DILEMMA 「Random Acts Of Liberation」'18
まさかの復活! オランダ産ポンプメタル・バンドの23年振り(!)となる3rdアルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET! アンダーグラウンドシーンはシンフォ・サウンドという新風の奥にポンプの残り香がまだ幾分か漂い、メジャーシーンではプログレMHが一大シーンを形成していた95年当時、SI MUSIC(後にRoadrunner Recordsがディストリビュート)から『Imbroccata』にてアルバムリリースを果たすものの、その後音源を残せず02年に解散していたバンドが、オリジナルメンバーのキーボーディスト Robin Zuiderveldを中心に再結成され新作をリリースした。 オランダのアムステルダムで93年に結成され、同年カセットオンリーのデビュー・アルバム(現物未確認)『Trapped』をリリースし、その後95年に2nd『Imbroccata』にてCDデビューを果たすが、その時点で既にアルバム2枚分のマテリアルが存在するという事で、続く新作はすぐにも届けられるものと誰もが思っていた(ポンプ系やHM系のインディバンドでこの手の話は定番ですね)ものの一向に音沙汰は無く、いつの間にやらバンド名をUNDERNEATHへと変え、そのまま忘却の彼方へ消え去っていた彼等がまさかメンツを殆ど入れ替えて蘇るとは… なぁ~んて、バンドHP覗いて偉そうな事今頃宣っちゃってる完全に知ったかぶりです。ハイ。 実際は2nd(当時、何故か日本盤もリリースされていた…)聞いて『なーんかSHADOWLANDのヘッコポ版みてぇでイケてないなぁ…』と思い、完全に記憶の彼方へ消し飛んで行って、ついぞ思い出す事の無かったバンドでした(汗 全く関係ないけど、DALI'S DILEMMAって、いう夢劇場フォロワー系なUSカリフォルニア産プログHMバンドと似た名前なので混同しがちで、コッチの方も同じく1作のみで解散しており、DILEMMAって名前はツキに見放されるよろしくないバンド名なん? と、以前思った事がありましたねぇ… 後に英国のIONAへ加入(00年アルバムから)し活躍する Frank Van Essen(Drums&Violin)が元在籍していた、との知名度のみが僅かに残るマイナー・バンドであった訳だが、まさか Robin Zuiderveld(Key)を中心に、DILEMMA末期メンバーとして活動し、今はKAYAK、AFFECTOR、Neal Morse BAND等で活躍するCollin Leijenaar(Ds&Vo)、Paul"Cray-Z"Crezee(G)等により10年に再結成されていたとは、本作リリース・インフォを見るまで全く知りませんでした。 しかも、本作ではヴォーカル&ギターに Dec Burke(元DARWIN'S RADIO、元FROST*、AUDIOPLASTIK)、ベースに Erik Van Der Vlis(元SINISTER STREET)を迎える強力布陣に加え、オリジナルメンバーであるIONAの Frank Van Essenもヴァイオリンで2曲に参加し、変わらぬその艶やかで美しい美旋律で再結成作に華を添えております。 2nd『Imbroccata』は、フロントマンの Danny Butlerの声質や歌い方、そしてHM要素とポンプ要素をMIXしたような、当時の時流で言う“普通にメロディアスなユーロ・ロックサウンド”でイマイチバンドサウンドの特徴が弱く、そのせいでか Karl Groom& Clive Nolan率いるSHADOWLANDの劣化版バンドのように聞こえていた彼等の音楽だが、本作に置いてはオリジナルメンツは Robin Zuiderveld(Key)残すのみだし、時代も変わったし、で殆ど別バンドとも言える、ミステリアスな雰囲気と妖しい気配を漂わすサウンドを新基軸に、プログレHM的なギターとキーボードのド派手な高速ユニゾンや手数の多い弾けるドラミングの上で熱いインタープレイを交差させつつ、しっかりポップなフィーリングを失うこと無くテクニカルに複雑に大展開するモダン・ユーロ・シンフォ・ロックサウンドを新たに披露している。 