早すぎたオランダ産ポンプ・バンドYWIS

c0072376_23013937.jpgYWIS 「Leonardo's Dream」'95

MARATHON、FOR ABSENT FRIENDS、TIMELOCKと来たらこのオランダ産バンドを紹介せぬわけにいかないでしょう。

バンドのルーツは1975年まで遡る古参のバンドであったが Julian Driessen(Key)を除くメンツが流動的でバンド名も常に変化していて、82年にやっとメンツが固定されYWISが創設される。

83年に自主製作デビューアルバム『Ywis』をリリースした当時のメンバーは、

Geert van de Burg (Lead Vocals、Keyboards)
Rinus Hollenberg (Guitars、Vocals)
Herman Ruijters (Drums、Vocals)
Eric Stap (Bass)
Julian Driessen (Keyboards)

の5人で、Julian Driessenと Rinus Hollenbergはこの後、バンド分裂の後再びTIMELOCKで合流する訳ですね。

デビュー作のサウンドは、基本はポップロックなものの Julian DriessenのSAGAの影響モロなキーボードプレイとキーボードサンプルの音色と、Rinus HollenbergのRUSHの Alex Lifsonの影響モロなギタープレイとギタートーンのせいでか、SAGAとRUSHの影響を強く受けたオランダ産ポンプ・バンドの草分け的な扱いを受けてしまう。

実際、SAGA+RUSH×ポンプ+STYXばりの分厚いバッキングコーラス、というなかなかメジャー路線な方向性のサウンドなんですが、John Wettonと Greg Lakeを足して二で割ったようなマイルドな声質でミドルレンジ中心な歌声の Geert van der Burgの歌唱スキルがイマイチで、どうにも淡泊な上に一本調子な歌メロがバンドサウンドの足を大きく引っ張っていた感は否めないんですよね…

英国でポンプ・ムーブメントが盛り上がり始めたばかりの時期に既にポンプを予見するかのような先見性のあるバンドサウンドだった事もあってかオランダを中心にユーロ圏で好評を博したものの、1985年にメンバー間の音楽性の違いを理由に解散してしまう。

その後、各メンツは銘々に音楽活動を続けていたが、1993年にSI Musicが彼等のデビューアルバムを発掘し、Remix&Remasterしてリイシューする事を記念して十年ぶりにメンバーが集まり、そのまま再結成、そして新譜製作の流れになる。

そうして製作されたのが本作である2ndアルバムな訳だが、残念な事に既にTIMELOCKとして交わしている契約に縛られ Julian Driessenのみがこのリユニオンへ参加出来ず、代わって Rene van Spanjeなるキーボーディストが迎えられ、元々のバンドリーダーが居ない状況で製作される事になってしまう。

ただ、そのメンツ変動が影響したのか、それとも解散後の各自の経験が活きたのか、この2ndは1stの今一つ煮え切らぬ出来が嘘のような快作に仕上がっている。

その理由としては、まずイマイチの歌唱力だった Geert van de Burgの歌唱スキルが大幅に向上し、ダーティーにガナったり、吐き捨てるように歌うワイルドさを感じさせるHR的な歌唱法を取り入れた為に大きく歌メロの質と幅が改善されたのが一点。

続いて、若干古臭いHR的なプレイを聴かせ(時代的に当然なんだけど…)ていた Julian Driessenに代わって Rene van Spanjeが奏でるキーボードが所謂典型的なポンプ&シンフォ・スタイルな為に、1st時に感じられたSAGA臭が消え去って一気にスタイリッシュでモダンなサウンドに変化し、サウンド全体のクオリティを引き上げる助けになったのが一点。

そして、十年のバンド外活動で歌唱力に自信をつけたのか、Rinus Hollenbergと Herman Ruijtersが本作ではそれぞれ一曲づつリードヴォーカルを担当していて、そのせいもあってか1stを凌ぐ分厚くキャッチーなバッキングコーラスを披露して新たにAORテイストも加味されたサウンドの華やかさを倍増させている点が、2ndの質を一気にレベルアップさせた理由だろう。

なかでもギタリスト Rinus Hollenbergの歌が予想以上に上手く、歌唱力が問われるバラードでその歌声を聞かせている事からも自身のヴォーカルスキルにかなりの自信があるのが窺えるし、Geert van de Burgより高いキーの歌声を堂々と披露しているのに驚かされました。

相変わらずRUSH臭いギタープレイとトーンなんですが、まぁソレが消えちゃうとYWIS印が皆無になっちゃうとも言えるので、コレはコレで残しておかないと折角の再結成作の意味が昔からのファンにとってなくなってしまうしね…

所で、Geert van der Burgの歌声がちょっと Clive Nolan(PENDRAGON、SHADOWLAND、etc...)の歌声に似て聞こえるのって私だけ? いや、勿論 こっちの方が本職のヴォーカリストなんで上手い…かな?(汗

バンドのサウンドの方向性は1stと同路線のポップでキャッチーながら、しっかりとポンプテイストを感じさせるメロディアスなギターとシンフォニックなキーボードの音色がフィーチャーされつつ分厚いコーラスも活かされた楽曲にもフックがありコンパクトに纏め上げられた隙無いアルバムだが、時期的に考えてもう少しメタリックなテイストやサウンドが聞こえた方がよりメジャーなサウンド(夢劇場のブレイクは92年)に近かったんでしょうが、元々HMバンドでもないし、プレイヤー的にもそちら側のサウンドをクリエイトしていた訳でもなかったので、まぁ頑張ってHR要素を感じさせている程度が精一杯だったのかもしれません。

そもそもメンバー自身がYWISのサウンドをポンプとしてプレイしはじめた訳ではないのは時期的に明白ですから、そう考えるとHRサイドからプログレへ接近したポップロック、というスタンスが一番バンドサウンドを現す言葉に近いだろうから、再結成作であるこの2ndも多分にそのマインドを引き継いでいると考えれば、この2ndの方向性も当然なのでしょうね。

元リーダーの Julian Driessenがこのリユニオン作の製作に関わっていたなら、TIMELOCKで聴かせてくれたより進化したポンプテイストを感じさせるまた違ったサウンドになっていたかもしれませんけど……

かなり出来の良いアルバムが仕上がったものの、残念なことに既にバンドに実体は無く、バンドによる有力なプロモーションもないまま『Leonardo's Dream』は1995年にリリースされてしまう。

解放パーティーと解散ライブが予定されたが、これらの計画も諸般の事情によって全て中止されYWISはすぐに解散してしまった。

せっかくいいアルバムを残してきたYWISですが、どうにも運が無かったようです…

もしデビューがあと数年遅れていたなら、ポンプ・ムーブメントにのってYWISはどんな活動を見せたのか、とか再結成作にちゃんと Julian Driessenが参加出来ていたなら、とか色々と妄想してしまいます…

もし彼等のサウンドに興味を持たれた方がいるなら、どちらのアルバムも国内盤がリリースされていますので、中古盤店をチェックしてみれば比較的簡単に入手出来るハズです。

まぁ、もっとお手軽にDLすれば音源は入手出来ますけどね。



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by malilion | 2018-03-08 22:53 | 音楽 | Trackback
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