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MARILLIONフォロワーが出発点なイタリアン・ネオプログレバンドSILVER KEYが、新フロントマンを迎えて3rdをリリース!

c0072376_22052230.jpgSILVER KEY 「Third」'19

MARILLIONとFishのカバーバンドとして始まった、イタリアのミラノ出身なネオ・プログレバンドが前作から4年振りとなる3作目をリリースしたのでご紹介。

久しぶりの新作だが、残念な事に恒例のメンバーチェンジが勃発した模様で、唯一バンド創設時から在籍しバンドのリーダー格であったフロントマン&アコギの Yuri Abiettiが17年7月にまさかの脱退(!?)し、新たなフロントマンに Dino Procopioなる無名のヴォーカリストを迎え、さらにドラムス Viviano Crimellaも脱退(本作のドラムはゲストプレイヤーのプレイと一部打ち込みと思われる)し、結局1st以降で残留しているのはキーボーディストの Davide Manaraのみ(新たなバンマスに就任か…)という4人体制で本作は制作されている。

前作のSFチックなコンセプト・アルバムに引き続き、新加入の Dino Procopioが歌詞を手がける本作は、様々な学者、思想家、文筆家に影響を与え『意志と表象としての世界』で著名なドイツ人哲学者 Arthur Schopenhauerの思想をベースに、互いにリンクした5つのストーリーを含む重厚な物語が紡がれたコンセプトアルバムだ。

母子家庭で育った少年が民兵となり母を護る為に闘う物語、欲望まみれのVR世界で神の如き少年と出会う男の話、最新テクノロジーの商品を強迫観念に囚われたように病的に求める人々の物語、社会的なタブーである殺人を正当化する男の物語、小女との恋に狂い墜ちていく恥ずかしがり屋で厄介な14歳の少年は永遠を誓うが、結局その願いは叶うことはない物語、というそれぞれが独立した物語になっているが、5つの物語の登場人物は互いの人生の重要な登場人物となってそれぞれの物語に干渉するという、複雑に絡み合った人間模様が悲劇的で陰惨な物語を織り成すコンセプトストーリーは、最終章で恥ずかしがり屋で厄介な14歳の少年が成長して科学者となり、逸脱した精神病者達を癒す為の治療法の発見を科学界全体に発表するが、結局彼も犠牲者であり、精神科の患者となって悲劇は幕を閉じる、という余り救いの無いお話となっている……

本作でまず注目なのは新ヴォーカリストの Dino Procopioについてで、前任者より荒くダーティな声質と灰汁の強いガナリが特徴な歌唱スタイルと前任者よりもFish風な芝居がかった歌唱が耳につくが、これは重厚なコンセプト作のストーリーを表現せんが為とも取れるので、実際LIVEでの歌いっぷりや普通に歌い上げた印象はどうなのかはまだ分からない。

前任の Yuri Abiettiより Dino Procopioはパワフルな歌声で前任者同様イタリア臭さは薄くUK系に近い歌唱スタイルで、よりモダンでソリッドな方向へバンドサウンドが進化している事を考えるとマッチしているとも言えるが、ポンプやネオプログレ系にはマッチしにくい苦汁声なのは確かなので、シンフォやポンプを好むリスナーの受けが良いかどうかは少々疑問が残るかなぁ…(汗

ヴォ-カリストについてはそれぞれ好みがあるだろうが、バンドサウンドの方は確実に完成度と深みを増しているのは確かで、デビュー作からして80年代UKポンプを憧憬しつつ新世代らしさを感じさせるモダン・サウンドだった訳だが、本作では前作から加入した Roberto Buchicchioがハードにテクニカルにエモーショナルなギタープレイを披露して物語を紡ぐのに大活躍するだけでなく、Davide Manaraの操るキーボードはクラシカルなオーケストレーションでストーリーの陰影を一層に際立たせ、時折ハッとするリリカルで艶やかなピアノで物憂げさを演出してみせたり、不穏感を煽る残響音や銃声等のSEや美声の女性バッキングヴォーカリストを導入してドラマチックで重厚な物語のイメージを強めつつ煌びやかで軽やかなシンセの音色が初期からのポンプ風味を漂わせたりと、随所でデジタリーなプログラミングサウンドを巧みに交差させたミステリアスなサウンドにイタリアモノ特有のバタ臭さは皆無で、スタイリッシュな00年代ユーロ・シンフォサウンドにダークでアンニュイな独特の風味を加えたUK風シアトリカル・サウンドとなっている。

前任ヴォーカリストの Yuri Abiettiは、お約束な芝居がかった語り系の歌唱法は用いず普通に歌い上げていたので、安っぽいGENESIS系フォロワーやMARILLIONの亜流のように聞こえなかったのと、この手のバンドが最初から放棄しているオリジナリティや音楽形態の焼き直しに対する新鮮味の欠如を巧みにカバーせんとする気概のようなものが感じられた訳だが、本作の Dino Procopioのシアトリカルなヴォーカル・アプローチは如何にもなFish系なので、先祖帰りして初期MARILLION風に聞こえない事もない点は少々残念と言えるが、歌唱スキルの低さ(汗)や声質が全く違うのと、灰汁の強いHR的なパワフル・ヴォーカルが幸いして、まんまフォロワーとなっていない点は救いだろう。

新世代バンドらしく旧来のポンプ勢とは音の厚みが違い、今風にアップデートされた複雑でテクニカルなモダン・シンフォサウンドは少しも古くささを感じさせ無いものの、難解なコンセプト故か歌メロのキャッチーさや楽曲のメロディがすんなり耳に残らないというマイナス・ポイントはこれまでよりも一層強く感じられてしまい、そろそろコンセプト作でないアルバムとシンプルで美しいメロディでのみで勝負してみて欲しいと言うのが、次作についての個人的な要望ですかね…

渦巻くようなロマンチックな響きのトラックや、魅力的で官能的なギターソロ、そしてエレクトロニックでシンフォニックなサウンドは、MARILLIONにインスパイアされたサウンドと言うかデジタリー要素が加わって寧ろGALAHADサウンドに近いと言えるかもしれないが、随所で確かな進歩性と独創性、そしてイタリアンバンドらしく拘りの美意識を強く感じさせる期待の持てるサウンドを奏でる新人バンドなのは確かなので、続く次作でどういった方向へさらなる飛躍を見せるのか、今から大変楽しみであります(*´ω` *)


by malilion | 2019-04-22 21:56 | 音楽 | Trackback
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