LOST WORLD BAND 「Spheres Aligned」'19
ロシアのバカテク暴走列車 LOST WORLD BANDの、3年ぶりとなる待望の新作6thがリリースされたのを、ちょい遅れてGET! デビュー当初はキーボーティストやギタリストも擁していたものの、4thからリーダーの Andy Didorenkoがギター、キーボード、ヴァイオリン、そしてヴォーカルまで担当するという完全にワンマンバンド化してちょっとガッカリだった訳だが、予想に反して本作から各パートにパーマネントなメンバーを迎え、遂に本格的に5人組バンドとして活動を開始した模様だ('(゚∀゚∩ 引き続き Vassili Soloviev(flute)と Konstantin Shtirlitz(Ds)も参加し、クラシック畑でも活躍するリーダー Andy Didorenko(Violin、Guiter、Vocal)を含めオリジナルメンツの3人組は盤石なままに、Yuliya Basis(Keyboards)なる女性キーボーディストと Evgeny Kuznetsov(Bass)を迎えた新体制となっている。 前作でパーカッショニストとして呼び戻された Alexander Akimov(2nd時のキーボーディストだった)は残念ながら本作で演奏は披露していないが、Andy Didorenkoと連名で本作をプロデュースしているので、どうやらバンドの裏方に回った模様だ。 で、期待の新作の内容はと言うと、これまでの彼等のサウンドは大まかにはロシア人ヴィオリニスト Andy Didorenko率いる硬派シンフォニック・ロック・バンド作と言えたのだろうが、これまでギターとヴァイオリンの激しい演奏のせめぎ合いが炸裂し、叙情的で涼やかなフルートも一転してエキセントリックなプレイを叩きつけるように切れ味鋭く暴れ回る超絶テクニックと複雑なアレンジが見事に融合した、トンでもなくインパクト絶大なエキセントリックで凶暴なまでにテンション高い、東欧クラシック・ルーツのスリリング且つダイナミックな屈折した硬質な暴走ダークシンフォ・サウンドを展開したり、よりリリカルで艶やかさを活かすフルートとヴァイオリンの優雅なアンサンブルを中心にしたアーティスティックなサウンド構成へ変化したり、ほんわかした牧歌風な歌声で、静かに感情を抑えて淡々と語りかけるような歌声を英語で聞かせる新境地を垣間見せたりと、バランスを度外視してまで振り幅広く音楽性のキャパを拡げる試行錯誤を挑み続けて来た訳だが、本作ではより一般的なテクニカル・シンフォバンドっぽいサウンドを聞かせ、ややもすると難解でとっつき難いサウンドだった彼等の音楽が、相変わらずインストパートの比重が多いものの、それでもかなり聞きやすくなったヴォーカル入りのシンフォ・ロックサウンドに寄ったという印象を持ちました。 2017年11月から2018年12月の間にニューヨークとモスクワの両方で作曲され、録音された本作のサウンドは、以前のようなKING CRIMSONやAFTER CRYING風味のヒステリックな狂気のハイテンション漲るアグレッシヴで躍動感ある“押し”パートは控え目になり、どちらかと言うとコーラス等を活かしたYES風の優雅な叙情性や技巧が光るフォーキーでアコースティックな静けさ薫る繊細な“引き”パートの美しさが耳を惹き、前作よりもシャープなフュージョン風味が抑えられ、所謂一般的なプログレ系シンフォ度が上がった(フルートの涼やかな音色とピアノの艶やかで美しい調べは、ホント絶品ですわぁ♪)事もあってか、以前よりもバランスを重視しつつメリハリが一層に強く感じられる、極めて高度な技巧と緻密な構成の楽曲に彩られた硬質なモダン・シンフォ作と言えよう。 初期からのKING CRIMSON、GENTLE GIANT、EL&P、U.K.、PFM、JETHRO TULL等の影響を感じさせるパートもありつつ、前々作で披露したちょっとRUSHの Geddy Leeっぽい穏やかな低音ヴォーカル(ぶっちゃけ歌唱スキルはオマケ程度だが…)が音楽を邪魔しない程度に歌詞を歌い上げ、リリカルなフルートとピアノやアコギが紡ぐフォーキーで牧歌的な雰囲気の軽やかで穏やかなサウンドと、不意に斬り込んでくるヘヴィでソリッドな疾走感を押し出した畳みかける怒濤のパートは相変わらずの暴走っぷりでパワーとテクニックが炸裂し、せめぎ合う様は正に圧巻なもののしっかりと楽曲がメロディアスに纏め上げられているのは、やはり Andy Didorenkoのバックボーンがロシアン人であり、クラシック畑での活動もそうだろうが、所謂70年代のプログレの巨人達のサウンドが血肉になってきた結果だろう。 後はやはり専任プレイヤーが加入したのはデカイでしょうね。 特にキーボードが本作では全編に渡って大活躍しており、以前のようなヴァイオリンのヒステリックなサウンドばかりがグイグイと楽曲を引っ張っていくような事はなくなりましたから。 これまでややもすると存在感の薄かったリズム・セクションが本作ではしっかりソリッドなボトムを構築し、刺激的で複雑なセクションを垣間見せてはその存在を強く自己主張したり、ギターやキーボード、そしてヴァイオリンのメロディを奏でるパートと一体となって畳みかけ、そして優美なサウンドを奏でる変幻自な様は、正にこまでの彼等の作品中で最高の出来と言える会心作と言えるのだが、インストパートが充実すればする程に、リーダー Andy Didorenkoの貧弱で音域の狭い、イマイチ情感を伝え切れていない淡泊でスキル不足なヴォーカルが覆いようもない弱点として大きくサウンドから浮かび上がってしまい、次なる新作では是非とも専任ヴォーカリストを迎え入れて完全無欠な傑作アルバムを創って欲しいものだと願わずにおれません…(つд`) 暴れ回るハイテンションなヴァイオリンの調べと絡まる重厚にして叙情感タップリなシンフォサウンドがお好みの方は、買わずに済ます訳にはいかない必聴盤でありますよ! m9(`Д´)
by malilion
| 2019-04-19 16:43
| 音楽
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