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オランダが誇るメロハー界の救世主TERRA NOVAの7thアルバムをご紹介。


オランダが誇るメロハー界の救世主TERRA NOVAの7thアルバムをご紹介。_c0072376_21290065.jpgTERRA NOVA 「Raise Your Voice」'18

Fred Hendrix(Vo)とRon Hendrix(Key)の兄弟率いるオランダ産メロハー・バンドの至宝、TERRA NOVAの約3年ぶりとなる通算7枚目のニュー・アルバムが去年末にリリースされたのを、ちょい遅れ今頃GET!

前作が巷では不評だった模様ですが、個人的にはAOR要素多目な味付けの楽曲に不満はなく、トラック目一杯に音を詰め込んだ軽快でスピーディでキャッチーなガッツリ造り込まれた系メロハー好きな諸兄達の失望を買っただけだったと思っとります。

で、続く本作はどうなのかと言うと、大まかに言って前作のAOR風味増し増しから初期のキンキン・メロハーっぽい作風へ一聴して戻っているように聞こえ、これはこれでデビュー当時から彼等を応援している日本人好みな哀愁の美旋律と爽快なコーラスが炸裂するキャッチーでハード・ポップなサウンド好きな方達を満足させる方向性と言えるでしょう。

ただ、以前と全く同じ、と言うわけではないようで、個人的にはちょっとそこに違和感のようなものを感じるんですよね…

前作の悪くない出来のアルバムのサウンドを聞いて、何故Frontiers Recordsが彼等と契約を見送ったのか疑問だったのですが、前作に引き続きMelodic Rock Recordsからリリースされた本作を聞いて、その理由が少し見えてきたように思えます。

のっけからSCORPIONSっぽいシンプルなリフで始まる『Raise Your Voice』にちょっと驚かされるが、その後はいつもの定番な分厚い爽快コーラスとメロディアスでキャッチーな歌メロが炸裂し、ファンならずとも一安心と言ったところ。

ただ、アルバムを聞き進めるうちに感じる、なんと言うかワイルドさ増し増しなギターのトーンのせいなのか、歌メロのせいなのか、バッキングコーラスの導入のされかた故か、楽曲全体がシンプルでストレートなイメージで、以前のようなユーロ・メロハー特有のウェットで一癖も二癖もある素晴らしい楽曲展開と際だった美しいメロディの交差が生み出すマジックのような感動が感じられない、全体がドライなサウンドに纏め上げられているのに気づき、そこが少々残念ではあります。

上手く言い表せないけれど、Frontiers Records所属時までの楽曲が上質なワインのように熟成された豊かなメロディを感じられたとしたら、今回の楽曲は熟成不足な感が否めないかな、と……

それ以外にも、FOREIGNERっぽいメロディの楽曲や、VAN HALENっぽい豪快さを感じさせる楽曲、そしてDEEP PURPLEっぽい雰囲気のある楽曲等々、80年代っぽい雰囲気が本作のそこここから感じ取れ(ちょっと古いサンプルなシンセのせい?)て、キンキンのハイトーンが炸裂する緻密に造り込まれた00年代爽快メロハー・スタイルから、どこかナチュラルなサウンドの響きを感じさせるシンプルでストレートなアメリカンHR要素多目なスタイルへ楽曲の色づけが成されている風に思えるのが違和感の原因なのかもしれない。

強引に言うと、Frontiers Records所属時までユーロ・メロハーな00年代風の方向性なウェット・サウンドだったのが、Melodic Rock Records所属になってからアメリカンな80年代風の方向性なドライ・サウンドへ移行したイメージ、と言えば伝わりますでしょうか?

勿論、そんな単純にサウンドがコロっと変わった訳ではなく、以前からUSロック風味もありましたしAOR風味も感じられた彼等のサウンドですが、本作におけるユーロテイストの減退、そして代わりに手に入れた歯切れ良さとストレートな楽曲のパワフルな躍動感は絶対に意図的だと思うのです。

総じて日本人受けするメロハー・サウンドなのは間違いないのですが、ちょっとした楽曲の色づけや方向性の違いが個人的に少々以前との差を感じて違和感を覚える、と言うだけで、コレはコレで全く問題なく受け入れられる爽快キャッチーサウンドなので良いんですけどね…

これまでのユーロ・メロハーサウンドに加え、JOURNEY、VAN HALEN、STYX、そしてCHICAGOなんかの要素までがチラチラ見え隠れするUS市場向けな本作のサウンドは、以前の造り込まれたメロハー・サウンドがお好みの方には少々ナチュラルでストレートな響きが先行して聞こえてご不満かもしれませんが、コレはコレで決して不味い出来ではないと思いますので、是非に前作で彼等に失望した方も今一度チェックしてみて損はないと思いますよ?

因みに日本盤と外盤ではボーナストラックと若干ジャケが違うので、音源マニアの方は輸入盤も見逃すこと無くチェックしましょう。


by malilion | 2019-03-12 10:03 | 音楽 | Trackback
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