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期待の新人USA産プログレッシヴ・デユオ FAINT SIGNALの2ndがリリース!

c0072376_00461197.jpgFAINT SIGNAL 「Formula」'18

2人のマルチ・ミュージシャンを中心としたUSA産プログレッシヴ・デユオの2ndがリリースされたので即GET!

USAオハイオ州南西端に位置する都市シンシナティで結成されたプログレッシヴ・デユオ(現在、シンシナティで唯一のプログバンドらしい…)で、シンシナティで活動するカントリー風味なパワー・ポップバンドSCREAMING MIMESのメンバーである Randy Campbell(Backing Vocals、Keyboards)と Henri Eisenbaum(Vocals、Guitars、Bass、Keyboards、Vocals、Drum、Percussion、Sequencing)の2人によって12年頃に結成された。

発起人は Randy Campbellで、自身のルーツであるプログレ・ミュージックをプログレが死に絶えたシンシナティで復活させたい、という想いから活動が始まった模様で、全楽曲の歌詞や楽曲の多くを相方の Henri Eisenbaumが手がけるのに対して Randy Campbellは10年以上SCREAMING MIMESのメンバーとして活動してきた人脈を活かし地元シンシナティのベテラン・ミュージシャンを幾人か招いて協力を乞い、14年に無事デビュー作『Faint Signal』が自主制作盤でリリースされる事となる。

デビュー作はUSA産プログレらしくSFチックでスペイシーなシンセがフィーチャーされたちょっとPINK FLOYDっぽいダークサウンドで、ソリッドでメタリックなギターと、オルガンやストリングス系に加えピアノの軽やかな音色も美しく、煌びやかなキーボードが大活躍するモダン・サウンドのヘヴィなUSテクニカル・シンフォといった趣の音であった。

2人がかりの多重録音なので無機質な打ち込みドラムも相まって全体的にドライサウンドながらそれはUSA系シンフォに共通点なので驚くに値しないのだが、サウンドのスケール感は色々工夫はしているが結局こぢんまりしてしまっているのが少々残念で、それでも自主制作レベルとしては十分なレベルであったものの、如何せんリードヴォーカルがC級クラスの音域の狭い穏やかなオッサン声(良く言えばウェットン系、というか Greg Lake風か)でキャッチーな歌メロ創りが上手いUSA系にも関わらずヴォーカル・パートがイマサンな為、トータルで見るとどうしてもC級に片足突っ込んだB級シンフォ物と言わざるを得ないアルバムだろう。

ただ、さすがにプロキャリアを積んできた Randy Campbellの手腕や知識が活かされ、そしてベテラン・ミュージシャンのヘルプもあってか、インディの多重録音モノとしてはとても良くプロデュースされたアルバムで、その点もあってギリギリB級シンフォものという聞こえ方をしているとも言える。

後は、最終曲のノリノリなスピーディでインタープレイを吹っ切れたように垂れ流す、脳汁タレまくりんぐな好き放題プレイを繰り広げるギターとキーボードの大暴れする楽曲を聴いた時、初期GLASS HAMMERを連想したので、もしかすると変にヴォーカル入りの楽曲にこだわるより、インスト系で攻めた方が彼等には向いているんじゃないかと思いましたね。

歌詞の内容も、プログレ系らしく社会的および政治的問題や、人々の意識、内なる意識と将来への楽観主義を扱ったりと、メジャーから外れた方向性な事や、地元にプログレ・シーン(パンク系では有名なのね…)が存在していなかったのも関係してか、彼等のデビュー作が大きな話題になる事はなかった模様だ。

実際、それらの問題点は2人共理解していた模様で、その後も各パートのプレイヤーを地元のミュージシャン達から募集していたらしい。

そして待望の新作の発表となった訳だが、前回の失敗を踏まえてか中心の2人はそのままにサックス奏者やヴァイオリン奏者、そして女性ヴォーカリストなどゲストを多数迎えて総勢9名(!)での制作となっている。

打ち込みでない専任ドラマー Kevin Hartnellを迎えた事でリズムの無機質さは解消され、ヴァイオリンとヴィオラを演奏する JulieAnn Martin Bernard嬢は二曲に参加し、サックス奏者のDenny Allenは一曲のみの参加ではあるが、ドライ気味だったサウンドに明らかに華やかで複雑な音の厚みと艶を生み出されているので、キーボードのサンプリングで誤魔化さずに管楽器とストリングスの生音を加える事でバンドサウンドのスケールと完成度を上げる今回のゲストを迎え入れる作戦は大成功と言えるだろう。

また致命的な弱点だったヴォーカルパートは、総勢3名の男女ゲストヴォーカルを迎え、それぞれ Mark SzaboとWhitney Barricklow Szabo嬢の男女ツインヴォーカル(夫婦?)が一曲でその歌声を披露し、Katja Loeb嬢は二曲でその美声を披露する事で全体の歌唱パートのレベルの底上げを実現している。

