オランダHMバンドPICTUREの問題作の5thって、SWEETっぽくね? って実は思ってたりして

c0072376_20481443.jpgPICTURE 「Traitor +3」'85

PICTUREの『Every Story Needs Another Picture』をお薦めしたので、コレも合わせてご紹介。

既に述べたように、本作はオランダが誇る最古参の正統派HMバンドによる'85年リリースの5thアルバムな訳ですが、本作を堺に彼等のファンを止めた、というメタルヘッドな諸兄が多々居ると言われる(今から考えると、裏切り者ってタイトル、自身の変節を自覚してたって事なんですかね…)曰く尽きの一作だ。

因みにマイナーMHバンド発掘再発でその筋には有名なDivebomb Recordsによる初CD化(今までブートが出回ってましたねぇ…)で、なんとリマスター&ボーナストラック3曲追加収録での再発となっているのでオリジナル・アナログ盤をお持ちの方でも手を出しても安心な一品に仕上がっております。

『Every Story Needs Another Picture』は板起こしなのに、こっちはマスターがあったんですね…orz

初代ヴォーカリスト Ronald van Prooijenに代わって新たにフロントマンに招かれた、DIO風な野太い歌声を聞かせたイスラエル人ヴォーカリスト Shmoulik Avigalはファンに好評だったものの、マネジメントと衝突したのが原因で3rd『Diamond Dreamer』'82のみでバンドを解雇され、続く4thアルバム制作前にLIVEでのサウンドの厚みを増強する為にとセカンドギタリスト Chriz Van Jaarsveldを迎えたツインギター5人組編成となり、三代目フロントマンに Pete Lovellを新たに招き『Eternal Dark』'83 は制作される予定であったが、個人的な理由(諸説あり。追い出され説もある…)により創作面での中心人物であったギタリスト Jan Bechtumが脱退し、ツインギター体制を維持する為に新たなギタリストに Henry van Manenが加入して4thは制作される事に。

2人の新ギタリストは技術的に Jan Bechtum以上のスキルを持ち合わせていた事もあって、それまで単純明快なリフで押す無骨で男臭い垢抜けぬマイナー臭さプンプンなサウンドだったのが、よりヘヴィでテクニカル、そしてメロディアスでファストなサウンドへ大幅に音の質が変革し、結果的にPICTUREバンド史上最もウェットなメロディとスピーディさ、そしてダークでスリリングな新たなユーロHMサウンドを提示し、バンドレベルをワンランクアップさせる事に成功する。

最もHMファンに支持されるこのファストなユーロHMサウンドをさらに発展させたメタリックサウンドを披露するかと思われた彼等だが、USAを中心に盛り上がりを見せるグラム臭のするLAメタルムーブメントや、全世界を席巻するポップで華やかな産業ロックが持て囃されるバブリーな情勢を意識したのか、レーベル側からのプレッシャーがあったのか、これまで不器用ながらもひたすら真摯にハードサウンドを奏でてファンベースを拡げてきた彼等が、まさかのポップロックへ急接近し、バンドカラーを変更した軽めな産業ロック寄りのサウンドを披露したバンド史上最大の問題作であり、バンドの命運の分岐点でもあったのが本作である5thアルバムだ。

以前の荒々しくもダークでファストな彼等のサウンドを愛していた古参ファン達から総スカンを食らった本作だが、今の耳で改めて聞き直してみると、散々叩かれる程にポップでもなく、ちゃんとメタリックなエッジをサウンドに残しつつ、歌メロをよりポップで朗らかな方向性へ寄せたサウンドで、正直そこまでドポップ(てか、コレでポップって、じゃあ今までどんだけマイナーで売れ線からたハズレたサウンドだったんだ、っていう…)でも“売れ線”でもない、ぶっちゃけ『産業ロックに魂を売った!』なぁーんて罵られるのが不思議なくらいしっかりHMらしさのあるノイジーでエッジある流暢なギタープレイやタイトなボトムが響いている良作だと思えるのです…

個人的には Pete Lovellの少し荒れたストレートでパワフルな歌唱や、ポップなコーラス、ハモリを多用した流暢なギターといい、ドタバタした畳みかけるドラムといい、ちょっとSWEETっぽく聞こえたりして、本作に悪印象は全くありません。

それにしても、本作を最後に脱退した Pete Lovellが続いて加入したEMERGENCYで披露したサウンドの方がヴォーカルアプローチもバンドサウンドの完成度も断然上な産業ロック風味増し増しのキャッチーでメジャー指向なHMサウンドなのが、皮肉と言えば皮肉ではありますね。

