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DREAM THEATERフォロワーなフランス産プログHMバンドORENDAが、キャッチーに大躍進したシンフォ・サウンドの2ndをリリース!

c0072376_16293352.jpgORENDA 「Next」'18

フランスはルーアンで結成されたキーボード入り5人組モダン・プログレッシヴHMバンドの2ndアルバムが、去年末に10年ぶり(!!)にリリースされていたのを、今頃ご紹介。

98年にルーアン大学でDREAM THEATERのカバーバンドとして創設された、という出発点は明らかにDREAM THEATERフォロワーの1バンドであった。

ただ、彼等が『Images & Words』'92 リリース後に世界中であふれかえったコピー・バンド群と大きく違ったのは、彼等が『Images & Words』リリース後数年してから活動開始した世代差のあるバンドであり、『Images & Words』時点“まで”の音楽性のコピーであった雨後の筍の如く出現したDREAM THEATER症候群バンド(サックス入りのバラード調曲は定番)と違い『Images & Words』以降の音楽性の変化を取り込んでいる点と、当然の如くDREAM THEATER以外からの音楽的影響も色濃く自身のサウンドに現れてモダンでスムースなオリジナリティあるサウンド構築に活かされている点が上げられるだろう。

デビュー・アルバム『A Tale of a Tortured Soul』'08 時点では、ヴォーカルの声質や歌唱スタイルは言うに及ばず、ギターリフやフレーズ、リズムチェンジにキーボード・サンプリング等までに隠しようもなくDREAM THEATERフォロワー臭が漂うプログHMサウンドであったが、ユーロ圏のバンドらしいダークなアルバム・コンセプトと、ウェットなメロディや歌メロを主軸に据えた楽曲構成は、複雑な楽曲構成やインタープレイの応酬、そしてハイテク・ソロプレイ等を見せつける事の多いフォロワー系バンドの中では、所謂ポピュラーでキャッチーにまとめられたスタンダードなHM(時期的に考えて、もっとダークでヘヴィな鈍色プログHMサウンドでも当然なのに、その選択をしなかったのが素晴らしい!)に近似したバンドサウンドであったと言える。

夢劇場フォロワー系バンドのデビュー作は、ややもすると若さあふれる才気走った無駄なテクの応酬、長尺のインタープレイ・パート等が多くウンザリさせらる事が多いのが常だが、彼等はコンセプトアルバムであった点や、前世代のモロ『Images & Words』コピーなフォロワー・バンド群のサウンドを聴いていた事も影響してか、あくまでコンセプトを伝える歌メロを主軸に据えたコンパクトな楽曲構成であった事もあってオリジナリティという点ではまだまだなものの一連のフォロワー群の劣化コピー・アルバムより聞きやすかったのを覚えています。

とは言え、この時点ではDREAM THEATER、SYMPHONY X、SHADOW GALLERY等のサウンドと類似点の多いテクニカルなギターとキーボードプレイが売りのマイナー・ユーロ・プログレッシヴHMバンドの一つで、PAIN OF SALVATION風のダークな世界観も垣間見せている所がちょっと毛色の違いを感じさせる程度の存在でした。

今から考えるとこの時点で既にコーラス主体(ベーシストを除くメンバー全員バッキングヴォーカルのクレジットがある)なキャッチーな歌メロの片鱗や、サンバやサルサ等のDREAM THEATERでは聴く事の出来ないダンサンブルなフレーズや軽やかで美しいメロディの楽曲展開等が垣間見えていたのが面白いですね(*´ω` *)

普通ならデビューの勢いそのままに2ndの制作へ雪崩れ込むのがバンドの常なのですが彼等の場合は少々違い、リーダーの Stephane Coubray(Keyboards、Piano、Vocals、Percussions)が複数バンドを掛け持ちしていたのも関係してか、次なる音源は彼の関わるバンドを中心に多数のバンドに在籍するメンツや有名セッションミュージシャン、そしてテクニカルな音楽大院生を招くなど総勢14名の参加ミュージシャン達の手によるオペラ形式の壮大なダブル・コンセプトアルバム『New Day for Heaven』'13 を制作する事になる。

以下、『New Day for Heaven』プロジェクト参加メンバー。

Stephane Coubray(ORENDA、PLATINUM PLATYPUS、TRACES D'ILLUSIONS:Keyboards、Guitars、Bass、Vocals)
『New Day for Heaven』プロジェクトの作曲、アレンジ、プロデューサー、エンジニアを担当。物語ではナレーションの音声も担当。

