク画のように雑多な要素が散りばめられており、80年代のKANSASのようにハモンドとロックギターでキャッチーに攻めるパートや、IL BALLETTO DI BRONZOのような“Jazz Meets Rock & Avantgarde”といった美しいアコースティック・ギターが光るパート、持ち味のクラシカルなピアノが活きる艶やかなパートや壮観なシンセサイザーが大活躍するパート、情熱的なヴォーカルとソフトなピアノが夢のように艶やかなGENESIS風のパートや、80年代CRIMSON風の硬質なギターが繰り返し響くパート等々、実験的な音楽要素を複合させたりサウンドにデジタル処理を施してみたりと、果敢に新基軸を構築しようと手探りで新たなモダン・プログレサウンドを構築するべく挑戦しているのが分かり、その飽くなき探究心と情熱の証を追いかけるだけで、もうお腹一杯になってしまうくらい濃密な内容の一作だ。

ジャケットはお馴染みのテラコッタの壺形貯金箱があしらわれたデザインになっていて、昔ながらのファンならずともニヤリ、としてしまいますね。

古典的イタリアン・プログレ・ファンは勿論のこと、高品質なユーロ・モダン・シンフォ作をお求めな方や、参加メンバーが元居たバンドのファン、そしてベテランの妙技と味わい深い熟練のプレイの数々を楽しみたい方にもお薦めな、安心安定の会心作となっておりますので、ご興味あるようでしたら是非一度チェックしてみて下さい。


by malilion | 2019-06-05 17:31 | 音楽 | Trackback
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