![]() 後期CRIMSONからの影響大な硬派サウンドを経て、東欧特有のモダン・ダークネス風味を加味したメタリックなシンフォHRサウンドを前作で披露したツインギター&キーボード入り5人組の彼等だが、2年ぶりとなる本作7thではヴァイオリンをフィーチャーした正に“ポーランドのCRIMSON”を地で行く、モダンでメロディアスなダーク・シンフォ・サウンドを披露している。 常にバンドメンツが流動的であった彼等だが、なんと本作はバンド結成25周年を記念した前作と同一メンツでの制作だ。 そんなバンド状態の安定が呼び水となったのか、これまでもアルバム全てを使った複数小曲より成る一大組曲や数曲の大曲のみで構成された実にプログレ・バンドらしいアルバムをリリースして来た彼等だが、本作に置いては遂に43分超えな一大曲、アルバムにたった1曲(CDではトラックが区切られてはいる)のみ収録の作品となっており、前作で多数招かれたゲストプレイヤー陣の名は無く、唯一美貌のJAZZ系ヴァイオリニスト Dominika Rusinowska嬢のみが招かれ(17年リリースの先行シングル『Single Omen』では元メンバーのヴァイオリニスト Krzysztof Maciejowskiがプレイしていたが本作には不参加。なので一部音源を Dominika嬢の演奏に差し替えている?)プレイしている他は、バンドが一丸となってクリエイティビティを高め、プログレ・バンドらしく持てるテクニックと発想力の全てを出し切って挑んだ、意欲的な野心作と言えよう。 しっとりたおやかなピアノの調べに導かれ、透き通るようなヴァイオリンの美旋律が柔らかに重なり合う導入から、一転して緊張感高まるJAZZロック張りのテクニカルなサウンドへ雪崩れ込む様は、前作と趣は違えど同一な作風に思え、けれどそこからウネる野太い邪悪なベースと妖しげなメロディを刻む冷ややかなシンセ、さらに暴れ回る手数の多くタイトなドラムスが不協和音を思わせる不気味なヴァイオリンやノイジーなギターの音色と絡みあって予想外の怒濤の展開を見せ、そんなサウンドの上にデジタル処理されたシアトリカルなヴォーカルのシャウトと語りが波状攻撃で突き刺さり、これまでに培ってきた東欧風モダン・ダークネス・サウンドと『Red』期KING CRIMSON張りなヘヴィで硬質なサウンドを、時に艶やかに、時に妖しく、その弦を震わせ旋律を奏でるヴァイオリン主導でスリリングに交差させながらストーリーを語る様は、正に“21世紀風にアップデートされたKING CRIMSON”と呼べる圧巻のサウンドだ。 これまでにも幾度か方向性が変化し、一時期などは鈍色モダン・ダークネスで塗りつぶされた陰鬱サウンドを披露して辟易させられたが、ソリッドな演奏とメロディアスな叙情性が抜群のアレンジで溶け合う東欧らしい構築美あるサウンドを、艶やかなヴァイオリン入りで奏でる彼等の“スタンダード”とも言える本作のような作風は大好きなので、アルバム一枚で一曲という如何にもプログレな作風で長尺曲なものの、万華鏡のように刻一刻と変化するサウンドを文句無しに楽しめ大満足です(*´ω` *) 某輸入盤店の“もし『Red』に Eddie Jobsonが参加していたなら、と想像させるようなサウンド”という宣伝文句が言い得て妙な、東欧ならではのエキゾチックさも漂わすファンタジー・サウンドとダークでモダンなシンフォ・サウンドをタップリ詰め込んだ、他のユーロ圏バンド達とハッキリ毛色の違う独特な魅力溢れる一品で、それに加えて以前の清涼感も合わせ持ったエキセントリックで奇妙な歌メロをもう一歩モダン化させた、オペラチックな歌い上げや、囁くような語り、そしてパワフルなシャウトと、正に七変化の活躍を見せるリーダー Damian Bydlinskiの歌声とテクニカルなギタープレイが、さらに本作を特異な存在にしているように思う。 まぁ、デジパック内に『ハードで難解、そして不快な音楽』『人々に今、自分で考えさせる』とか明記してるだけあって複雑怪奇な物語をコネくり回しているのは自身も理解しているのでしょうが、それでも今の本家KING CRIMSONのように、プログレとどこか違う地平へ旅立ってしまっていないし、あくまでヴォーカルメインな作風(リーダーがフロントマンだし、ネ)な彼等のサウンドの方がとっつき易いし、聞いていて心地よい(やっぱ、ヴァイオリンの活躍がデカイよなぁ~)と言えるのではないでしょうか?(汗 所謂、一般的に言う“シンフォ・サウンド”ではないけれど、ハードにメロゥにダークな叙情を発散させつつ、緊張感を高めるノイジーなツイン・ギターが縦横無尽に交錯し、CRIMSON張りに硬質で技巧あふれるクールなポリ・リズムを刻むリズム隊と、冷ややかでエキゾチックなファンタジー・サウンドを刻むキーボードの音色が重厚でダークネスな楽曲の裡で不規則に煌めいて輝きを一層に増し、それらが渾然一体となって生み出す華麗な東欧風モダン・シンフォサウンドを、艶やかに舞うヴァイオリンの美旋律が仄かな甘味と繊細な感触で薄っすら包み込んで、なんとも言えぬ不思議な感覚を呼び覚ますアルバムで、ユーロ圏のプログレやシンフォ・サウンドにマンネリを感じているダイハードなプログレ者な諸兄や、辺境サウンド好きな方に是非にお薦めしたい一作だ。 緻密に計算され描かれた物語に思える本作だが、注意深く耳を傾けると、前作『Troche Zolci Troche Wiecej Bieli』'16 のフレーズが楽曲に織り込まれていたりと、意外に彼等の遊び心が窺えたりするのも実に興味深い。 YESのジャケでお馴染みな Roger Deanっぽいイラストにニヤリとさせられる、SFチックな物語を思わせるデザインのジャケットに包まれた3面開きデジパックな本作、何時もの如く東欧盤はプレス数少なめでしょうからご興味ある方は早めに入手しましょう。
by malilion
| 2018-11-23 12:59
| 音楽
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