なにより Randy Campbellと Henri Eisenbaumのコーラスも今回は控え目ながら実に心地よいハモり具合なので、かなりヴォーカルパートに気を遣ったのが分かります(*´ω` *)

またリードギタリストとして Rob Fettersを迎えて全編でその流暢でテクニカルなプレイをバンドサウンドに取り込んだ事はサウンドに劇的な変化をもたらし、インストパートのさらなる完成度アップと楽曲の奥行きが増したのが一聴して即分かるレベルだ('(゚∀゚∩

メンバー的な補強によるプラス効果が創作意欲に火を点けたのか、楽曲の完成度も前回と比べものにならないくらい高く、前回の幾分メリハリに欠ける鈍色USヘヴィ・シンフォサウンドが、一気に緻密に計算された凝った展開で聞く者の耳を惹きつけるカラフルでドラマチックな正統派シンフォ・サウンドへクラスチェンジしていて、正直ここまで良くなるとは全く予想しておりませんでした。

テクニカルでメロディアスなギターはハード一辺倒だった前作と打って変わって繊細な叙情感を醸し出す美しく艶やな音色も紡ぎ、軽やかで煌びやか、そして幾分ミステリアスさを漂わすちょっとフュージョンっぽいタッチ(HAPPY THE MANっぽい!)のシンセはテクニカルでシャープなプレイを垣間見せつつ楽曲の壮大なスケール感を演出したりと、前作で足りなかった“引き”の美しさを感じさせるサウンドの魅力が大幅にアップしている点が大きな違いと言えるだろう。

勿論、前作同様ハードに切り込んで来るメタリックでスリリングなエッジあるギタープレイやオルガン系のワイルドでジャージィな渦巻くような鍵盤捌きやめくるめくシンセの長尺リードパートもしっかりとフィーチャーされているので、惰弱に感じる要素ばかりが強まった訳ではなく、本来あるべき足りなかった要素がバンドサウンドの中核へ加味された結果の、サウンドの陰影と音の深みと艶やかさが増した本作の楽曲とサウンドは一味も二味も違って聞こえ、B級も危ういマイナー・USシンフォから極上のB級USインディ・シンフォ・バンドに生まれ変わったように思えます(*´ω` *)

叙情感や音の艶やかさが増したからか、前作より一段とユーロ・シンフォに近づいたサウンドに聞こえ、けれど要所要所でUSバンドらしい明るい音の“抜け”とパワー圧しな部分も垣間見えて、それが彼等を単なるフォロワー・サウンドに貶めない助けになっているようで実に面白い。

PINK FLOYD、LIFESIGNS、PORCUPINE TREE、RUSH、QUEENSRYCHE、TRANSATLANTIC、THE FLOWER KINGS、SOUND OF CONTACT、MARILLION、SPOCK'S BEARD、STEVE HACKETT'S GENESIS REVISITED、そしてBLUE OYSTER CULT等の影響が窺えるヘビィ・プログレへの近代的アプローチなサウンドだった彼等に、GENESIS、YES、EL&P等の所謂定番の70年代プログレサウンドのエミュレート要素が加わり、良い意味で大衆受けするサウンドへ接近したように感じるのは、そもそもが、曲作り、楽曲アレンジ、アルバム構成などインディ・ユニットとは思えない高いプロデュース能力とスタジオ作業力を有していた2人が、前作に足りなかった要素を冷静に分析し、妙なプライドに縛られず弱点を補完する為に外部の有力な助けを借り、遂に思い描いていたサウンドを具現化した、そういったクレバーな行動の結果もたらされた二次的な要因ではなかったのでしょうか?

総じて本作は、テクニカルで壮大、そして煌びやかで軽やかなキーボードパートがかなりフィーチャーされている楽曲(Randy Campbellと Henri Eisenbaumの中心人物2人が目一杯キーボードプレイしてるトコなんかも初期GLASS HAMMERっぽいよなぁ…)がタンマリ詰め込まれていますので、モダンなキーボードプレイメインなシンフォサウンドがお好みな方は是非にチェックして欲しい、有望な無名新人USシンフォ・バンドと言えましょう。

ゲストプレイヤーの操る楽器以外のサウンド、フルートなんかの音も聞こえるものの、恐らくそれらは全てキーボードのサンプリングでしょうから、今回はサックス奏者やヴァイオリン奏者をゲストに迎えた事だし、続く次作ではその辺りの奏者も実際に招いて制作して欲しいですね。

このままの方向で進化し続ければ、妙なポップスやゴス要素へ色気を出して迷走した挙げ句、初期とは似ても似つぬ路線へ様変わりしてしまったGLASS HAMMERが本当なら聞かせてくれたかもしれない、壮大でシンフォニックな00年代モダン・プログレのその先のサウンドを彼等が届けてくれそうな気がして今から期待が膨らみます(*´ω` *)

出来ることなら次作ではしっかりとメンツを固め、さらなる創作の飛躍を期待したい、そんな期待の持てる有望な新人USシンフォバンドが登場してきました♪


by malilion | 2019-05-03 00:39 | 音楽 | Trackback
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