Yann Martin(PIG:Guitars)
ギタリストで作曲家。
『New Day for Heaven』プロジェクトのスタジオ作業、及び公式ウェブサイトのデザイナー。物語では父親役の音声も担当。

Alexis David Tocqueville(PIG:Vocals)
『New Day for Heaven』プロジェクトの作詞と物語の脚本を担当。
ヴォーカル・メロディーの大部分と、キャラクターDARK HEAVEN役の音声も担当。

Anthony Lefebvre(ORENDA:Vocals)
物語の主人公HEAVEN役の音声を担当、そしてリード・ヴォーカリストでもある。ヴォーカル・メロディーと、ヴォーカルアレンジを担当。
『New Day for Heaven』CDカヴァーとアルバム付属の小冊子デザインも担当。

Julien Esteve(ORENDA:Bass) 新たにORENDAに加入したベーシスト。
Cedrick Saulnier(ORENDA、COVERSLAVE:Guitars)
Solene Leroy嬢(PLATINUM PLATYPUS:Vocals) 物語でEVE役の音声を担当。主人公の恋人役。
Salima Pichou嬢(COLLIN THOMAS:Vocals) 物語で主人公の母親役の音声を担当。
Alexis Damien(PIN UP WENT DOWN:Drums)
Guillaume Lefebvre(Drums) ルーアン音楽大学院生。ORENDAメンツの後輩。
Sylvain Fassio(PIG、ROSAPARKS:Guitars)
Laurent Terri(TRACES D'ILLUSIONS:Flute) 有名フルート奏者。
David Andrews(ANDREWS:Bass) 有名ベテラン・ベーシスト。
Damien Train(PLATINUM PLATYPUS、PIG、SUPER SCREAM:Drums)

と、言う事で Stephane Coubrayを中心に『New Day for Heaven』プロジェクトのミュージシャン達が集まったのが分かるだろう。

『New Day for Heaven』のサウンドトラックの殆どはORENDAバンドメンツの手によるもので、その意味で言えば『New Day for Heaven』をORENDAの2ndと捉える事も出来るかもしれないが、フルメンツによる制作でないのと複数バンドとのコラボによる創作状況を見るとやはり純然たるORENDA作と言えぬのが実際の所だ。

コンセプト・アルバムのサウンドは、男女複数ヴォーカルの効果やストーリー重視のオペラチックな楽曲構成な為にAYREON風の美しく艶やかなサウンドで、あくまで物語を綴るヴォーカル達が中心な楽曲は聴き心地の良さに重きを置かれている為か、参加メンツの経歴を考えるとテクニカルさだったりハードさだったりには注力されておらず、また伝えたいストーリーにリスナーを集中させる為か音楽的革新性等も目論まれていない(場面展開の妙やスリリングな楽曲展開等は目白押しだけど)ので、プログレ的要素を求める向きにはお薦め出来ないサウンドと言えます。

結果的に次なるORENDAのアルバムは18年発表になるので、1stリリース後にメンバーチェンジが勃発した為に『New Day for Heaven』プロジェクトへ Stephane Coubrayが手を出した訳だから、『New Day for Heaven』がバンド活動停滞の引き金になったのは間違いない。

因みに『New Day for Heaven』の物語の内容はと言うと、ジャケに描かれている蝶が象徴的(蝶になる夢は、華麗に変身したり、大きく成長したいという願望を暗示)なSFストーリーで、善意と優雅さに満ちた牧歌的な、天国の如く満たされた世界で17歳の少年が暮らしていた。
優れた科学者の父と優しい母の両親も、彼の完璧な精神性の偶像的存在だ。
しかし、恋人EVEと友人JAREDが登場する事で、物語の主人公である少年の完璧な人生がバラバラになっていく。
JAREDとの友情、助言を否定し、EVEとの関係を深めていく少年。
JAREDは、あらゆるモノを掌中に収める必要性のある少年の為にEVEを殺害し、少年は怒りにまみれJAREDを殺人罪で告発する。
突然、画像が目の前で回転し、悪意ある声が遠くのエコーのように共鳴し、天国のような世界は消え去る。
頭蓋骨にリベット止めされたセンサーとコードまみれで無菌室に横たわる自分を発見する。
実験器具は心拍を刻んで轟き、メインコンピューターの制御画面と、そこに表示されたデータを注意深く見ている40代の男が傍らに居る。
悪夢を完全に消し去った牧歌的な満ち足りた生活は、再構築され少年のまぶたの奥へ注入された夢だったのだ…

という、愛と友情、父と息子の関係、天国の安らぎと悪夢の誘惑が絡み合い善から悪への心情変化等、如何にもなダブル・コンセプト作になっているので、ご興味あるようならチェックされるとよろしいでしょう。