23年という決して短くない時間を経てのバンド創作物なので、方向性やサウンドの質等々、当然以前とは全く違うと言っても過言ではなく、フロントマンが Danny Butlerから Dec Burkeへチェンジしている事で楽曲の情感の幅や、表現力の深み、繊細な歌メロ、そして、センチメンタルなサウンドのタッチや、単純に歌唱力や演奏技術が大幅にアップしているのも大きな新作の話題点だが、それ以上に見逃せないのが、タイトでソリッド、そしてテクニカルなリズムを刻むドラムを始め、Loops、Percussion、Additional Keyboards、Sound Design、Urban Sampling(SEの事?)、Programming、Backing Vocals、と以前と違って全編からモダンでデジタリーさを漂わす彼等のニューサウンドへ多岐に渡って貢献し、さらに本作のプロデュースまで担っている Collin Leijenaarの八面六臂(さすが電子音楽の本場オランダで活躍してるだけありますね)の活躍が本作に置いては最も大きな創作面でのプラス要素であったと言わざる終えないだろう。 実際、唯一のオリジナルメンバーである Robin Zuiderveld(Keyboards、Grand Piano、GEO Synthesizer)の印象は、以前のポンプ的ハッタリプレイばかりを聴かせていたプレイと比べ、バランス重視でバンドサウンドに絶妙にキーボードプレイやキーボードサウンドが溶け込んでいる事もあってか総じて薄く、寧ろポップな歌メロとトリッキーなギタープレイを聴かせる Dec Burkeと変拍子をはじめテクニカルな技を見せつけつつしっかりと楽曲に即したセンスある小気味よいドラムプレイを聴かせる Collin Leijenaarが結成した新バンドへ Robin Zuiderveldの方が後から加入した、くらいのサウンドバランスに聞こえるのだから、どうしてDILEMMAの名前に拘ったのか、その理由の方が気になるくらいだ(汗 また、無名ながら Paul"Cray-Z"Crezeeのギタープレイも実にそつなく、泣きのフィーリングや哀愁漂うアコギ、ハードタッチでエッジある攻撃的リフや、しっかりと音の厚みを出す為のバッキングや、モダンなタッチの透明感あるメロディを紡ぐクリアートーンの流暢な演奏等、悪目立ちする事なくしっかりとバンドサウンドを支え多様な彩りをもたらしている点も見逃せない点だろう。 キャリアを重ねたのが無駄でなかったのと、強力なメンバーを迎えられた事が予想以上に素晴らしい化学反応を引き起こしたのか、テクニカルなプレイを織り交ぜつつ、メロディアスでキャッチーな面も垣間見せる、以前と比べものにならないくらいリリカルでハイレベルな、実にオランダらしいモダンでクリアー、それでいて時折垣間見せるダークなメロディや楽曲展開を隠し味に、貪欲に実験的なデジタリー・サウンドも導入して古色蒼然とした70年代プログレの巨人達のサウンド・エミュレートから脱却して見せたセンスは、まさにポンプメタルから新世代ユーロ・シンフォ・ロックバンドへ彼等が生まれ変わった証と言えよう。 勿論、全く斬新なサウンドと言う訳ではなく、所謂80年代ネオプログレや90年代以降のプログレHM、さらにFLOWER KINGS、SPOCK'S BEARD、Neal Morse BAND等からの影響が聞き取れるものの露骨なフォロワー臭は無く、即効性のある強烈に個性的なシンフォ・サウンドと言えないけれども、アコギの爪弾きや艶やかなヴァイオリン、センチメンタルで軽やかなピアノ等々のサウンドで如何にも叙情的ユーロ・サウンドといったウェットな感触も保ちつつ、SEやプログラミング等の如何にもデジタリーで冷ややかなサウンドを交差させ、誰かに似ているようで誰にも似ていない独特な寂寞感の漂う世界観と隙間があるようで実際はジックリと造り込まれたサウンドが漣のように紡がれゆくのに耳が惹きつけらっぱなしだ(*´ω` *) スタンダードでオールドスタイルのシンフォ・サウンドではないし、幾分かHMチックなサウンドや、ポップでキャッチーな点も多々あって説明するのが難しく、さして知識がある訳でないので分かり易い例えバンドが思いつかず申し訳ないが、是非このカラフルで軽やか、それでいてミステリアスで不可思議なサウンドにユーロ・シンフォ・ファンな方ならば一度触れてみて欲しい、そう願わずにおれません。 メンツがメンツだし、このま安定して活動出来るのか定かではありません(汗)が、是非とも次なる新作を今度こそ早めに届けて欲しいものであります。
by malilion
| 2018-12-09 15:55
| 音楽
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