続く一気に産業ロック&ポップHM化が加速するアルバムの完成度や華やかさに比べ、初期からのダークなHMサウンドと新たな流行のポップHMサウンドの折衷案的な中途半端さが残るサウンドで、スリリングさも今一つ、キャッチーさのキレもイマイチなのは否めないものの、やはりバンドのこれまでのファンベースに支持されていたサウンドを考えると、そんなに器用でない彼等が器用に変わり身をして時流へ乗ろうとして乗り切れなかった……簡単に言うと“タイミングが悪かった”って言葉に集約されるような気が今ならする一枚ではないでしょうか……

因みにボ-ナストラックは、Fantasies (Long Version)、Bombers (1985 Version)、Rock On Tonight、の3曲となっているので、オリジナルLPをお持ちの方でもリマスターでクッキリ鮮やかになったアルバム本編に加え、オリジナルLPには未収録の音源もありますので、以前のネガティヴな感情や記憶を今一度整理し、もう一度本作をチェックして見てもいいのでは?

この後、Rinus Vreugdenhil(B)と一緒にバンドを立ち上げ長らく活動を共にして来た Laurens Bakker(Ds)は、妻や双子の子供を抱えながらのツアースケジュールの厳しさや、レーベル側からの商業的成功に対するプレッシャーに耐えきれずバンドを脱退してしまい、オリジナルメンツは Rinus Vreugdenhil唯一人となってしまう。

Rinus Vreugdenhilのみ残ってからバンドがリリースしたアルバムには既に初期の作風は残っておらず、レーベルが指示する売れ線狙いなサウンドの要求に Rinus Vreugdenhilはウンザリしてしまい、結局7thアルバム『Marathon』を最後に残しバンドは89年に解散した。

この業界でよく耳にする、レーベルの意向でバンドの音楽性がおかしくなり、遂には活動もままならずに解散、という悲劇のバンドの典型的な流れに涙を禁じ得ませんね…(つд`)

その後のPICTUREについて少し記しておくと、実は88年に元メンバーが密かに集い、再結成を画策するのですが、この時はマネージメントの下手な仕事で再結成の話は立ち消えになり、しばしの時を経て、07年にクラシックラインナップでの再結成が再び試みられ、オリジナル・ヴォーカリストの Ronald van Prooijenが尽力するものの、マネジメントには Shmoulik Avigalか Pete Lovellでの再結成を要求さてれしまう…('A`)

翌、08年に Jan Bechtum(G)、Rinus Vreugdenhil(B)、Laurens Bakker(Ds)、Rob van Enkhuizen(G)、Pete Lovell(Vo)という以前のメンツを中心としたラインナップで再結成が成され、バンドはヨーロッパでのツアーを開始し、その時の様子が後に限定盤ライブアルバム『Live 2008』'08としてリリースされる。

09年10月1日にMarsMountainsレーベルから再結成第一弾スタジオアルバム『Old Dogs、New Tricks』がリリースされ、順調に活動が続くかに思われた矢先、09年12月に Jan Bechtumがバンドを再び脱退(!)し、後任に Peter Bourbonなる新人ギタリストが迎えられた。

こうなってくると色々と雲行きが怪しくなってきて、翌年10年初頭に Rob van Enkhuizenもバンドを脱退し、後任に Gert Nijboerなるギタリストが迎えられ、再結成バンドのツインギターがそっくり入れ替わってしまう事態に。

11年には、その Gert Nijboerがアメリカ人ギタリスト Mike Fergusonにチェンジとラインナップは一向に安定しないものの、次なるスタジオアルバムの制作に取りかかり、再結成第二弾アルバム『Warhorse』'12が無事リリースされる。

再びツアーが始められるものの Peter Bourbonが脱退し、すぐオランダ人ギタリスト Len Ruygrokが加入するものの、数ヶ月後には彼も脱退し、初期バンドメンバーであったギタリスト Andre Wullems(G)がバンドへ加入、と本当にギタリストの座が安定しない状況へ…

この状況に嫌気がさしたのか、16年3末日に Pete LovellはLOVELL'S BLADEなる新バンドを結成する為に Andre Wullemsと Mike Fergusonの二人のギタリストを引き連れてバンドを脱退。

残された Rinus Vreugdenhil(B)と Laurens Bakker(Ds)は、Ronald van Prooijen(Vo)とJan Bechtum(G)を再びバンドへ迎え入れ、加えて新人ギタリスト Appie de Gelderを加入させ、初期バンドに一人ギタリストを加えた新たなツインギター編成のバンドとして活動を今も継続させている。

因みに再結成に関わっていない二代目ドラマー Jacques“Shake”van Oevelenは、16年7月に鬼籍になってしまった…R.I.P.



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by malilion | 2018-10-25 20:42 | 音楽 | Trackback
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