![]() 英国産プログレ・ポップバンドの1st~3rd期にあたる、1986年、1988年、1990年のロンドンでの3公演を収録した、彼等の全盛期の様子を伝える初出LIVE音源が5枚組BOXセットにて自主盤(500セット限定!)ながらオフィシャルリリースされたので、遅ればせながらGET! まぁ、音源自体は今はDLで労せず入手可能ですが、やはりプログレ好き者としては現物を入手せねばネ!('(゚∀゚∩ ◆◆◆ 閑話休題 ◆◆◆ その昔、80年代の中頃にそのバンドは英国の4人の若きミュージシャン達によって結成され、シーンに姿を現した。 70年代に英国を中心に開花し全世界で全盛を誇ったプログレシヴ・ロックの勢いは、けれどニューウェーブとパンクの荒波によって瞬く前に消え失せ、メジャーレーベルはプログレを過去の遺物として見捨て、数々のビッグバンド達が姿を消していった後の事だ。 プログレは時代遅れ、と嘲られるテクニカル・ロック不毛の時代、それでもプログレ・ファンはまだ全世界に存在していて、大衆やメディアは『紛い物(ポンプ)のサウンド』と揶揄したが、80年代初期から短期間だけ勃興したネオ・プログレッシヴロック・ブームに乗って、インディ・シーンから次々現れるYESフォロワーやGENESISフォロワー達が奏でる古式ゆかしいサウンドに彼等は心慰められておりました。 何故なら、往年のプログレ・バンド群が80年代に入って再始動し新作を発表したものの、サウンドをガラリとポップに変えて蘇りビッグヒットを掌中にしたYES、強かにサウンドを変えたPINK FLOYD、メンバーをチェンジしHMへ接近したEL&P、別バンドへ変わり果てていたKING CRIMSON、なんの迷いも無くポップロックを披露しヒットチャートを賑わすGENESIS等々、かってのプログレ・ファンを熱狂させたサウンドは最早そこに無かったからです。 そんな最中、メジャーレーベルと契約し颯爽と登場したこの風変わりな名前の英国バンドは、プログレ・ファンがシーン復興を信じるに足る、耳を惹きつけ離さぬ楽曲の数々や素晴らしい演奏技術は、来たるべきプログレサウンドの未来を予感させる期待の新鋭でありました。 もっとも彼等の奏でるサウンドは、どこか根暗で、やたら長尺な演奏をひけらかす難解な、所謂古き良きロック・クラシックなプログレ・サウンドではなく、モダンでコンパクトが持て囃される華やかな80年代という時代にマッチし、ニューウェーブやUKポップスといった当時のメジャーシーンを賑わすメインストリームサウンドを十分に意識した、独特なポップセンスと高度なテクニックに裏打ちされたプログレ感覚とヒネリの効いたアレンジや曲展開で聴衆を魅了する、若者らしいフレッシュでモダンなセンスが活きる明るく軽やかなロックサウンドが身上の、全く過去に囚われぬ『新世代のプログレ』を提示していたのですが━━ 本BOXは、Francis Dunnery(Vo&G)、John Beck(Key)、Dick Nolan(B)、Bob Dalton(Ds)のオリジナルメンバーによる、MARQUEE、ASTORIA、HAMMERSMITH ODEONのロンドンで行われた3つのギグの様子を約4時間タップリと収録した、紙ジャケ5枚組からなる貴重なLIVE音源だ。 既発アルバム3枚に加え、この時点で未発売で結局完成に至らなかったオリジナルメンバーによる4thの為に用意されていた楽曲(後に Francis Dunneryのソロに収録されたり)を、3曲収録している点はファンならずとも見逃せないだろう。 マネージメントはASIA、元YESの敏腕マネージャーとして知られる Brian Laneが行い、当初は『第2のASIA』としての売り込みが考えられていただけあって、スタジオ盤ではキャッチーでポップなサウンドで、コンパクトな楽曲を演奏していた印象が強い彼等だが、本作以外にも複数リリースされているLIVEアルバムを耳にした諸兄ならご存じの通り、LIVEではよりハードなタッチのロックサウンドを押し出したLIVEならではのラフさも魅力なスリリングでダイナミックな演奏を聞かせ、同時代のHRバンドに負けず劣らずの勢いと、プログレファンを魅了したコーラス、プレイ、全てが渾然一体となった一糸乱れぬアンサンブルで聴衆を掌握していた、当時の空気感と会場の熱気が伝わってくる良盤だ。 LIVE LIST CD1:The Marquee:21st July 1986 CD2:The Astoria:13th May 1988 - Part 1 CD3:The Astoria:13th May 1988 - Part 2 CD4:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 1 CD5:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 2 また、90年4月の音源は Francis Dunnery脱退前の最後のUKミニツアー(4th制作の為ロサンジェルスでレコーディングに入るが、音楽性の相違から脱退するのは7月)からとなっている。 03年発掘LIVE盤『LIVE IN MONTREUX』にボーナス収録された『Once Around The World』を除き音源は全て初出となっており、マスターはメンバーの Bob Dalton監修に加え、当時バンドのLIVE Mixerを担当していた Tom Oliverの手による、自身所有のマスター・テープを元にしたリマスタリング音源を使用と最上音質(時代柄プチパチなノイズは聞こえるけど)なクオリティに加え、カラー12ページのブックレット封入と自主制作故の貧弱な装丁なんて事は無いので、Bootで同じ会場の音源を既に入手済み、というハードコアなファンにもお薦めな一品と言えよう。 ファーストアルバムからして既に新人離れした完成度と、ポップでコンパクトなモダンサウンドのその裡に、シーンから失われて久しいブリティッシュ・ロック感覚がしっかりと息づくハイクオリティなアルバムを引っさげてデビューした彼等が、82年結成90年解散と10年にも満たぬ短い活動期間ながら3枚の素晴らしいプログレシヴ・ポップ・アルバムを“あのプログレ冬の時代”にメジャーシーンに遺してくれたのを本当に本当に感謝したい(*´ω` *) 結局シーンは蘇ることなく、無数に現れたインディバンド達は軒並み自主制作というアンダーグラウンドな活動へ移行し、サウンドの方もポンプからシンフォへと移り変わっていく事になるのだが…orz バンドは06年に Francis Dunneryに代わって John Mitchellをフロントマンに据えて再結成し、今も活動を続けている。 もっとも、15年に John Beckが事故で右手と右腕を骨折して以来、活動休止中なのが残念だけど…… 再び素晴らしい新作をひっさげて彼等がシーンへ戻ってくるのを期待したい。
by malilion
| 2018-11-17 13:53
| 音楽
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