![]() 現YESのヴォーカリスト、Jon Davisonが在籍していた元バンド、としてインディながら世界中から注目を浴びる事となったUSシンフォ・バンド6人組が、25周年レアトラックス集アルバム、LIVE作を挟んで、スタジオ作としては前作『Valkyrie』'16 以来2年ぶりとなる17thをリリースしたので、ちょい遅れてGET。 前作が散々な出来だっただけに、本作に手を出すのは少々及び腰でありましたが、事前情報で彼等の作品の中でも、最も技巧的でキーボード・オリエンティドな作風とインディ・プログバンド丸出しなバランス無視のフォロワー感剥き出しで弾き倒し展開(この当時はオリジナリティは薄かったけど勢いハンパなかったなぁ…)を見せた初期の代表作4th『Chronometree』'00 の続編的コンセプト・アルバムとの事で、意を決して購入してみました。 デビュー以来メンバーの出入りが激しい彼等だが、本作制作メンツは Steve Babb(Bass、Keyboards、Lead & Backing Vocals)と Fred Schendel(Keyboards、Guitars、Backing Vocals)のバンド創設メンツはいつもの如く在籍し、14年『Ode To Echo』から加入した Aaron Raulston(Drums)と Susie Bogdanowicz(Lead vocals)も顔を揃えて本作にも引き続き参加しており、ここ数年のコアメンバーとしての地位を固めつつあるようだ。 で、現YESのヴォーカリスト Jon Davisonと長らく参加していたSALEM HILLの Carl Grovesに代わって本作から参加の男性ヴォーカル二人は、同郷USプログ・バンドで以前からバンドと交流があり、17年に新譜をリリースしたばかりなDISCIPLINEのリーダー Matthew Parmenter(Lead Vocals)とPatton Locke(Lead Vocals)なる新人ヴォーカリストによる男女3人のヴォーカリスト体制が構成されており、Matthew ParmenterはDISCIPLINEでキーボードやヴァイオリンをはじめ多種多様な楽器もプレイするマルチプレイヤーなのだが、本作に置いてはあくまでヴォーカリストという立ち位置で参加している模様だ。 まぁ、LIVEでは楽器をプレイするかもしれないが、本隊バンドDISCIPLINEとの兼ね合いもあるし、アルバムでのプレイは Steve Babbと Fred Schendelに任せているのだろう。 そして、長らくギタリストであった Alan Shikohの名は無く、本作にはパーマネントなギタリストは在籍せず、ゲスト・ギタリストがそれぞれの楽曲でプレイしているなどバンドメンツが常から流動的な彼等だが、その彼等がこれだけ拘ってヴォーカリストを3人揃え続けると言う事は、トリプル・ヴォーカルはGLASS HAMMERの定番バンド・フォーマットであり、オリジナリティある編成と Steve Babbと Fred Schendelが考えていると見て間違いない。 今となってはゴス系のみならず、ロックオペラ系のプロジェクトをはじめメロデス・バンドでさえ男女3人ヴォーカルな構成が多々見られるので、ズバ抜けて個性的な編成とも言えないのだが、確かにプログレ系に限っては3人もフロントマンがいるバンドは少ないでしょうね…なにせ、元からヴォーカルの活躍する場が少ない音楽形態だし…(汗 さて、本作の内容についてだが、00年リリースのSFチックで冗談めいたコンセプト作『Chronometree』の続編作らしく、エイリアンとコンタクトしていた若いプログレ・ファンだったトムが大人になった想定で、自身が率いるプログレ・バンドThe Elf Kingでの1980年代の成功に苦しみ、70年代のプログレ黄金期へ戻り、そして姿を消す…という、70年代のプログレシッヴ・ロックをリスペクトしつつ織り成す『究極のプログレ・ファン』のファンタジックな物語が綴られたコンセプト作だ。 続編と言っても『Chronometree』は殆どキーボードメインのインスト作のような造りで、ヴォーカルは完全に脇役だったのでアルバムを聴く前からアルバム構成や印象は全く違っているだろうと予想していたが、予想通り男女三声の分厚いヴォーカルをメインに、バンド初となるトランペットやトロンボーンなどホーン・セクション、リード管楽器を大々的にフィーチャーした『なんか初期CHICAGOっぽくね!?』という分厚いサウンドがある意味で新鮮な音像で、従来作と比べると大幅に控え目になったオーケストレーション、そして派手目なブラス・パート、そこへブルース、プログレッシヴロック、デジタルサウンド、アンビエント等の多様な音楽要素を組み合わせ、YESを筆頭に、GENESIS、VDGG、KING CRIMSON、PINK FLOYD、GENTLE GIANT、TANGERINE DREAM等の70年代プログレッシヴ・ロックバンドへのトリビュートを感じさせる、壮大で重厚、旋律的で叙情的な“これぞプログレ”と言わんばかりに複雑なアレンジと構成から成る楽曲が詰め込まれた野心的な冒険心剥き出しの意欲的アルバムとなっている。 『Chronometree』の続編作ながら、時間的間隔も開いたし、バンド自体もその間に進化したり、今やメンツも方向性も全く違っているので当然ながら、GLASS HAMMERお得意のYES+EL&Pというような派手でスピーデイ、そして畳みかける疾走感ある、如何にもUSAプログレと言わんばかりなパワー・サウンドを叩きつける豪快な勢いは最早どこにも感じられず、幾分マッタリ気味なテンポとサウンドが、初期作に比べ本当に聞き易くなったモダンなアレンジを施された、70年代プログレッシヴ・ロックバンド群を思わすサウンド(プログレファンならニヤリとしちゃう)ピースを組み込んだ楽曲が、シットリと、そして艶やかに展開していく。 注意深く耳を傾けると実際はかなりのキーボードパートが聞こえるのだが、ちょっと聞きでは今までで一番キーボードの活躍する場面が少ないように聞こえ、本作はGLASS HAMMER始まって以来となる非常に独特な作風のアルバムと言えるだろう。 前作のとっ散らかった纏まりない作風を思えば、本作は余程マシで良い出来なアルバムと言えるけれども、GLASS HAMMERファンが期待していたUSAプログ作かと言うと、ちょっと疑問は残りますね……なんかJAZZロックっぽく聞こえるんで、そこをどう捉えるかで評価が別れるかも… また Susie Bogdanowicz嬢の可憐な歌声、そして注目の Matthew Parmenterのリード・ヴォーカルパート全てに言えるのだが、やはり歌メロのアレンジや質はイマサンな上に、 折角の三声ヴォーカルの分厚いハーモニーのハモり具合も今一つというガッカリな仕上がりにゲンナリな気持ちを隠せず、 Steve Babbと Fred Schendel両氏は余程ヴォーカルパートに馴染みがないのか、フックある耳に残る歌メロを考えられないのか、バックのサウンドの質が上がってモダンなアレンジのポピュラー音楽に近い音像へ接近すればする程に、大きなマイナスポイント(USプログレハード・バンドはコーラス綺麗で上手いバンド昔から多いので余計に…)として浮き上がってアルバムの完成度を著しく貶めているので、今後よりメジャーな展開をバンドは目指しているのだろうし、そうであるならば早急にその点は改善すべきだろう。 複数ゲスト参加しているギタリストの中でも注目なのは、カナダのRUSHフォロワーなプログHMバンドTILESの中心人物で、DISCIPLINEへは17年作から参加した Chris Herinが2曲でその見事なプレイを披露しており、間違いなくバンドメイトの Matthew Parmenterの紹介によるものだろう。
by malilion
| 2018-11-14 20:11
| 音楽
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