『New Day for Heaven』の為に休業状態だったORENDAだが、『New Day for Heaven』参加の Guillaume Lefebvreを新たなドラマーに迎え、長いインターバルの為か Cedrick Saulnierが脱退し Stephane Vaillantなる新ギタリストに迎え、2ndの制作に取りかかる。

前作からの長い長いインターバルや、Stephane Coubray(既に彼にとってORENDAは数ある音楽ユニットの一つに過ぎないっポイ…)や他メンバーのバンド外活動、そしてコラボレート活動した成果が活かされたのか、久しぶりとなる2nd『Next』のサウンドはこれまで以上に複合的な音楽要素で構成され大きくハイレベルに発展した、フロントマンとキーボーディストだけが同一とは言え、一聴しただけでは以前のORENDAサウンドを思い出すのが困難な程の傑作アルバムとなっている('(゚∀゚∩

以前よりサウンドのメタリックさ加減が幾分か薄れてよりユーロ・グレHMなモダンサウンドに近づいたのと、新メンバーを含め各パートの演奏技術も当然向上しているのもあるが、より楽曲がメロディアスでキャッチー、そしてコンパクトに纏め上げられており、さらに分厚く美しいヴォーカル・ハーモニーがまるでポップスバンドのように全編でフィーチャーされ、ここぞとばかりに斬り込んでくるスリリングなギターとヴィンテージ感を増した鍵盤系サウンド、特にシンセサイザーのサンプルや用法が夢劇場の影響から脱してユーロ・シンフォ系へ様変わりし、楽曲を華やかにする相互作用が一段と切れ味鋭くなった点がバンドサウンドを大きく飛躍させた要因になっているように思う。

未だに確かにそこここにDREAM THEATERっぽさは感じるものの、本家がダークでメタリック、そしてヘヴィな路線へ進んでしまった今となっては、彼等の“推し”と“引き”を絶妙な具合で楽曲に刻み、陰影と艶を生み出すドラマチックな手法は、今の夢劇場に望むべくもないリリカルで艶やかなモダン・ユーロ・グレHMサウンドなので、『Images & Words』当時のメロディアスでテクニカル、それでいてキャッチーという奇跡のバランスのさらに先へ進んだ、モダンでたっぷりのヴォーカルハーモニー(ちょいちょいQEENっポイ)によるポップネスさが加味された極上のグレHMサウンドを聴くに、『New Day for Heaven』プロジェクトでの遠回りや多数のバンドとの交流が決して無駄でなかったのだと分かる。

フロントマンの Anthony Lefebvreの歌いっぷりもさらに自信とパワフルさを増しており、既にJames LaBrieの影響から完全に脱して独自の深みある伸びやかな歌声や物語を紡ぐくぐもった語り口調など新境地を披露し、ORENDAサウンドの格を上げるのに一役買っているのも本作のサウンドレベルが格段に上がって聞こえる要因の一つなのは間違いない。

また、デビュー作でも幾分か感じられたダンサンブルで軽やかなメロディ運びが本作で本格的に楽曲に導入されてオリジナリティを大きく感じさせるようになった点も見逃せぬ点で、ソリッドでタイトなリズム隊に挑むような強力なフック有るギターリフや、楽曲を包み込むような美麗で煌びやかなシンセワークだけでなく、不意に訪れる素晴らしいアコースティック・シーケンスが渾然となって紡ぐ繊細にして荘厳なメロディは、ただひたすらにキャッチーで美しいのです(*´ω` *)

DREAM THEATERをはじめ、SHADOW GALLERY等のモダン・テクニカルHMがお好みな方や、ちょっとUSA寄りながらヘヴィさは控え目でしっかりモダン・ユーロ・グレHMサウンドがお好きな方に、彼等の新作は是非にお薦めしたい一品と言えましょう。

キーボーディストの Stephane Coubrayがボスなのもあって、シンセ、ピアノ等の鍵盤系の煌びやか、そしてセンチメンタルで透明感ある繊細な音色が実に美しく、キーボードが大活躍するユーロ・グレHM好きな方にもお薦めです。

最後に、ORENDAとは北アメリカの先住民族ヒューロン族の言葉で、運命や宿命の力とは対極にある力の事を指すのだそうです。
自らの環境を変化させる、運命を変える人間の意志の力“ORENDA”をバンド名にするなんて、なんとも中二心を擽られるネーミングセンスですよね(*´ω` *)



by malilion | 2019-05-10 16:25 | 音楽 | Trackback
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